現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【思い出のクロスフロー】ケータハム・スーパースプリントへ再試乗 理想の1997年式

ここから本文です

【思い出のクロスフロー】ケータハム・スーパースプリントへ再試乗 理想の1997年式

掲載 更新 3
【思い出のクロスフロー】ケータハム・スーパースプリントへ再試乗 理想の1997年式

35年前のグッドウッドでのクラッシュ

執筆:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)

【画像】スーパースプリントとスーパーセブン オランダとドイツの派生車も 全93枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


1986年、20歳になったばかりの筆者は浅はかだった。サーキットを走るのは、その日が2度目。

コースはグッドウッド。英国で最も容赦ないサーキットの1つだ。クルマはケータハム・スーパースプリント。運転経験の浅い筆者にとって、正確に挙動を掴み取ることは難しい。ピットレーンには、走りを見守る大勢の仲間がいた。

威勢よくコースアウトし、最初の1周目。最後のシケインが迫る。スーパースプリントにはどんな走りが可能なのか、筆者は披露することにした。

ここは高速で侵入しバンク角が変化する、クルマとドライバーの本領が試される場所。案の定、不運が待ち構えていた。

もしヘルメットがなかったら、頭を地面にぶつけていただろう。古いロールオーバー・バーは充分な強度を備えていない。ケータハムが横転した勢いで、頭蓋骨は割れていたに違いない。

今から35年前のできごとだ。それ以来、ケータハムは所有してこなかった。だがキットカーとして3台を組み立て、レースへも4度は出場している。そのトラウマから抜け出せる気がしていた。

2020年の夏、英国のロックダウンが明けた時に、最新のスーパーセブンを運転した。見た目はクラシカル。最高出力は控えめな137psだ。

ジェンビー社製のスロットルボディが、エンジンから姿を覗かせる。古いセブンのボンネット横から誇らしげに突き出した、ツイン・ウェーバーキャブレターのように見えた。

シンプルで巧みに操縦できるクルマが好き

やはり、筆者はセブンが大好きだった。パワフルなだけでなく見た目は精悍で、サウンドも偽りない。反応も常に直感的。信じられないほどに速かった。

ロックダウンで自由に外出できなくなり、つぶさに気付かされた。筆者は、シンプルで巧みに操縦できる、素直なクルマが心から好きだということを。

記憶を上塗りし、正直な思いを叶える唯一の方法は、ケータハムを購入すること。必ずしも古いセブンである必要はなかった。でも、過去の体験を超えるために、クロスフロー・エンジンは必要だった。

年配の自動車ファンにとって、クロスフローという響きには特別な印象があると思う。進化するケータハムにとって、クロスフローといえばフォードのケント・ユニットのこと。エンジンの片側から混合気を吸い、反対側から燃焼ガスが吐き出される。

ロータスがケント・エンジンを採用したのは60年ほど前。まだ排気量は1.0Lで、最高出力は39psしかなかった。

ケータハムがセブンの製造販売権を取得すると、クロスフロー・エンジンへ改良。セブン・スプリントの排気量は1.6Lになり、最高出力は111psまで高められた。

1985年には1.7Lへボアアップ。ビッグバルブとホットカムが組み合わさり、最高出力は137psへ上昇。セブン・スーパースプリントとして販売された。筆者がグッドウッドで壊したクルマだ。

そのエンジンを再び手に入れる必要があった。反面、今ではケータハム並みに運転が楽しいクルマも何台かある。どのセブンを買うべきかは、かなり悩んだ。

理想的なクロスフローのセブン

古いケータハムのフロント・サスペンションは、コーリン・チャップマンの哲学に習っている。アッパー・ウイッシュボーンの半分は、アンチロールバーが担っている。だが、想定以上に横方向の負荷が強く、うまくは機能していない。

リアのリジットアクスルは、骨に染みる振動を伝える。コクピットは狭く、4速MTだ。筆者が本当に欲しかったのは、本物のダブルウイッシュボーン・サスペンションを備える、現代的なケータハムだった。

