予算でクルマを選ぶ時、気になっている同じ価格帯のクルマを比較検討する人も多いだろう。だが、同じ雰囲気を持っていても、細かく調べれば調べるほど違いが見つかるはず。今回はそんな視点で注目の2台をピックアップしてみた。
クルマを選ぶ時の基準は、人によって異なる。主に指標となるのは用途だが、価格も要素としては大きい。今回は、昨年秋からデリバリーが始まったトヨタ『クラウン クロスオーバー』と、2021年秋にレクサスの新世代モデル第1弾として登場し、今年3月に改良された『NX』の2台を比較した。
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『クラウン クロスオーバー RSアドバンスト』と『NX350h』は、車両本体価格がそれぞれ640万円と644万6000円ということでほぼ同じ。ボディーの形状は『クラウン』が車高1540mmの4ドアクーペ、『NX』は全高1660mmのSUV。『クラウン』のスタイリングは、世界的に流行しているデザインで、メルセデス・ベンツやプジョーも採用している。パワーユニットは直4、2.4Lターボで前後輪にモーターを組み合わせた4輪駆動。ドライブモードはカスタム/スポーツS+/スポーツS/ノーマル/コンフォート/エコの6種類、乗り味は低速からでも変化がある。変速機は6速ATで、0→100km/hの加速は6秒台とかなりの俊足だが、燃費は15.7km/Lとなっており、このクラスのハイブリッド車としては少し不満が残る。
居住空間もクーペ形状なので、後席の頭上を広くするために、座面を沈ませて、背中の角度も寝かせ気味にしている。不満があるとすれば、クロスオーバーというSUVとセダンのミックスモデルなのに、後席の背もたれが固定式で荷室と一体化しないこと。しかも、リアの荷室はウインドウの下から開くトランク用の扉なので、SUVと比べると使いづらい。この『クロスオーバー』を発表した時に、セダン/スポーツ/エステートの3モデルも同時に公開していたが、SUVはラインアップされていないので、この『クロスオーバー』がこの領域をカバーすることになる。
一方のレクサス『NX』は明確にSUV路線を歩んでいる。今春の改良では車体前部と後部の剛性を向上させ、実力バランスや足回り強化のチューニングを施した。ドライブモードはエコ/スポーツ/ノーマルの3種類だがメリハリがあり、着実に進化を遂げている。安全装備や先進技術の導入も早い。
予算でクルマを選ぶ人は多いが、価格帯によってクルマの中身や進化のスピードは異なる。だからこそ、クルマ選びは慎重かつ的確に行なうことが肝心。カギを握るのは情報収集力だ。
トヨタが造った新時代のフラッグシップモデル
トヨタ『クラウン クロスオーバー』
Specification
■全長×全幅×全高:4930×1840×1540mm
■ホイールベース:2850mm
■車両重量:1920kg
■排気量:2393cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ+前後モーター
■最高出力:272PS/6000rpm+82.9PS+80.2PS
■最大トルク:460Nm/2000~3000rpm+292Nm+169Nm
■変速機:6速AT
■燃費:15.7km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:640万円
※RSアドバンスト
新しい『クラウン』ファミリーの顔。スポーツ/セダン/エステートはそれぞれヘッドライトの形状やレイアウトが異なるものの、左右に結ばれたヘッドライトのデザインは同じ。
最新のデザインは、ボディー側面に明確なキャラクターラインを入れず、ドア下あたりにワンポイント、アクセントを入れるのが流行り。全長4.9mのボディーにクーペルックを採用した。
テールランプも左右が1本でつながっているのが特徴的。トランクの開口部は地上から約750mmの高さがある。全幅は1840mmで、試乗車は225/45R21のタイヤ(オプション)を装着。
電動化に舵を切るレクサスの意欲作
レクサス『NX 350h』
Specification
■全長×全幅×全高:4660×1865×1660mm
■ホイールベース:2690mm
■車両重量:1820kg
■排気量:2487cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHC+前後モーター
■最高出力:190PS/6000rpm+182PS+54PS
■最大トルク:243Nm/4300~4500rpm+270Nm+121Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:19.9km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:644万6000円
※バージョンL
