■あまりに奇抜過ぎて「顔面刷新」せざるを得ず…
「輸入車は日本車にはない個性が魅力」とよく言いますが、その個性が突き抜けてしまったモデルが存在します。
その代表格と言えるのが、1998年にフィアットからリリースされた「ムルティプラ」です。
【画像】超カッコイイ! これが「“奇抜顔“ミニバン」です!(55枚)
実はムルティプラの名前は古く、1956年に登場した「フィアット600」をベースとし、3列6人乗りのシートを備えた「600ムルティプラ」という車両に使われています。それから40年近い時を経て復活を果たしました。
そんなムルティプラは、初代と同じく6人が乗ることのできるMPV(ミいわゆるニバン)となっていましたが、シートレイアウトは3列ではなく、3人掛けシートが2列という斬新なもの。
ただし、よくあるミニバンのベンチシートではなく、6つの座席がそれぞれ独立したシートとなっており、ヘッドレストや3点式シートベルトも完備。中央の席は居住性を考慮してか、やや後方へオフセットされていました。
この独立したシートの後席は個別に取り外すことも可能で、すべて取り外すと1900リッターという巨大なラゲッジスペースに変身させることも容易で、フレキシブルに使うことができるモデルに仕上がっています。
インパネも個性的で、スピードメーターやエアコンの操作ダイヤルなどはセンターに集約し、乗員の前のダッシュボード部分にはフタ付きの小物入れスペースが備わり、サンバイザーの裏側にはサングラスホルダーを装着。
収納も豊富で使い勝手のよいものとなっていました。
ここまで聞くと、「とても真面目なMPV」という印象のムルティプラですが、なにが奇抜だったのかというとそのスタイルです。
およそ4mという短い全長の中に2列6人分のシートを備えるため、全幅は1875mmとかなり幅広で、低いウエストラインの上に巨大なグラスエリアを持つ背の高いキャビンが乗っているという合理的ではあるものの、アンバランスなディメンション。
そしてさらにアンバランスさに拍車をかけたのがそのフロントマスク。
バンパー部にフォグランプ、ボンネット先端にロービームまでは一般的ですが、ハイビームがAピラーの根本に埋め込まれ、ボンネットとフロントウインドウの間に段が設けられるという、ほかに類を見ないものとなっていたのでした。
またファミリーカーとして供されることが多いMPVモデルでありながら、一貫して3ペダルの5速MTのみのラインナップだったこともその個性を加速させる要因のひとつといえるでしょう。
ただ、この奇抜すぎるデザインは多くの方面から不評だったようで、2004年に実施されたマイナーチェンジのタイミングで、同時期の「パンダ」や「プント」にも似た常識的なフロントマスクとなり、フロントウインドウ下の段差もなくなり普通(?)の顔となっています。
ある意味“不遇”のムルティプラではありますが、中古車市場ではコアなファンに支えられて高値安定。近年では状態のよい個体も減ってきているため、状態のよいものでは150万円前後の総額で売られているものも珍しくない状態だったりするのです。
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