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珍車なのか名車なのか? GRMNやアストンマーティンへのOEM車もあった「トヨタiQ」の衝撃

掲載 更新 17
珍車なのか名車なのか? GRMNやアストンマーティンへのOEM車もあった「トヨタiQ」の衝撃

 発売後1カ月の累計受注台数はなんと約8000台!

 今、EVのマイクロカーが話題になっているが、じつはもう13年以上前の2008年10月、トヨタは新型車として 従来のサイズの概念を打破することを目指し「超小型ボディに、卓越した性能を凝縮し高い質感を備えたマイクロプレミアムカー、iQをデビューさせていた(2009年より欧州での販売を開始)。

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 全長は軽自動車より短い2985mm。全幅は5ナンバー枠に余裕で収まる1680mm。全高は立体駐車場への入庫も容易な1500mmというもので、そんなミニマムなボディに4人が乗車可能な超高効率パッケージを実現。当初は1リッターエンジンのみの搭載で、同排気量トップレベルの燃費性能を誇るとともに、3.9mという世界最初レベルの最小回転半径を実現。さらに世界初のSRSリヤウインドウカーテンシールドエアバッグを含む9個のエアバッグやS-VSCを全車に標準装備するなど、高い安全性能を兼ね備えていたのである。

 そんなiQにはデザイン的にも見るべき点が多く、巻き貝や波紋などをもとに作られた数理モデルを用い、自然界の造形美を活かした線や面を内外装デザインに採用。インテリアでは海中を優雅に舞うマンタをモチーフとしたセンタークラスターやドアトリムによって、質感ある室内空間を演出。

 ミニマムな2+2の室内空間ながら、ステアリングギヤボックスの上方配置やエアコンの大幅な小型化とそのインパネ中央部配置によって助手席側足もとスペースを拡大。結果、スライド位置を前方に出しやすくなり、助手席側の後席の足もとにゆとりをもたらすなど、パッケージ的にもアイディア満載、優れていたのである。乗車定員は4名ながら、実際には最大で大人3名+子供1人(後席右側)の乗車が推奨されていた(というか、大人4人はまず乗れない)。

 駆動方式はFFでミッションはCVTのみ。価格は140~160万円。販売開始時点での月販目標台数は2500台と控えめ。

 ところがだ。2008年11月には早くも(財)日本産業デザイン振興会が主催する2008年度グッドデザイン賞大賞〔内閣総理大臣賞〕を受賞!! 発売後1カ月の累計受注台数はなんと約8000台と、好調な立ち上がりを見せたのだった。一見、キワモノ的なクルマだが、当時の人気は絶大。軽自動車とは違うセカンドカー、サードカーとしての需要が盛り上がったというわけだ。

 そして2009年6月には、驚くべきニュースが飛び込んできた。トヨタはiQのバリエーションを拡大すると発表し、まずは国内向けにGR(GAZOO Racing)モデルを追加。さらに欧州向けとして、トヨタの欧州における事業統括会社のToyota Motor Europe NV/SA(TME) を通じ、英国アストンマーチンにiQをOEM供給することになったのだ!! そう、アストンマーチン・シグネットである。

 シグネットのボディパネルはほとんどがオリジナル!

 まず、iQ GAZOO Racing tuned by MNから説明すると、2007年のGAZOO Racingプロジェクト発足時から、トヨタマスターテストドライバーの成瀬弘らとともに追い求めている「クルマの味づくり」を具現化したチューニングカーの記念すべき第1弾!! であった。

 欧州仕様のiQ 130G 2WDの6速MTモデルをベースに、リヤディスクブレーキ(欧州仕様では標準装備/国内向けはドラムブレーキ)、専用チューニングサスペンション(約30mmローダウン)、16インチアルミホイール&タイヤ、強化ブレース、タコメーター、アルミペダル、リヤルーフエクステンション、GRMNエンブレムなどを専用装備。GAZOO Racingスタイルパッケージとして、フロントバンパースポイラー、フロントフォグランプ、サイドマッドガード、リヤバンパースポイラー&センターマフラー、オリジナルデカール、スポーツシートカバー(運転席、助手席)が別途、オプションで用意。価格はモデリスタカスタマイズ込み車両本体価格が197.2万円。GAZOO Racingスタイルパッケージが29万8000円だった。

 一方、アストンマーチン・シグネットは、アストンマーチンによる小型高級車として発売。日本から完成車の状態でアストンマーチンの工場に送られたあと、内外装を分解し、職人が1台につき150時間をかけて、アストンマーチンとしてカスタマイズする手法が取られたという。すごいのは、リヤフェンダーを除いたすべてのボディパネルがシグネット専用ということ。

 もちろん、インテリアもアストンマーチン流にカスタマイズされ、スポーティさと英国の超高級車ブランドならではの高級感を付加。まったく別次元の世界を創造しているのである。

 ちなみにサスペンション、エンジン、6速MT/CVTについてはiQそのものだ。異なるのは静粛性や走りのテイストとなる。それにしても、当時のシグネットを思い出せば、渋いボディカラー、iQとは別物の高級感ある内外装のカッコ良さは、今でも120%通用するものだと思えるほど。英国での価格は当時のレートで日本円に換算すると約620万円と超高価。日本では6速MTモデルで475万円、CVTモデルが490万円と、ベースモデルの約3倍に達していた。しかし、現在、日本で買うとすれば、2012-2013年式の中古車(走行距離少なめ)が700~800万円のプレミアム価格となっているから、二度驚かされる。

 iQは2016年春に販売を終了しているが、今、これにトヨタの電動システムを載せることができれば、電動車時代の2+1+αのシティコミューターとして、爆発的ヒットも期待できそうな気がする……。それぐらい、時を超えたデザイン性の持ち主でもあったのだ。

 ちなみにミニマムなサイズのマイクロプレミアムカーにして、パッケージにそこまでこだわりまくったかと言えば、開発責任者の中嶋裕樹チーフエンジニア(現Mid-size Vehicle Company President、CV Company President)の身長が185cmと高く、自身でも無理なく乗れるマイクロプレミアムカーを開発したからである。結果、高身長のドライバー、乗員の多い欧州での展開も可能になったというわけだ。

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