トップカテゴリーのレースで活躍し続けることの難しさは、単にスキルやスピードを維持・成長させることの困難さだけにあるのではない。チームを継続的に運営し、その資金を調達する。通常、大きなバイクショップや、メーカーがそれに関わるのだが、GOSHI Racingの場合はモーターサイクルに関わるサプライヤーが主体となって動く。新たな形のレーシングシーンの創出を、2020年もOff1.jpは追いかける。
前年に増して強化されたマシン
CRF250Rシリーズは、この20年モデルで世代3年目。1年目で悩まされた薄めの低中速トルクは、すでにスタンダード状態で解決されており、年々開発が進んでそのままでも戦闘力を高くもったマシンに仕上がっている。GOSHI Racingでは自社の事業でもあるメインのエキゾースト開発を中心に、20年モデルに対して再開発をかけている。
《比較検証》スポーツ走行が楽しい250ccはどのバイク? カワサキNinja250・ヤマハYZF-R25・スズキGSX250R・ホンダCBR250RR
20バージョンのGOSHIエキゾースト
去年から比べても、「中身を相当変えているので、仕様は昨年と別物」というほどに変更されたというサイレンサー。エキゾーストパイプは一旦太くなって、そこからまた細くなっていく形状で、珍しい。当初、3月の開幕までにカリフォルニアでも開発をしてきたGOSHIレーシングだが、コロナの影響で浮いてしまった時間はCRF450Rの開発に充てた。
石浦諒をはじめ、GOSHIレーシングのメンバーは、言うなれば合志技研の開発社員だから、当然時間をレースだけに充てることは許されない。間があけば、社としての開発を前進させる必要があるから、通常の「とにかくレースに向けて」走り込みを続ける全日本ライダーとは状況が違う。
真夏のスタート、冷却システムを見なおした
ツインエアーのオイルクーラー、ボイセンのインペラに、各箇所のゴールドの耐熱フィルム。真夏のレースから開幕するため、熱対策を講じている。気温がおちつけば、今後調整していく箇所だとのこと。
ラジエターホースは、とりまわしを変更することで冷却効率を高めるMOTO HOSEを採用する。ラジエターはセラコートされ、こちらも冷却効率をアップ。
スポーク・ホイールはテクニクスTGRの特別仕様
前回に引きつづき、テクニクスの協賛のもと、TGRのホイールとスポーク。特に、新たにラインアップされたダブルバテッドのブラックスポークがクール。
フロントサスペンションは、オールゴールド
サスペンションは、昨年に引き続きKYB。インナーチューブのコーティングは、鈍く光る材質で見慣れないもの。今後、製品開発にフィードバックされていくものだろう。
石浦諒に合わせて、コマ一つから調整された足周り
チェーンは直進安定性を向上させるため、めいっぱい引いたセッティング。スプロケットは、直前に変更したとのことだ。
[ アルバム : GOSHI Racing Details はオリジナルサイトでご覧ください ]
剛性バランスチューニングのため、ベータチタンのボルトを使用
こちらも、昨年に引き続いているもの。エンジンハンガーや、リンク周りなどの剛性に関わる部分に対し、ベータチタンのボルトを使用することで、剛性をチューニングしている。石浦の好みは、ニュートラルなもので、部分的にスタンダードからスペックを変えているようだ。特に今年は、リンクまわりの図面を引き直して、再構成しなおしたとのこと。
苦戦を強いられた開幕
誰にとっても同じことだったが、開幕のSUGOはタフなレースになった。コンディションは、いつものSUGOとは異なっていて、あまりレーストラックを掘り返していないハードパック。予選の土曜日は、とにかくホコリが酷くペースも掴めない。石浦は、予選のスタートを失敗してしまい、11位でのフィニッシュ。苦しい立ち上がりだった。「思うように走れず、自分のスイッチもはいらなくて、苦戦しました」とは石浦本人の談。
昨年まで、レーシングアドバイザーとして活躍した馬場大貴にかわり、今年からは深谷広一が就任。そして、オートレースへの転向を発表済みの北原岳哲がスポットでアドバイザーに。
レース中も、サインボードに書くべきことをアドバイザーらのコースの状況、石浦の走り、様々なアドバイスをもとにすることができる。その体制は、相当に厚い。
レースモードと開発
「だいたい、週に2回250に乗って、他の日は450の開発に専念していました。社としては、開幕が送れたことで時間ができて、開発を前倒しするという計画になりました。自分でもっとコントロールできていればよかったのですが、結果敵には250でレースモードに切り替えられなかったことが、敗因になりました」石浦は言う。
日曜の決勝は、夜に降った雨でウェットコンディションだった。タイヤは、X20をチョイス。対策に、歯車が狂うようなことはなかったのだが、ペースが思うように上がらない。
ヒート1、スタートは6番手での立ち上がり。だが、中盤の混戦に巻き込まれてしまい、順位を11番手まで下げてしまう。「ワダチができづらいコンディションだったのと、土曜と日曜のコンディションの違いに対応することが難しかったですね。予選の結果がよくなかったこともあって、グリッドが悪く、1コーナーに先に入れるようなスタートにはなりづらかったです。タイミングは合うのですが、2コーナーまでのこなしも、うまいこといかないですね。特にSUGOは、予選からしっかり組み立てられないと成績につながらない」と石浦。
ヒート2では「状況としては、ベストコンディションでした。スタートでさらに出遅れてしまったのと、途中で転倒してしまったのが悪影響でした」と言う。
「スプロケットと、燃調はかなり悩みました。今日は、特にグリップがよかったので路面にパワーが負けているような状況だったんです。マシンとしては、18-19のバイクから20になって、すごくよくなっているんですが、逆に18-19でかけた開発を投入しづらく、ノーマルに戻す方向でマシンづくりをしてきていました。10月の第2戦までに、いろいろと改善をしてきたいと思っています」とのこと。
第2戦でもSUGO。1ヶ月の準備期間をいかに活かせるかが、キーになりそうだ。
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