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メルセデスのBチーム化か独立の維持か、失墜ウイリアムズの2020年問題【今宮純のニュース考察】

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メルセデスのBチーム化か独立の維持か、失墜ウイリアムズの2020年問題【今宮純のニュース考察】

 24時間飛びかう情報や氾濫するニュース、モータースポーツジャーナリスト今宮純氏が独自の視点からそのシンソウをフカヨミする。今回は『スポーツ・ナショナリズム』をひとつのテーマに5つのニュースを選択。
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■まだ未入賞のアントニオ・ジョビナッツィに『バンディーニ賞』

 今年レギュラー・ドライバーは15カ国から出場しているが、イタリア人ドライバーは彼ひとりだ。2011年までいたヤルノ・トゥルーリ、アントニオ・リウッツィのあと、8年ぶりに復活したアルファロメオのレギュラーに。

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 結果はまだ出せていないが『2019年度バンディーニ賞』に選出された。この賞典はフェラーリのエースだったイタリア人ロレンツォ・バンディーニを追悼し、1992年に創設されている。バンディーニは、1967年モナコGPで2位走行中にシケインでクラッシュ、マシンが炎上し焼死。日本国内でも悲惨な事故が報じられた。エースの死後、フェラーリが母国人起用を避けるようになったのは伝説のひとつ。

 この賞典は主に若いドライバーが対象だがチーム関係者も選ばれている。成績だけでなく功績なども鑑みて授与され、前年度はメルセデスのバルテリ・ボッタスだった。イタリア人ドライバーおよび同国の関係者・団体が過去6回選出されていて、今年はいわば『フォルツァ・ジョビナッツィ』激励の意味合いが濃い。ちなみにキミ・ライコネンは04年に受賞している。

■35年ぶりオランダGP復活へ、あの砂混じりだったザンドフールトで
 初めて行ったザンドフールト、海水浴場の傍にあるような狭いコースに驚いた(もう45年が経つ)。鈴鹿サーキットの設計・監修をしたジョン・フーゲンホルツ氏が支配人を務めていて、だから「コーナーの配置やつながりが似ている」と直感。

 GP開催は1985年が最後で先月、2020年カレンダー入りが明らかにされた。デビューして5年、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンの存在力が母国GPを蘇らせた。懐かしのザントフールトが近代サーキット・レベルにどう改修されるのか。“兄弟関係?”の鈴鹿サーキットを参考にしてみては……。

■失墜ウイリアムズの2020年問題


 不吉な事実、最下位チームは消えていく運命がつづいた――。2017年ザウバー(現アルファロメオ)、2016年マノー、2015年マルシャ、2014年ケータハム、2012年HRT。古豪ウイリアムズは昨年最下位、今もそのポジションのままだ。

 現実的な見地に立てば2020年に新たな株主とともにチーム再建に踏み切るか、あるいはメルセデスBチーム化を受け入れるか。いや古参コンストラクターのプライドにかけて、闘将フランク・ウイリアムズの意地をつらぬくか。ぎりぎりの選択タイムリミットが迫っている。

 カナダGP金曜に新鋭ニコラス・ラティフィを起用、現在FIA-F2シリーズ首位の彼は、カナダの富豪の息子だ。一方マシンの現状に不信感を露わにするロバート・クビサと彼を支援するポーランド企業は、ウイリアムズの低迷状態に我慢の限界に達している。

 チームメイトのジョージ・ラッセルは、安泰だがもう一つのシートをめぐり、“カナダ対ポーランド”が表面化している。

 さらに第3の存在の動きもありそう。今年メルセデス・リザーブで一浪中のエステバン・オコンだ。来年の“二浪生活”は受け入れられず、レギュラー昇格が不透明ないま、可能性があるのはウイリアムズにしぼられる。

 トト・ウオルフはかつてウイリアムズの主要メンバーでもあり、今はメルセデスの重鎮としてF1界で発言力を有する。そこで上から目線で今のラッセル残留と子飼いのオコンをプッシュ、事実上の“Bチーム化”を説得、これが英国古参チーム「延命の選択」だと……。闘将フランクさんは今年4月で77歳、どうされるのだろう。

■2021年大改革規定先送り、リバティ・メディアの意図は?


 アメリカのプロスポーツ界では<戦力の均衡化>が常に考えられてきた。毎年同じチームが連覇するとファンに飽きられる。そこでMLB(メジャーリーグ・ベースボール)もNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)もNHL(ナショナル・ホッケーリーグ)も、特定チームがますます強くならないような手段を講じる。バジェットキャップ(予算)や新人獲得ドラフト制度など規則を変え、連覇が難しいように考慮するのだ。これがアメリカン・プロスポーツ(エンターテインメント・ショー)の原点思考なのだろう。

 ヨーロッパは違っている。たとえばフットボール(サッカー)界は全く逆、ビッグチームは巨額な資金をバックにスター軍団を組織し連覇を目指す。今のメルセデス・チームはそれに近い。大物エンジニアが多くいて、ファクトリーには1000人近いスタッフが従事しその人件費は膨大だ。

 F1大改革規定を進めるリバティ・メディアは、21年から「年間予算額1億7500万ドル(約187億円)」のバジェットキャップを提示。ただしドライバー契約金やパワーユニット(PU/エンジン)金額など、マーケティング経費もこれには含まれないという。事実上これではトップチームは総額“3億ドル(約321億円)”の活動予算も可能、現状からの大幅カットにはなりそうにない。またその資金使途や明細などの会計検査も難しい。

 バジェットキャップの論点をまとめると、アメリカン・プロスポーツの原点思考とヨーロッパのそれとの間にはギャップがある。2021年大改革にはほかにも技術規定、競技規則にかかわる案件が多い。6月から10月末までに後倒しされたのは次善の策であり、リバティ・メディアにはなによりまず<戦力均衡化>を望もう。7戦7人ウイナーが出たシーズンから7年が経つ――。

■今年の『世界三大レース』は独メルセデス、米シボレー、日トヨタが勝利

 三大レースは毎年5月から6月の半月間に集中して開かれる。F1モナコGPは1929年から77回、インディ500マイルは1911年から103回、ル・マン24時間は1923年から87回。これまでに日本のエンジンが初勝利を記したのは順に1987年ホンダ、2004年トヨタ、1991年マツダだ。

 今年はモナコGPがメルセデス、インディ500マイルがシボレー、ル・マン24時間はトヨタ。ドイツとアメリカと日本の“三大自動車国”が勝ち分けた。いまだジャパン・パワーはこの三大レースでトリプル・クラウンを果たしてはいない。エンジンが先かドライバーが先に現れるか、ル・マン24時間が過ぎるといつも思う。 

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