チームスタッフが次々に購入し、東京モーターショーやタイでカスタムを見てからADV150が気になっていた伊藤真一さん。今回は高速道路から一般道、箱根のワインディングでその実力チェック!
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり
ADV150を見た伊藤真一さんの第一印象
小型スクーターの窮屈さは皆無。実用性をキープしながら、趣味の乗り物としての楽しさをちょうどいいサイズで実現
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ADV150は、昨年秋の東京モーターショーで見た時から気になっていたモデルでした。
近年、レーシングスクールのコーチとしてタイに行く機会が多いのですが、現地でADV150はよく目にしていたんです。現地のパーツ屋さんによるカスタムを見たりもしていたりしていたのですが、これは良さげなモデルだなと関心を持っていました。
既存のスクーターであるPCX150をベースにしてADV150は作られているので、ADV150の乗り味はPCXに近いのかな? と思っていましたが、PCXっぽさはADV150には全然ないですね。なんて言ったら良いのかわからないですけど、単にスムーズとか乗りやすいとか言うのではなくて……。
以前この〈ロングラン研究所〉の連載で取り上げたクロスカブ110とモンキー125を例にあげると、クロスカブよりもモンキーの方が「操っている感」と言うか、ただ移動しているという感じではなく「乗っている感」がありました。
ADV150は実用車的というよりは趣味の乗り物的でありながら、シート下に収納スペースがあったりと、ちゃんと実用性もあるが素晴らしいですね。走らせていて「ワクワク感」があるというか、「ドラマ感」をADV150には感じましたね。
個人的な話ではありますが、今、普段の「足」としてインド製のホンダ・クリック110に乗っているんですけど、車格が小さくて原付一種の50ccスクーターに乗っているような、小さいスクーターの110cc版みたいな感覚なんですよね。
それに比べるとADV150は、車格的にちょうど良い「囲まれ感」があると言いますか、自分の体格に車格が合っている印象でした。原付二種の125ccのモデルに対して感じる窮屈さとかはなく、ちょうど良いサイズ感です。
今回テストしたADV150のカラーリングは「赤」でしたが、この色と形を見て最初にイメージしたのは、1983年に発売されたホンダの原付スクーターの「ビート」でした。
水冷2ストローク単気筒50ccで、最高出力7.2馬力の高性能スクーターでしたが、若い読者の方にはピンとこないでしょうね。そのスタイリングと赤いカラーリングから、これビートじゃん、って思ってしまいました(笑)。
ADV150とPCX150の走行フィーリングのちがい
スクーターにありがちなフロント荷重の抜けやすさもなく、箱根のコーナーでは「どこでも曲がっていく」イメージ
走り出して思ったのは、操安が素晴らしく良いことですね。一般的にスクーターはタイヤが細めなこともあって、コーナーでの倒れ込みがちょっと早い感じがあるのですが、太めのタイヤを採用しているADV150は、倒れ込みのときに良い感じの「待ち」があります。タイヤのパターンはオフロードを意識したブロックタイプですが、オンロードでの走りでも変なクセは感じませんでした。
ADV150は、スクーターとしてはかなりストロークの大きい前後サスペンションを採用しています。PCXと比較すると、ADV150の前後サスはちょっと硬めに感じました。PCXのフロントサスはテレスコピックですが、トレーリングリンクフォーク的にフワフワした動きをします。
一方でADV150のフロントサスはちょっと手応えがあって、パーンと張ったような良いフィーリングでした。タイヤのエアボリュームが大きいので、ちょうど良い組み合わせの設定だと思いましたね。それでいて、全体の乗り心地はおおらかで、走らせていてとても楽しかったです。
PCXもADV150もフレームはダブルクレードル型を採用していますが、ADV150はPCXに比べると結構大きな入力でも受け止めますね。今回の試乗では、高速道路や峠道をかなりハイペースで走ったりしましたが、車体がヨレる感じが全くしませんでした。
峠の下り坂の高速コーナーで、一般にスクーターはフロントの荷重がフワっと抜けやすかったりしますが、ADV150はそのようなことがなく、どこでも曲がっていくような感覚がありましたね。
高速道路での直進安定性も全く問題なく、横風が強く吹く東京湾アクアラインの上でも、風に振られるとかはありませんでした。車体を樹脂パーツでカバーされたスクーターなので、形状的に横風を抱いちゃって振られるのかな? と想像していたのですが、実際に強風が吹く場所を走っても、全然振られることがなくて不思議に思いました。
多分、重心がかなり低いことが効いているのだと思います。あと、スクリーンの出来が良いですね。主に高い位置にセットして試乗していましたが、上手くヘルメットの上に風が抜けていき、そんなに大きなスクリーンではないのにかかわらず、とても快適でした。
