新車試乗レポート [2024.04.13 UP]
これはガレージに収めたい! 新型グラントゥーリズモは見事な出来栄え
文●九島辰也 写真●マセラティ
アコードにはホンダの最新技術とセダンならではの魅力が詰まっている【石井昌道】
ずっと乗りたかった新型マセラティグラントゥーリズモをようやく走らせることができました。近年稀に見るかっこいいクルマだけに、ずっとその日を待ちわびていたんです。見た目に見合った走りであるのは想像できますが、どんな味付けなのかは興味津々でした。
マセラティ グラントゥーリズモ
とはいえ、このエンジンはすでに体感しているとも言えます。グラントゥーリズモに積まれる3リッターV6ターボは、MC20やグレカーレトロフィオとも共有するからです。どれもネットゥーノと呼ばれるバンク角90度のバルブタイミング機構付きユニットとなります。
ちなみに、“ネットゥーノ”はマセラティのマークにも使われる槍を持った海の神“ネプチューン”のイタリア語。コードネームではなく、こうして名前をつけるところがマセラティらしいと思います。イタリア人ぽいといえばそうですが、フェラーリよりはかなりこだわってネーミングを付けていますね。4ドアを意味するクワトロポルテは別として、彼らはこれまで数多くの“風”の名前をモデル名にしてきました。ギブリやレヴァンテ、ボーラやミストラルもそうですし、カムシンやシャマルなんかも偏西風など風の種類を示す言葉です。
そういえばVWも一時期風の名前を多く付けていました。ゴルフ、ジェッタ、シロッコなどです。きっとヨーロッパ人はそう言うのが好きなんでしょう。確かに、透明感はあるし、センスの良さを感じます。
それはともかく、このエンジンはマセラティの自社製となります。1990年代後半彼らがフェラーリのコントロール下に置かれると、フェラーリ製V8エンジンを搭載する時期がありました。そしてその印象は強く、今もそうだと思われる節は無くはない。よって、マセラティはネットゥーノが自社製であることを強調します。生産も本社隣接のモデナ工場を使う念の入れようです。
マセラティ グラントゥーリズモが搭載する3リッターV6ターボの「ネットゥーノ」ユニット
で、このエンジンは市販車以外にもレーシングカーで使われていて、全部で5モデルに搭載されます。前述した3台プラス、MCエクストリマとGT2です。
ユニークなのはこの2台とMC20はドライサンプ式で、グラントゥーリズモとグレカーレトロフィオはウェットサンプ式なこと。サーキット走行を主体とするモデルとそうでないモデルとはっきり分かれています。さらにいえば、エンジン出力をそれぞれ適したものに変えています。MCエクストリマは730ps、GT2とMC20は630ps、グラントゥーリズモは550ps/490ps、グレカーレトロフィオは530psです。CPUの書き換えで、これだけ色とりどりになります。でもってパワーは100ps異なっても最大トルクは同じだったりするのもおもしろい。
MC20、グラントゥーリズモ、グレカーレトロフィオはいずれも「ネットゥーノ」ユニットを搭載
ではこのエンジンの特徴ですが、ポイントは大きく分けて3つあります。まずはF1マシンに通じるプレチャンバーテクノロジーを採用すること。そして2つ目はポートインジェクションとダイレクトインジェクションの2つを持つデュアルインジェクションであること。3つ目は気筒ごとに2本のスパークプラグを備えるツインイグニッション式であることです。走行環境によって、ガソリンをどこに噴いたらいいのかを瞬時に判断するのですから賢い。物理的に燃焼ポイントやプラグが多くなるのですからかなり複雑なことをやっているのは確か。マセラティのエンジンに対する強いこだわりを感じます。
エンジンの話が長くなりましたが、グラントゥーリズモの走りはかなりよかったです。サーキットと言う特殊な環境でしたが、十分楽しく走れました。思ったのは、エンジンパワーもそうですし、リアのスタビリティや足捌きに余裕があること。かなり高い速度域でクルマをコントロールできるようセッティングがなされています。シビアなライン取りは本格的なレースの場面にならないと必要ないかもしれません。
乗り心地は今回の速度域では終始良かった。走り出す前はもっと硬そうなイメージでしたが、そうではありません。ゼブラのあたりはソフトで、そこで跳ねるようなこともない。これならきっと街中も快適なはずです。文字通りGTカーとしての要素を備えているわけですね。う~ん、かなり大人な味付けです。
マセラティ グラントゥーリズモ
なんて感じのグラントゥーリズモですが、醍醐味はやはりデザインでしょう。レーシーでありながら上質感もあり、モダンながらクラシックさも感じます。できることならガレージに納めたいですが、そうなるとガレージごとおしゃれに設計し直さなければなりませんね。そんな気にさせるイタリアンデザイン。いやはやお見事です。
自動車ジャーナリストの九島辰也氏
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