リアにはドディオン・アクスルが組まれ、S3の長いコクピットが良かった。トランスミッションは、5速がイイ。

そんな組み合わせが存在するのか謎だったが、見事に発見できた。ブランズハッチ・セブンス&クラシックスで。筆者が古くから知る、ケータハムの営業マンをしていた人物が立ち上げたガレージだ。

理想的なシャシーとサスペンション、5速MTが載り、ボディはポリッシュ・アルミとダークグリーンで仕上げてある。1997年式で、もちろんエンジンはクロスフロー。これ以上のケータハムはないと感じた。

ケータハムから距離をおいていた筆者は、その年代までケント・エンジンを登用していたとは知らなかった。恐らく、最後のクロスフロー・セブンなのだと思う。

エンジンはリビルドされ、状態は完璧。感触はソリッドで、新車のケータハムのように走る。快適で、ルーフを閉めてヒーターを入れれば冷えた朝でも居心地が良い。

現代的なケータハムより見た目も魅力的。小さな丸いヘッドライトが、フロントノーズの先端に並ぶ。

中古のケータハムを超える存在とは

この印象をまとめ上げているのが、クロスフロー・エンジンだ。実用目的で生まれたフォード・ユニットだが、ケータハムのエンジンルームを見事に彩る。プッシュロッドの鉄の塊でも、心に響く個性がある。

寒い朝には、エンジンを生き返らせる儀式がある。正しい量の燃料を、大きなウェーバー・キャブレターに送り込むと、咳払いしながら目を覚ます。ほかのエンジンでは聞けないような大きい唸り声を上げて、落ち着いたアイドリングに入る。

アクセル・レスポンスは並外れて鋭い。パワーバンドはワイドだが、常に意欲的。レブリミット付近では、素晴らしい咆哮を放つ。アクセルペダルを放せば、アフターファイヤーの破裂音が混ざる。

しかも軽い。エンジンは鋳鉄製でも、重たいツインカムの16バルブ・ヘッドは載っていない。セブン・スーパースプリントの車重は530kgだ。

筆者の家へ来た、1997年式のケータハム。最初にしたことは、日曜日の夜明け前に起床し、ウェールズの山岳地帯を目指すことだった。

人影すらまったくない、暗がりの道でケータハムを飛ばす。筆者にとっては走り慣れたルートだ。2万ポンド(300万円)未満で、ここまで運転が楽しいと感じることは可能だろうかと、脳裏をよぎった。

しばし、久しぶりのスーパースプリントとの時間を楽しみたい。この金額で手に入るクルマの中で、運転好きのドライバーにとって、中古のケータハムを超えるものはないだろう。今後も恐らく。

スーパースプリントとスーパーセブン 2台のスペック

ケータハム・スーパースプリント(1997年/英国仕様)のスペック

英国価格:−
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.6秒
燃費:7.1km/L(予想)
CO2排出量:−
車両重量:530kg
パワートレイン:直列4気筒1690cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:137ps/6000rpm
最大トルク:16.8kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ケータハム・スーパーセブン(2021年/英国仕様)のスペック

価格:3万9665ポンド(594万円)
全長:3180mm
全幅:1575mm
全高:1090mm
最高速度:196km/h
0-100km/h加速:5.0秒
燃費:10.6km/L(予想)
CO2排出量:−
乾燥重量:540kg
パワートレイン:直列4気筒1595cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:137ps/6800rpm
最大トルク:16.8kg-m/4100rpm
ギアボックス:5速マニュアル

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
VAGUE

みんなのコメント

3件
  • 施錠できるガレージがあれば、是が非でも欲しい一台ですね!

    馬力は大したことなくてもその軽重量じゃ、普通のクルマの馬力が2倍になったって感じかな???

    くわばわくわばら。
  • チキチキマシン猛レースなん?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村