エンジンの最高出力は15馬力で、下道を走っている分には動力性能的に不満を覚えることは全くなかったです。ただ、高速道路ではちょっと余力がない感じ。高速道路を使って遠くに行く、というより、いざと言うときは高速道路も乗れる、という感じですね。
ADV150はPCX同様、アイドリングストップ機構を採用していますが、走り出しのときに違和感なく再始動し、スッと走って行きます。印象としてはPCXよりも洗練されている感じで、本当に感心しました。
ADV150の燃費性能と、ABSの性能について
全開のワインディングもありながら、高燃費をキープ。贅沢を言えば、リアブレーキにもABSが欲しいところですが……
エンジンに関してもうひとつ関心したのが、その燃費の良さです。2日間の試乗で様々なシチュエーションを割とハイペースで走り、箱根の峠道の上り坂では全開にする時間も長かったですが、メーターに表示される燃費はずっとリッターあたり40kmを切ることがありませんでした。
2日目は都内から箱根・芦ノ湖まで往復200km以上を走りました。満タン8Lでスタートして、帰ってきたときにはメーター残量1/3表示でした。この燃費の良さには驚きましたね。
前後ディスクブレーキのフィーリングとバランスも良かったです。モンキー125やPCXのABSモデルと一緒で、ABSを備えているのはフロント側のみなので、リア側を意図的にロックさせることも可能です。
ただADV150の設定はフロントのABSの介入が遅めで、リアは結構簡単にロックするのが、ちょっと気になりました。PCXのABSモデルはABSの介入がADV150より早く、乗っていて安心感がありました。
またオフロードなどでふざけてリアをロックさせて遊ぶ分には良いですけど、街中でのパニックブレーキなどを想定すると、もうちょっとロックしにくい方が良いなと思いました。前後ABSが理想的なのでしょうけど、コストのこともありますから……。
ADV150の試乗を終えて〈まとめ〉
総じてADV150の印象は、乗る前の期待どおりというか、期待以上でした。
ミラーとか液晶メーターとかファットバーのハンドルとか、デザインが凝っていて質感も十分で、所有欲を満たしてくれます。
同じ軽二輪クラスのスクーターにはフォルツァがありますが、65万円台のフォルツァに対してADV150は45万円台、そしてPCX150のABSモデルが40万円台ということを考えると、サイズ的にも価格的にもADV150はちょうど良いところの設定だと思いますね。
自分が所有するなら、カラーリングはガンメタを選びますかね? 個人的な希望では、アフリカツインのアドベンチャースポーツのトリコロールカラーが欲しいな、と思いました。
あと試乗したのは2020年3月でしたが、まだ山に入ると寒かったので、オプションのグリップヒーターはぜひ付けたいです。
ADV150のライディングポジション
ADV150の シート高:795mm
[身長] ライダー:179cm/タンデムライダー:173cm
上位機種のX-ADV(745cc)では、身長の高い伊藤真一さんと大関さおりさんでも足をまっすぐ下へ降ろせないことから足着きに不安を覚えることがあったそうですが、ADV150に関してはそんな不安はまったくなし。
車重の軽さもあり、足着きに不満を覚える人はいないかも。タンデムシートについては、座り心地、足の快適さともに問題なし。ただし、グラブバーが太腿の位置にちょっと近いかな? というのが、タンデム評論家の大関さんの感想でした。
ADV150 各部解説
ADV150 伊藤真一さんの注目ポイント
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川忍/モデル:大関さおり
[ アルバム : ホンダ「ADV150」 はオリジナルサイトでご覧ください ]
ADV150 主なスペックと価格
全長×全幅×全高:1,960×760×1,150mm
ホイールベース:1,325mm
最低地上高:165mm
シート高:795mm
車両重量:134kg
エンジン形式:水冷4ストOHC単気筒
総排気量:149cc
ボア×ストローク:57.3×57.9mm
圧縮比:10.6
最高出力:11kW(15PS)/8,500rpm
最大トルク:14N・m(1.4kgf・m)/6,500rpm
燃料タンク容量:8.0L
変速機形式:無段変速式(Vマチック)
タイヤサイズ(前・後):110/80-14M/C 53P・130/70-13M/C 57P
ブレーキ形式(前・後):シングルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格(消費税10%込):45万1,000円
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みんなのコメント
知っていて当然と言うことなんだろうか?
勉強不足でした。
※一箇所「アルバム : ホンダ「ADV150」 はオリジナルサイトでご覧ください」と記述がありました。
失礼しました。