名車揃いの1989年にデビュー
四代目のフェアレディZとなるZ32は、初代フェアレディZ=S30のデビューからちょうど20年後の1989年にデビュー。1989年といえば、スカイラインGT-R(R32)、ユーノスロードスター、トヨタセルシオのデビューイヤーと同じになる。
【これぞ名車の証】車名ではなく「型式」で愛されたクルマたちpart2
このZ32、2000年の12月まで生産が続き、国産スポーツカーとしては、異例ともいえる11年間ものモデルライフを誇っていた。ニッサン車のなかでも、Zはスカイラインと並んで特別なクルマ。
そんな歴代Zのなかでも、Z32は、S30と並んで、もっともフェアレディZらしい一台だ。そんなZ32の開発コンセプトは、「90年代をリードする新世代の本格スポーツカー」。開発陣にとっては、「Zはスペシャリティカーではない。あくまでスポーツカーなんだ」という高い志で、このクルマを設計している。
とくに力を入れたのはスタイリング。ひと目でスポーツカーとわかり、人々を惹きつける美しいデザインをZ32のトッププライオリティに位置付けていた。デザインを担当したのは、日産社内のデザイン部の前澤義雄・園勲夫・山下敏男といった面々。
ロングノーズという、Z伝統のスタイルに加え、Z32では、ロー&ワイド+スラントノーズというスポーツカーの王道を追求。全長は先代Z31よりも、マイナス225mmの4310mm、全幅はプラス65mm(いずれも2シーター)で低く幅広いボディに。
しかもホイールベースも、Z31に比べマイナス70mmの2450mmで、ディメンション的には、フロントミッドシップのFD3Sとほぼ同等というコンパクトさ。さらに細かく見れば、フロントフードは、先代Z31よりもマイナス45mm、フロントオーバーハングは15mm縮小。ウインドシールドの下端は110mm前寄りに……。
国産車初の280馬力を達成したクルマ
この美しいプロポーションを優先したがゆえに、犠牲になったのはエンジンルームの容積。Z32のエンジンルームは、Z31に比べ27%も容積が狭い(そのため整備性が悪く、チューニングには不向きとされた)。それでいて、スタイルも性能も最高のスポーツカーを目指すと欲張ったZ32は、このボディに新開発のVG30DETT型エンジンを搭載。V6エンジンなのでエキゾーストもデュアル。
ターボも片バンクにひとつずつのツインターボ、インタークーラーも左右振り分け。出力目標は300馬力だったが、最終的には280馬力。じつは国産車で最初に280馬力をマークし、のちの280馬力自主規制の基準を作ったのが、このクルマだった。
ハンドリングに関しては、日産の901活動の時期と重なり、新開発の四輪マルチリンクサスを投入。スーパーハイキャスも装備され、直進安定性と素直なコーナリング特性を持っていた。
また、先進性という意味ではエアロダイナミクスが秀逸で、空気抵抗係=Cd値は、0.31。リヤの揚力係数=CL値は、0.00つまり揚力ゼロ(ゼロリフト)を誇り、ボンネビルでの最高速424km/hをはじめ、数々の最高速レコードを持っているのもZ32の特徴。
どちらかというと、同時期に発売されたスカイラインGT-R(R32)の陰に隠れてしまった感のあるZ32だが、これからむしろ再評価されていく一台かもしれない。
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