すっかり定着したスピンドルグリルのデザイン。左右のヘッドライトは薄く、デイタイムランニングライトはL字形を採用。メッキ枠を配したグリルと左右下部のスリットが冷却効果を高める。
直立したグリルと長いボンネットライン、短いリアのオーバーハングは、かつてのスポーツカーの表現であったロングノーズ・ショートデッキを再現している。
リアのランプは左右のL字ランプと、中央の一文字ランプを組み合わせることで個性を演出している。リアゲートの開口部は『クラウン』より40mm高い。全幅は25mm、全高は120mm大きい。
価格はほぼ同じでも、性格が全く異なる2台
トヨタ『クラウン クロスオーバー』
エンジンルーム
ガソリンエンジンは直4、2.4Lターボをフロントに搭載。モーターは、前輪用に1基、後輪用に1基を搭載しており、駆動力を制御する。
運転席と各種装備
インパネは一体化されているわけではない。中央部の12.3インチパネルもいずれは一体化される見込み。助手席も独立している。
シートスペース
前席はやや高めのポジションだが、後席はやや低めに設計し頭上のスペースを生んでいる。斜め後ろの視界も良好で、室内も明るい。
ラゲージスペース
奥行き、左右幅ともに1m以上あり、高さも51cmあるので容量は大きい。後席の背もたれは固定式でアームレストスルーを備えている。
【 ココがポイント!】コンパクトに集約された操作系スイッチ
6速ATのシフトノブはコンソール前部に備わる。シフトはR/N/D-MでPはプッシュ式ボタン。ドライブモードは6種類あり、あらゆる路面で安定した走行を楽しめるよう設定できる。
【 ココがポイント!】見た目も印象的な大径サイズのタイヤ
これまで18インチを標準タイヤとしてきたトヨタだが、『クラウン クロスオーバー』は18、19、21インチを装着。試乗車は225/45ZR21サイズを装着しており、乗り心地もよかった。
レクサス『NX350h』
エンジンルーム
「350h」はハイブリッド、「450」は100%EV、「350/250」は直4のガソリンエンジンという組み合わせ。「350h」はFFと4WDが選べる。
運転席と各種装備
中央モニターとメーター部分が分離しているインパネ。センターコンソールは助手席側に一体となるデザインを採用している。
シートスペース
内装は4色から選べる。後席の居住空間は着座を低めにして頭上の空間を稼いでいる。背もたれは4対6で可倒する。
ラゲージスペース
荷室内のスイッチで後席の背もたれは倒せるだけでなく、引き起こすこともできる。サブトランクも荷室の手前に設けられている。
【 ココがポイント!】コックピットのような運転席の空間づくり
ドライビングの楽しさをユーザーに体感させるために、センターパネルを運転席側に向けて設置している。この思想は初代から変わることなく、継承され続けている。
【 ココがポイント!】ドライブモードの操作スイッチが移動
レクサスはドライブモードの選択ダイヤルをメーターカバーの横に配してきたが、次世代モデルのひとつの象徴として、センターコンソールの上部に移した。
個性を重視するなら『クラウン』、完成度を重視するなら『NX』
トヨタ『クラウン クロスオーバー』
[運動性能]21インチのミシュラン製タイヤと6種類のドライブモードで楽しめる範囲は広がった。加速もハイレベル。18点
[居住性]クーペスタイルだが想像以上に室内は広く感じる。クロスオーバーを謳っているのに後席が倒れないのは不満。17点
[装備の充実度]ハイブリッドモデルなのに、試乗時の実走燃費がカタログ値の3分の2レベルにとどまっているのは残念だった。18点
[デザイン]「クラウンが新しくなった」というメッセージは伝わった。グローバルのデザイントレンドも採り入れている。19点
[爽快感]どちらかというと、アッパーミドルのスポーツサルーンという印象。クロスオーバーならもう少し遊び心が欲しい。18点
[評価点数]90点
レクサス『NX350h』
[運動性能]今年3月の改良で前後のサスペンション剛性が向上、走りの質を高めるクルマ造りの姿勢は評価できる。19点
[居住性]電動で操作する前後席の背もたれは上級車らしい動きをするだけでなく、座り心地も使い勝手もいい。18点
[装備の充実度]タッチセンサーの多角的運用や先進安全性の積極的な展開など、レクサスの次世代モデルということが伝わる。19点
[デザイン]各モデルがもう少し個性を打ち出したほうがおもしろいかもしれないが最近のドイツ車のトレンドを踏襲している。17点
[爽快感]大きすぎないボディーに、レベル以上のパワーユニットを搭載。軽快さこそ感じなかったが安定感はあった。18点
[評価点数]91点
取材・文/石川真禧照
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年8月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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