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90年ぶりにベントレーのレーシングマシンが蘇る! 復刻版「ベントレー ブロワー」のプロトタイプが完成

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90年ぶりにベントレーのレーシングマシンが蘇る! 復刻版「ベントレー ブロワー」のプロトタイプが完成

Bentley Blower “Car Zero”

ベントレー ブロワー “カーゼロ”

20周年を迎えたアウディ・ミュージアム、希少なレーシングカーや近年の車両を加えるなど展示内容を刷新

12台限定で製造される復刻モデルは全て完売済み

ベントレーマリナーが、4万時間をかけて製作した新しい「ベントレー ブロワー」が公開された。ブロワーが新たに製作されるのは実に90年ぶりとなり、「ブロワー コンティニュエーション シリーズ(Blower Continuation Series)」の復刻生産に先駆けて発表されたこのプロトタイプは「カーゼロ」と名付けられた。

カーゼロに続いて製造される12台の復刻モデルはすでに完売。その製作には、1920年代後半にオリジナルブロワーが製造されたときの図面と治工具が使用される。

ベントレーが所有する2号車をパーツレベルに分解

オリジナルモデルは、ヘンリー“ティム”バーキン卿のレースチームのために4台を製造。4台のチームカーの中でベントレーが所有する2号車(シャシーナンバー「HB3403」、エンジンナンバー「SM3902」、ナンバー「UU5872」)を、このコンティニュエーション シリーズのために分解し、すべてのパーツを残らずレーザースキャンするところから、このプロトタイプの製作はスタートした。

収集したデータをもとに、新たなブロワー用パーツ1846個が設計され、手作業で製作。ただし、そのうち230個はアッセンブリーパーツであり、その中にはエンジンも含まれる。ネジやインテリアトリムなどの個々のパーツを含めると、実際には数千ものパーツが製作されたことになる。

こうしたパーツやアッセンブリーは、ベントレーマリナープロジェクトチームのエンジニア、職人、テクニシャンが英国内のスペシャリストやサプライヤーと協力して作り上げられた。

本格的な製造に向けて数ヵ月間のテストを予定

カーゼロは12台の復刻モデルに先駆けて、開発・試験用に製作されたプロトタイプであり、今後数ヵ月かけて耐久試験と性能試験を実施。エクステリアはグロスブラック、インテリアはブリッジ・オブ・ウィアー社製のオックスブラッドと呼ばれる赤いレザーで彩られた。

このカーゼロの発表に伴い、ベントレーモーターズがクルーに建設した新施設も初公開された。新施設は1946年からベントレー本社が置かれているピムズレーン一帯の大規模な工事を含め、本社敷地を拡張する形で建設されたもので、将来に向けて重要な役割を果たすことになる。

発表会でカーゼロのドライバーを務め、ピムズレーンを走行したベントレーモーターズのエイドリアン・ホールマーク会長兼CEOは次のようにコメントした。

「ブロワー コンティニュエーション シリーズの初公開という大切な日であると同時に、ベントレーモーターズにとっても記念すべき日となりました。90年ぶりに製作されたブロワーを運転できたことは大変光栄であり、ティム・バーキン卿もこのクルマの出来栄えに満足してくれることと思います。このクルマのクラフトマンシップは実に素晴らしく、一世を風靡したオリジナルブロワーの走りが正確に再現されていたことを、ご報告させていただきます」

「このブロワーでピムズレーンを走行し、喜びもひとしおです。ベントレーはこのたび、ピムズレーンの本社敷地を拡張し、新施設を建設しました。本社の拡張はベントレーの未来にとっても、クルーという地域にとっても大変意味のあることです。新施設は明るい未来に向けた具体的戦略のひとつであり、サステナブルなラグジュアリーモビリティにおける世界的リーダーを目指していく上で、重要な足がかりとなります」

ブロワー コンティニュエーション シリーズはベントレーマリナーの「クラシック」部門が顧客のために手がけた初めてのプロジェクトとなった。マリナーにはこのほかに、特別限定車バカラルを製作した「コーチビルド」部門とコンチネンタルGTマリナーを製作する「コレクション」部門がある。

カーゼロを生んだ設計者と職人たち

カーゼロの製作は、オリジナルブロワー4台の製造時に使用された設計図や下書き、当時撮影された写真を徹底的に分析することからスタートした。次に取り掛かったのは、ベントレーが所有する世界一貴重といっても過言ではないベントレーの1台、ブロワー2号車の分解だった。フレームとパーツをレーザースキャンし、その精密なデータを基に、CADによる完璧なデジタルモデルが完成している。

続いて、各パーツを製作する職人たちが集められた。こうして製作されたパーツを使い、ベントレーマリナーが形にしたのがカーゼロとなる。マリナーのディレクターを務めるポール・ウィリアムズは、その製造工程について、次のように説明した。

「この数ヵ月、カーゼロが完成していく様子を驚きと感動をもって見守ってきました。最新のデジタル技術に命を吹き込んだのは本物の匠の技であり、多くのパーツには1920年代の製造方法が用いられています。このように新旧の技を組み合わせることがブロワーの製作には不可欠であったため、ベントレーのエンジニアをも唸らせる、高いスキルをお持ちのサプライヤーの皆様にご協力いただきました」

