自動車販売店やパーツ販売店が、お客からの入金を受け取ったまま(納品せずに)逃亡する事件が増えている。不景気が続き、そこにコロナ禍が追い打ちをかけたからか、「そうした事例」が各地から寄せられているという。先日長野の「デュナミスレーシング」が数億円の入金済み注文を放ったまま店長が逃亡した事件をお伝えしたが、今回は新潟で同様の事件が発生した。以下、デュナミス事件の続報とともにお届けします。
文/加藤久美子
写真/被害者Aさん提供
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■新潟のアメ車カスタムショップ 経営者夫婦が失踪
筆者は「自動車生活」に関する記事を多数書いていることもあってか、最近はクルマ売買やカーシェア投資、チャイルドシートの不具合に至るまで、「クルマ関連トラブル」に関する情報を提供いただく機会が増えた。
2022年2月28日に届いたメールには、新潟県南魚沼市にある『カスタムショップホープ』の経営者夫婦が複数の客(30名以上)からカスタマイズのための工賃やホイール代、そのほかパーツ代などのお金を預かったまま、失踪したことが記されていた。
送信者であるAさんのメールはこのような書き出しから始まっていた。
「先日新潟県内の車屋『カスタムショップホープ』の代表者B夫婦が、私を含む顧客の現金と所有物を持ち逃げしました。臨時で被害者の会を立ち上げ、総出で事件の早期解決に向けて奔走しております。被害者一同、このまま泣き寝入りになってしまうのではないかと、毎日不安な日々を送っています。」
「カスタムショップホープ」のブログ。販売車両などが掲載されているが…
「ホープ」は代表Bが2019年2月から始めた店で、現在も残る公式ブログはオープンを知らせる意気揚々とした内容から始まっている(2019年2月16日)。
『新潟県南魚沼市にてカスタムショップをオープンいたしました!!
カスタムショップといっても車やバイクにかかわることすべてを安く、丁寧に、早くやっていますので、気軽にご用命ください!
板金塗装、カスタムペイント、部品発注、取り付け、車検代行等何でもやらせていただきます!
整備士ちゃんといますので確実な作業をしております!!』
アメリカの人気パーツブランド、「FORGIATO」(超高級鍛造ラグジュアリー・カスタムホイールブランド)や、「FURY TIRES」(オフロードタイヤブランド)、「TRUE SPIKE」(ホイールナットブランド)などの正規代理店(当時)であることもアピールしている。車種で言えばシボレー・サバーバン、ダッジ・チャレンジャーなどのアメリカ車を専門としたカスタムショップである。
Googleマップで「カスタムショップホープ」を見ると現在すでに「閉業」となっていた。ホープはこれまでサマーコスト千葉、ニューラグーン新潟、北陸カスタムショー、名古屋クロスファイブなどのカーショウに出展しており、イベントでホープを知り、カスタムをオーダーするようになった客も少なくない。新潟県外から訪れる客も多かったという。
AさんはBがアメリカ車のオーナーズクラブの会長をしていた時に知り合い、この地域では他にカスタムショップなど存在しないこともあって車両やパーツのオーダーをすることになった。
2019年から2021年にかけて複数の客が車両整備と車両購入をホープに依頼。中には納品されたものもあったが、「コロナの影響で流通に遅れが出ている。外注先からの納品を待っている状況のため、もう少し時間を要する。」など、コロナを理由にどんどん先延ばしにされ、昨年12月ごろからはBからの連絡もなくなり音信不通になったという。
その後、各パーツメーカーの日本代理店にホープからの注文履歴を問い合わせたところ、実際にホープから発注が入った形跡はなく、架空発注だったことが判明した。
被害者の車両は400万円相当のシボレー・サバーバンが中心で、foagiato(フォージアート)に代表される、KRZ/APR/KINGなどの高級ホイール/パーツも人気が高かった。前払い制でオーダーした物がしばらく時間がたってもいっこうに届く気配がないことに疑問を感じ、毎週のように催促の連絡をしていた客も少なくなかった。
■トヨタダイナをレンタルし、パーツを搬出していた?
「一部、メーカーからホープに届いていたパーツもあったようですが、客の手に渡ることはなく横領されたとみています。」(被害者)
客がホープにオーダーし前払いで入金→ホープがメーカーに発注→メーカーからホープにパーツが届く…。本来ならここで、ホープは客に連絡をし、パーツが届いたことを知らせ、クルマに装着する作業日などについて相談し、日程が決まれば客はホープにクルマを預けて作業し、完了…となるわけだが、被害者によると、「メーカーから届いたパーツを客に連絡することもなく、預かったクルマに装着することもなく、パーツを持ち逃げしていた」という。
ちなみに、フォージアートに代表される鍛造ホイールは新品なら4本セットで100万円超も多く、中古品でも70~80万円以上で販売される高級品だ。
なぜ横領したとわかるのか? それは多数の目撃者が、「パーツ運びだし」の現場を目撃していたからだ。
「2/7-2/11の間に近隣のレンタカーショップにて、トヨタダイナ(パワーゲート車)のレンタル履歴がありました。ホープの近所に住む人たちによって、車両パーツやホイールを搬出している姿が目撃されています。その間に顧客の所有物を持ち出したとされています。」(被害者複数)
現在はホープ店内も作業場も人の気配はなく、まさにもぬけのからの状態。被害者の見立てでは2/18未明に夜逃げをはかったとされている。土地所有者の許可を得て被害者数名が店舗内に入ったところ、事務所は書類などが散乱し、電話代や光熱費などの請求書が束になって放置されていたという。
もぬけのカラとなっていた事務所。書類が散乱しているが、お金になりそうなものや行先を示すような書類はなかったという
また、経営者Bは趣味と実益を兼ねた「インセクトブリーダー(昆虫繁殖家)」としても活動。カブトムシの生育や繁殖を行うための各種の道具(繁殖を行うための容器)や用品(カブトムシの餌など)なども見つかっており、カブトムシを飼育していた一角にはカブトムシの死骸も多数、転がっていた。
■経営者Bは10代から詐欺罪での逮捕歴あり?
