ドライバー2020年3月号からスタートした連載企画「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をSUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第29回は鹿児島県の奄美大島で撮影にチャレンジした『ケナガネズミ』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
体長60cmオーバーの世界自然遺産に生息する巨大ネズミ
可搬式(移動式)オービスの取り締まり件数が減少傾向…? その理由を大胆予想
ケナガネズミは鹿児島県の奄美大島や沖縄本島にだけ生息する珍しい生き物だ。ちょうどこれらの島が世界自然遺産になったこともあって、ケナガネズミというほとんど聞いたことのない日本最大のネズミが少しは知られるようになった。
体の倍近い長さの尻尾まで入れると体長60cmを超えるのだから大きい。そして、尻尾が途中から白いというのもオシャレである。
ケナガネズミという名前の由来は背中の毛が長いところから来ている。この写真だとその長髪のぐあいがよくわかるだろう。
世界自然遺産登録と同時にクローズアップされたのが、ケナガネズミのロードキル(路上に飛び出した動物とクルマとの接触事故)急増というニュースだ。沖縄では2022年に7カ月で17匹ものケナガネズミが事故死したそうで、奄美大島でも以前から事故は起きている。
希少動物がこんなにロードキルの犠牲になるとはちょっとビックリである。まあ、動きがおっとりしていてクルマが近づいてもあわてて逃げないから、ひかれてしまうのだろう。だからケナガネズミの生息域では、ドライバーが注意して走るしか保護する方法はないのだ。
島独特の道路標識やビックリ看板の注意をリアル体験
奄美大島では独特のロードサイン(道路標識)がある。島で一番有名な動物のクロウサギはもちろんだが、ケナガネズミのものもあるのだ。
山奥の林道にあるクロウサギの標識はインパクトがあってすごかった。夜、いきなりこれが出てきたら、ギョッとして間違いなくブレーキ踏んでしまう。そういう意味では成功だ。クロウサギが悪魔にしか見えない。
看板といえば、道路標識ではないが林道の傍らにこんなものもあった。
よく見ると、口を開いてこれまた怖そうな形相である。
そして、「何これ? そんなにドンピシャのタイミングで出てくることがあるの?」というくらいすぐ近くでオイラのことを見てた!!
大きなハブの登場にはビックリ。
シャーっとか威嚇音は出してないから、こっちがちょっかいを出さなければ、向こうも何もしてこない。草の中で見えなくて驚かせると危ないだろうね。
だから、そそくさと長靴に履き替えた。あとはなるべく先が見えないブッシュには入らないようにしよう。
趣向は変わるが、看板シリーズでこんなのもあった。
モダマ(藻玉)という熱帯に生えるマメ科の常緑植物で、どこか南のほうから流れ着いてここで繁殖したらしい。長さ1mのさやに入った直径10cmの豆って!? 豆粒なんて言葉の定義が成り立たなくなってしまうではないか。
持って帰って、家族に怒られ、庭に捨てたら、翌朝には巨大な豆の木が生えて、そこを登っていったら巨大なネズミ(ケナガネズミ)が出てきてオイラは食べられてしまう、という新説「ジャックと豆の木」ならず「オイラと豆の木」を想像してしまった(笑)。実際に「ジャックと豆の木」のモデルはこのモダマだという説もある。
巨大なケナガネズミ、不思議なクロウサギに始まり、怖いハブの登場。そして大きな豆の木と、奄美大島は自然の宝庫でワンダーランドだ。
世界自然遺産認定を機に、自然と生き物が絶えることなく末永く生き延びていってほしい。
「今回の機材」
カメラボディ:SONY α9
レンズ:FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
シャッタースピード:1/200秒
絞り:F5.6
ISO:1600
※ストロボ同調
ズームレンズで画角を広げて白い尻尾までイン
運よく見つけたケナガネズミの動きは遅いとはいえ、道から外れて斜面を降り始めると、見失いそうで焦った。ガードレールのわずかな隙間からレンズを出し、スタンドに乗せたストロボを被写体に向ける準備でバタバタ。
すると、なぜかケナガネズミはどんどんこっちに向かってきたのだ。ズーミングで画角を広げて特徴である白い尻尾もなんとか入れることができた。こんなときはズームレンズに勝るものはない。
ストロボをオフカメラにしているのは、オンカメラでは光がまっすぐ被写体に向かうので目が光ってしまう可能性が高いからだ。
「オススメのSUV……マツダ CX-3」
■XD スーパーエッジー(特別仕様車) 主要諸元
(6速AT/FF)
全長×全幅×全高:4275mm×1765mm×1550mm
ホイールベース:2570mm
最低地上高:160mm
最小回転半径:5.3m
エンジン種類:直4DOHCディーゼルターボ
エンジン総排気量:1756cc
エンジン最高出力:85kW(116ps)/4000rpm
エンジン最大トルク:270Nm(27.5kgm)/1600~2600rpm
燃料/タンク容量:軽油/48L
WLTCモード燃費:20.0km/L
タイヤサイズ:215/50R18
価格:304万7000円
街から山までどこでも楽しく走りまわれる
ドライビングポジションなどを含め、SUVというカテゴリーのクルマなのを忘れるほど乗用車感覚が強いクルマだ。
シートポジションだけでなく腰高感もない。この低くスポーティな感じはステアリングフィールにもあり、キビキビと気持ちよくコーナリングしてくれる。
全幅1765mmというのがこのクルマの大きな特徴で、市街地ではすれ違いを含め、とにかく取りまわしやすい。また、狭い山道でも走りやすく、小さな隙間があれば駐車でき、使い勝手がとてもいい。SUVで全幅1800mmを切るクルマはなかなかないので、CX-3の大きさは美点だ。
エンジンはトルクフルなディーゼルで、1800回転あたりからアクセルをゆっくりと踏み込むと伸びやかな加速が生まれとても気持ちいい。燃費ものんびり走れば楽に20km/Lを超えてくるので、最近の燃料高騰時代にはありがたい。
この燃費のよさは、高速道路だけでなく市街地走行でも発揮される。ただ、いつも低回転で走らせるようにクルマが高いギヤをセレクトするので、ちょっとアクセルを踏んだだけでキックダウンしてしまい、ややギクシャクする感は否めない。
取りまわしやすいサイズでスポーティテイストも持つCX-3は、街から山まで楽しく走りまわれるSUVだ。
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
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