「私たちが作成した部品の図面や仕様書は数千枚に及びましたが、完成した部品がマリナーに納品され、ブロワーが徐々に形になっていくのを目の当たりにすると、すべての苦労が報われる思いでした。現在はカーゼロの試験を実施中です。その後、お客様のために12台の復刻モデルの製作に取り掛かります」

高い技術を持つサプライヤーによる協力体制

ベントレーマリナーはブロワー コンティニュエーション シリーズの製作当初から、パーツを外部に依頼することを計画。今回のプロジェクトでは、何世代にもわたって伝統的技術を継承している英国きってのスペシャリストらに協力を仰いだ。

シャシーは「イスラエル・ニュートン&サンズ」社が極厚鋼板を手作業で成形し、熱間によるリベット留めによって完成させた。同社は英国ダービーのほど近くに拠点を置き、蒸気機関車のボイラーやトラクションエンジンの製作を手掛けてきた創業200年の歴史ある会社で、伝統的工法による金属の鍛造・成形加工を得意としている。

ブロワーの主要パーツのいくつかを忠実に再現したのはビスターヘリテージに拠点を置く「ビンテージ・カー・ラジエーター・カンパニー」。鏡面仕上げが施されたニッケルシルバー地金製ラジエーターシェルや、スチールと銅板を打ち出し成形したフューエルタンクなどを同社が担当した。この会社はビンテージカーのラジエーターやコンポーネントの製作・復元におけるトップメーカーで、最高レベルのクラフトマンシップを誇り、今回のような複雑かつ重要なパーツの製作に欠かせない存在だ。

リーフスプリングとシャックルは、ウェストミッドランズにある「ジョーンズ・スプリング」社のオリジナル仕様となる。こちらは鍛冶屋をルーツとし、75年近い歴史を持つ会社。ブロワーのシンボルであるヘッドライトは、シェフィールドにある「ビンテージ・ヘッドランプ・レストレーション・インターナショナル」社によって再現された。親子経営のこの会社は銀細工で知られ、オリジナルの仕様に従ってビンテージデザインのヘッドランプを製作するその技術は、世界的に高い評価を得ている。

アッシュフレームはラドローにある「ロマックス・コーチビルダーズ」社が製作し、クルーのマリナートリムショップにて、職人らが最終仕上げを施した。

ブロワーのボディは、25mに及ぶ人工皮革のレキシン(Rexine)で覆われている。ボディの内装はマリナーの名匠の手によって仕上げられた。カーゼロのグロスブラックのエクステリアに「ブリッジ・オブ・ウィアー」社製のオックスブラッドと呼ばれる赤いレザーと、それにマッチした内装が美しく映えている。オリジナルのブロワーと同じく、シートの中身には計10kgの天然馬毛が使用された。

第二次世界大戦時に使用されたエンジン用テストベッド

カーゼロに搭載されるエンジンは、W.O.ベントレー自らが設計した4.5リッター直列4気筒16バルブスーパーチャージャー。ワトフォードにある「NDR」社などの協力を得て新たに製作された。このエンジンにはアルミニウムピストン、オーバーヘッドカムシャフト、4バルブ、ツインスパークイグニッションなど、1970年代のスポーツカーエンジンもうらやむような革新的技術が数多く採用されている。

アムハースト・ヴィリヤースの設計によるルーツ式スーパーチャージャーも新たに機械加工され、この4.5リッターエンジンに搭載。今回製作されたエンジンは、1920年代後半にバーキン卿のレースチームのために製作された4台のブロワーのエンジンを忠実に再現したもので、クランクケースにマグネシウムが使用されている。

このエンジンの組立と並行し、100年近く前に設計されたエンジンをテストできるよう、クルー本社にあるエンジンテストベッドが改造された。このエンジンテスト設備は1938年の工場建設時からベントレーに存在していたもので、第二次世界大戦中には航空機用エンジン「マーリンV12」の試運転やパワーテストに使われていた。マーリンV12は「スピットファイア」や「ハリケーン」といった戦闘機に搭載されたエンジンだ。

ベントレーのエンジニアがエンジンをモニターし、正確なパラメーターでエンジンを作動できるようにするため、エンジンの測定と制御に使う新しいソフトウェアの作成とその動作確認も行われた。ブロワーのパワートレインは、現在のベントレーに搭載されているエンジンとはサイズも形状も全く異なるため、再現されたエンジンをテストベットに取り付ける際には、マーリンエンジンのテスト用としてベントレーに保管されていた当時の取付具も多数活用されたという。

完成したエンジンは、カーゼロへと搭載される前に、テストスケジュールに従って試運転が行われた。

最高速度試験の候補にホールマークCEOの名前も

カーゼロは今後、実世界での耐久試験に入る。走行時間と走行速度を徐々に増加させながら、より厳しい条件下で機能性と耐久性を確認していくことになるという。

このテストプログラムは8000kmのトラック走行を含め、総走行距離3万5000kmを達成する計画だ。これは北京・パリモーターチャレンジや、ミッレミリアなどのクラシックカーラリーでの走行を想定して行われる。勇敢なドライバーによる最高速での走行試験も予定されており、最有力候補としてエイドリアン・ホールマーク会長兼CEOの名前も挙がっているとのことだ。

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みんなのコメント

1件
  • コーチビルダーの国だからこその成せる業ですね。本当に素晴らしいと思います。
    完成したクルマも見てみたいケド、完成されるまでのドキュメンタリーを是非見てみたいですね!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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