現在までに分かっているだけで被害総額は5000万円以上、被害者数は30名以上とされているが、被害を訴えるのは一般ユーザーだけではない。同様の手口で、業者も売掛金の被害に遭っている。
「被害者は、オーナー、業者ともに今後さらに増える見込みです。県外の被害者も散見されており、いまだ自分が被害に遭っていることを認知されていない方々も少なくはないと思われます」(被害者)
もちろん、横領された金品は今もなお行方不明で夫婦で逃げている可能性が高い経営者Bの足取りもまったく掴めていない。所轄の警察署へも相談が相次いでいるとのことだが、被害届は受理されず刑事事件として取り扱ってくれた例もまだないようだ。
「明らかに被害を受けている人がたくさんいるのに、警察は本当に動きません!非常に憤りを隠せない気持ちです。顧問弁護士をつけて民事裁判として戦っていく方もいますが、被害者の会として集団訴訟をとる動きも進めています。」(Aさん)
ところでホープ経営者Bとはどんな人物だったのか。あるパーツ業者によると、「15-22歳の間に、詐欺罪で刑務所に入ったり出たりしていたとよく話していました。年齢からして振り込め詐欺などの特殊詐欺で受け子や出し子をしていたのかもしれません。まるで武勇伝のように話していましたよ。」と、真実かどうかは定かではないが驚く「過去」が明らかにされている。
しかし、「逮捕歴」についてAさんをはじめとする一般客は初耳とのこと。
「逮捕歴に関しては本人の口から一部の業者に対して脅し文句で言っていたようです。客に対してはいい顔をしていたので、私も含め逮捕に関しては正直初耳でした。なので、真相は定かではないですが、そのような口実で恫喝の被害に遭っている業者も現に存在しているという状況です。」(Aさん)
■多発する「クルマ屋」「新車販売店」の「夜逃げ」
コロナ禍を原因とする経営不振によるものかどうか。全国で自動車販売やチューニングやカスタムに関わる被害が増えつつある。
埼玉県三郷市にあるオールド三菱車を専門としたショップ「シリウス」も今回紹介したホープ同様、客のクルマとお金を預かったままで数か月放置されている。店の周辺にはナンバーのついていない名車たちがゴロゴロ放置されている状態で経営者の行方は分かっていない。
十数年前から愛車(ランサーターボ)のメンテや取材で何度か訪れていたという筆者の友人編集者曰く、
「歴史と実績のある有名店ですよね。気のいい店主さんで、悪事をはたらく感じではなかったですよ。でも、店主さんがおひとりで切り盛りしているお店だったこともあってか、運営がややルーズな印象はありました。雑誌でたびたび紹介されてきた名店ですが、自動車雑誌の編集部いわく、しばらく前から連絡がとれていないそうです。」
コロナが関係しているかどうかは不明だが、海外から輸入した古い外国車を運輸支局の駐車場に放置した例もある。たまたま筆者と息子が運輸支局を訪れた際にその珍しいクルマは支局の駐車場に停まっていた。
「構内及び出入口通路上での長時間の無断駐車はご遠慮ください」との張り紙がフロントガラスに貼られており、驚いていたのだが、それはのちにガス検を依頼していた業者が放置していたクルマであることが分かった。
そのクルマのオーナーが北関東の業者に新規登録の手続きをお願いしたところ、北関東の業者が横浜の業者にガス検を依頼。横浜の業者がガス検の途中で運輸支局の駐車場に放置していったという。ちなみにその数日後にクルマは移動している。
また、夜逃げといえば2022年1月21日にベストカーWebに掲載された、被害総額4億円との試算もある長野の車販売店「デュナミスレーシング」について少し触れておきたい。
入金から2年たっても納車ナシ返金ナシってマジか… 被害者続出!! 狂気の車販売店「デュナミスレーシング」の闇
昨年末の夜逃げ発覚から約2カ月が経過しており、被害の全貌が明らかになってきている。
もちろん注文済み、入金済みのはずの新型車はいまだにお客さんのもとに納車されておらず、返金もされていないが、デュナミスレーシングのO社長はクルマ購入客以外にも、町内会の役員や仕入れの取引先、元従業員に対しても多額の借金をしていたことが分かった。
また、信濃毎日新聞の2022年2月16日(水)付け記事によると、デュナミスレーシングO社長は店と工場の賃料を2年半以上滞納しており、所有者などから建物明け渡しなど求めて2021年11月に提訴されていたことがわかっている。
2022年2月8日、長野県警はデュナミスレーシングと隣接する整備工場や作業場を家宅捜索に入った。警察関係者からは「O社長の口座や資産等をすべて調べたところ、金はまったくと言っていいほどなかった。詐欺罪での逮捕は確実」、「道路運送車両法でも行ける」という情報が入ってきている。
「カスタムショップホープ」はもちろん、デュナミスレーシングについても最新情報や今後の見通しなどを別記事で扱うつもりだ。
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福島県須賀川市の中古車販売店の店長も
元暴力団関係者です。