新車市場がもっと賑やかだった1990年代ごろまで、地味に流行った並行輸入車。ざっくりいえば日本で正規販売していない珍車を個人で輸入して日本で楽しむってアレだ。
中古車サイトを見るとプリメーラやらセルシオなどなど、当時人気だったモデルの左ハンドル仕様がチラホラ。差別化図るにはピッタリだけど、それ以外にどんな魅力があるのか。オデッセイから初代bBの北米仕様に乗り換えた業界きってのマニアに直撃!!
かっこいいけど何かと不便じゃないか……日本車の左ハンドル謎すぎる魅力
文/小鮒康一、写真/小鮒康一・ベストカーWEB編集部
■早く手に入れるため!? 90年代に逆輸入車が流行ったワケが超バブリー
海外向けに生産された日本車を輸入して日本で乗るという変わった人たちも一定数存在する。クルマには色々な楽しみかたがある……
左側通行の日本では当然ながら基本的に右ハンドルの車両が一般的で、左ハンドルのクルマは一部の輸入車に限られるというのが通常のお話だろう。
しかし中には海外向けに生産された日本車をわざわざ輸入して日本で乗るという変わった人たちも一定数存在している。まあその変わった人の一人が筆者でもあるわけなのだが。
ではなぜわざわざ日本車の左ハンドル仕様を購入して乗るのかという話だが、90年代のバルブ期においては一部の人気車種は納車待ちがとんでもない長さとなっていた。
これは現在のように半導体不足のような理由ではなく、バブル期で景気が良すぎたためにみんながこぞって人気車種を購入しようと殺到したためだ。
当時の代表的な車種は初代ロードスターや初代NSX、初代セルシオなど、どれも現在に至るまで高い評価を集め続けている車種たちで、これらの車両は高い人気ゆえに納期がとんでもない長さとなっていたのだ。
ただ、当時の日本人は「お金ならあるぞ!」というユーザーが多かったため、納期のかかる車両を待つのではなく、待たずに購入することができた海外で販売される輸出仕様車を購入して、その優越感に浸っていたというワケなのである。
■人と被りたくない!! そもそもアメリカ愛が強すぎる!! など左ハン日本車を選ぶ理由はさまざま
他に日本車の左ハンドル仕様を買うユーザー真理としては、他人と同じクルマには乗りたくない、というものがある。
そういったユーザーは日本でも販売されていた車両の左ハンドル車よりも、日本に導入されていない海外専売の日本車を購入するケースが多く、こちらも他人と違うことに歓びを感じている層が多いようだ。
続いて筆者も含めて少数ながら存在するのが、いわゆるマニアな目線で左ハンドルの日本車に乗りたいというユーザーたちだ。
中にはアメリカ的なライフスタイル全体に憧れを持ち、クルマだけでなくファッションや小物類、中には自宅やガレージまでもアメリカンスタイルを貫いている人たちも存在。そういったユーザーはそういったライフスタイルの一環として左ハンドルの日本車を選ぶケースが多い。
ただ、こういったユーザーたちはホンモノのアメ車を購入するケースも少なくないので、日本ブランドの車両を選ぶというのは、それなりにこだわりを持ったユーザーと言えるだろう。
このようなアメリカ的なライフスタイルを楽しんでいるユーザーについては、カスタマイズも現地に実際に存在していそうな仕様を狙うことが多く、アメリカのホームセンターで販売されているエアーフレッシュナーや小物類を車載するといった細かなこだわりを見せるケースも珍しくないのだ。
■キホン同じだけど微妙に違いが!! 日本にない機能などを突き詰めるマニア多数
初代トヨタ bB(北米仕様)。北米では「サイオン xB」として販売されていた。誕生理由には、登場当時には日本ではマイナーだった「カスタマイズ」を定着させるという目的もあった。北米仕様はそのまま「アメリカンカスタム」ということになる!?
そしてもう一つのマニア目線でクルマをチョイスするのが、日本仕様との僅かな差異に歓びを感じてしまうという筆者のようなタイプとなる。
車種にもよるが、左ハンドル圏の中でも北米仕様は日本仕様との差異が多い車種が少なくない。
バンパーの形状や大きさが異なるという比較的大きなものから、点灯式のサイドマーカーが備わる点や灯火類のデザインや光り方が異なるなどの細かな違いも存在しているため、そういった小さな違いに歓びを感じるという特異体質なユーザーとなる。
中には「輸出仕様化け」というジャンルもあり、右ハンドルの日本仕様をベースとしながらも、内外装の多くの部分を左ハンドルの輸出仕様のパーツに置き換えるという完全なる自己満足ではあるものの、突き詰めていくと奥が深い。
中には日本仕様には存在しないサンルーフを屋根ごと移植したり、日本仕様にはないエンジンやトランスミッションを換装したりしてしまうようなツワモノも存在しているのだ。
■維持するのは超大変!! 日本で乗るにはデメリット多数
左ハンドル車については国やメーカーを問わず、日本で乗る上で不便を感じるシーンは一定数存在するというのが実情だ。
そもそも日本は右ハンドルのクルマが走行する前提で作られている左側通行の国なのだから当然なのだが、右折時や路駐の車両をパスするときなど、対向車の確認がしづらいという根本的な問題などが存在することは言うまでもない。
それ以外では日本で正規で販売されていた車種ではないため、車検や点検を実施するときはもちろん、なにかトラブルが発生した場合でも、そのブランドのディーラーで面倒を見てもらえるとは限らない点(見てもらえる場合もあるが)がかなり車両を維持していく上でツライところと言えるだろう。
そして当然ながら部品の手配もディーラーではできない場合も少なくなくも珍しくなく、場合によっては海外からの取り寄せが必要となるケースもあるのだが、これも自らで部品を海外に手配するか、信頼できる輸入代行業者に依頼する必要があるため、円安の現在は特に厳しいものとなっている。
とはいえ、人と違うクルマに乗っているという自己満足感は非常に高く、上記のネガティブ要素も気にならないという人であれば、左ハンドルの日本車をチョイスするという選択肢も大いにアリと言えるだろう。
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