2021年3月12日、ホンダ軽オープン2シータースポーツ「S660」は、2022年3月で生産終了となることが発表されると、オーダーが想定外の早さで生産可能台数に達し、2021年3月30日でオーダーストップとなる事態となった。
ホンダもこの事態に対応し11月1日に650台の追加生産を発表したが、追加生産でのS660の購入も狭き門となっているようだ。(編集注:2021年11月12日から12月5日までの抽選期間が設けられ、12月15日に結果がオンラインで発表された)
スイフトスポーツはなんであの性能なのに200万円以下で売れるのか?
そのような背景もあり、ここでは改めてS660が歩んだ軌跡を振り返ることにしてみた。
文/永田恵一、写真/HONDA
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S660はどのように生まれたのか
ホンダらしい「走る喜び」の実現を目指して開発されたS660。(販売時期:2015~2022年予定/全長3395×全幅1475×全高1180mm)
S660の原型は2010年に本田技術研究所の設立50周年を記念して行われた商品企画提案コンペにさかのぼる。このコンペに当時22歳のモデラーだった椋本陵さんは、どんどんハイスペックかつ速くなり、高価で扱いきれないほど性能が向上していた近年のスポーツカーとは対極となる「手軽でいつでも楽しめるスポーツカー」を提案した。
このスポーツカーは商品企画提案コンペでグランプリを獲得し、グランプリ獲得のご褒美として試作車が造られた。その試作車を当時ホンダの社長を務めていた伊東孝紳氏が試乗したところ、鶴の一声で市販化が決定。開発責任者には発案者の椋本さんが任命された。
しかし、クルマの開発責任者は様々な経験を積んだ、若くとも30代後半以上のスタッフが務めるものだけに、椋本さんを補佐する番頭さん的なベテランエンジニアを社内公募するなどをした、若いメンバーが中心となる異例の開発チームが結成され、S660の開発はスタートした。
S660は2011年の東京モーターショーに出展された軽サイズに近いEVでリア駆動となるEV-STER、2013年の東京モーターショーに出展された生産車に近いS660コンセプトというコンセプトカーを経て、2015年3月に登場した。
S660はエンジンこそ既存の軽自動車用3気筒660ccターボの改良版ながら、2人乗りのオープンとなるエンジン横置きのミッドシップのためクルマの土台となるプラットホームやサスペンションといった多くの部分がS660専用、6速MTは新開発という非常にぜいたくなクルマである。
S660の登場時の販売グレードは標準のβ(登場時の価格は6速MT、CVTともに198万円)、上級のα(6速MT、CVTともに218万円)の2つで、生産終了の発表の際と同様に混乱があった。
S660の歴史を振り返る
S660は目立つ改良はそれほどなかったが、登場からの6年間で行われたグレード追加、改良点を解説する。
●2017年5月
αをベースにベルベットマルーンメタリックのボディカラー、ジャズブラウンのインテリアカラーを纏うなどした、期間限定の特別仕様車となるブルーノレザーエディションを設定。
●2017年11月
βをベースに、ヒダマリアイボリーパールのボディカラー、ライトタンのインテリアカラーを纏うなどした、期間限定の特別仕様車となるコモレビエディションを設定。
●2018年5月
コンプリートカーブランド「ModuloX」シリーズの第5弾モデルとして登場したS660 ModuloX。価格は285万120円
ホンダ車の純正オプション(ディーラーオプション)などを担当するホンダアクセスが手掛けたコンプリートカーとなるModuloXを追加。
ModuloXはパワートレーンこそ基準車と同じだが、ほかのModuloXに施されるメニュー同様の効果の高いエアロパーツ、ダンパーには5段階の減衰力調整機能も付く専用サスペンション、スポーツパッドとドリルドローターによるブレーキの強化といった走行性能の向上、ボルドー×ブラックのカラーとなるシートやステアリングといったインテリアのグレードアップなどが施された。
●2018年12月
αをベースにブラウンのロールトップ、ライトタン×ブラックのトラッドレザーインテリアをまとうトラッドレザーエディションを設定。同時に簡易なものながら自動ブレーキが全グレードに標準装備化された。
●2020年1月 マイナーチェンジ
このマイナーチェンジはヘッドライトのサブリフレクターやテールランプのレンズのカラー、グリルのデザイン変更、インテリアではαのステアリングとシフトノブの表皮がアルカンターラになるなど、見た目の変更が中心だった。
●2021年3月
2022年3月をもっての生産終了が発表されると同時に、ファイナルモデルとなる特別仕様車ModuloXバージョンZを設定。ModuloXバージョンZは特別色となるソニックグレーパールを設定するほか、エンブレムや専用リアスポイラーのカラー変更、インテリアにはカーボン調パネルが付くなど、特別な内外装が与えられた。
S660が愛される理由
生産終了の発表から販売店にはオーダーが殺到。あっという間に特別仕様車も標準車も完売。650台の追加生産分も大盛況となった
S660は2人が乗ってオープンにすると荷物はまったく載らず、クローズド状態だと乗降性は最悪に近く、ロールトップ(幌)の開閉も一手間掛かるなど、「バイク以下かも」と感じるくらい実用性は乏しく、極端な表現をすれば「走ることしかできない」というクルマである。
しかし、そのかわり動力性能が限られているゆえに普段乗りでもアクセルを深く踏める点、ミッドシップながら不安感は皆無な楽しいハンドリング、良好な乗り心地、ガッシリとしたブレーキのフィーリング、無駄なシフト操作を繰り返したくなるシフトフィールなど、S660は軽自動車ながらしっかりスポーツカーしている。
それだけにS660が与えてくれるドライビングプレジャーは個人の価値観によるところも大きいにせよ、不便と引き換えに納得できるものなのは事実だ。
また、「S660は維持費の安い軽自動車だからセカンドカーなどとして維持できる」という人もそれなりにいただろう(この点でいえば、S660が軽自動車のみだったこととは矛盾するが、もしS660にジムニーに対するジムニーシエラのような登録車版もあれば、1リッターターボ+ワイドボディなどに発展し、生産台数も増えればS660の運命は変わったのかもしれない)。
そんなクルマだけに大きな数ではないにせよ熱狂的なファンがおり、皮肉かもしれないが、生産終了が後押しとなって注文が殺到したというのも分かるところはある。
なお、650台のうち600台が一部販社への割り当て、残りの50台がWebからのオープンな抽選となる追加生産分についてディーラーに聞くと、「弊社には片手分の割り当てがありましたが、3月の生産終了発表の際に買えなかった方と既存のお客様だけで割り当ての10倍近い購入希望がありました」と、追加生産分も大盛況である。
そのため、敗者復活戦的な追加生産でS660を買えた人はかなりの幸運の持ち主といえる。
ホンダからもうS660のようなクルマは誕生しないのか?
2021年4月にホンダの三部敏宏社長から「ホンダは全世界において電気自動車と燃料電池車の比率を2030年/40%、2035年/80%、2040年/100%とする」という宣言があったことも考えると、純エンジン車となる現在のS660のようなクルマが誕生する可能性は限りなくゼロに近いといわざるを得ない。
しかし、ホンダが舵を切っていく電動車であれば、軽のミッドシップではないにせよ、RRの電気自動車となるホンダeから派生する小型の電気自動車となるスポーツカー、つまりS660のコンセプトカーだったEV-STERのようなクルマが誕生することは充分考えられる。
それだけに、形は変わってもいいので、ホンダから再び現実的な価格となるS660のような楽しいクルマが復活する日を心待ちにしたい。
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