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【新型メルセデス・ベンツSクラス】BMW 7シリーズ/アウディA8との単純比較、無意味になりつつあるワケ

掲載 更新 7
【新型メルセデス・ベンツSクラス】BMW 7シリーズ/アウディA8との単純比較、無意味になりつつあるワケ

「あれ?」という感じのオンライン発表

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】新型Sクラス、どう変わった?【旧型とディテール比較】 全125枚

事前の予告通り、メルセデス・ベンツは2020年9月2日、オンラインで新型Sクラスの世界発表を行った。7年ぶりのフルモデルチェンジとなる。

その発表内容に自動車メーカー各社関係者の間では「あれ?」という声が数多く聞かれた。なんだか、これまでのSクラスと様子が違うのだ……。

オンラインでの発表形式は、2020年3月開催予定が新型コロナウイルス感染拡大の影響で急遽中止されたスイス・ジュネーブショー以降、自動車産業界では当たり前の手法となった。

各メーカーとも、オンラインによる「新車情報の伝え方」について学習を続けており、今回の新型Sクラスでも、メルセデス・ベンツとして「何が最も重要なことであり、それをどうやって映像化するか」を熟慮したことが、実によくわかる発表だったと思う。

その上で、冒頭部分で多くの人が「あれ?」と思い、プレゼンが進むにつれ「あれ?」の度合いがどんどん増していった印象がある。

筆者自身も発表映像を見終わり、分野別に小分けされたプレス資料の内容を確認しながら、新型Sクラスはこれまでライバルとされてきた、BMW 7シリーズやアウディA8とは、同じテーブルで戦う意思がないようにも感じられた。

この「あれ?」という、ある種の違和感の背景にいったい何があるのだろうか?

プレゼン冒頭の舞台は最新の生産拠点

公開された最新生産拠点「ファクトリー56」の映像では、旧来型のライン方式製造方法ではなく、自動走行する台車が活用されている。

こうした情景は、例えばフォルクスワーゲングループの一員であるランボルギーニのサンタアガタ本社に新設されたスーパーSUV「ウルス」専用工場でも活用されている。

メルセデス・ベンツとしては、ファクトリー56をIoT(Internet of Things=モノのインターネット化)活用のマザー工場として位置付けている。

必要に応じてフレキシブルかつ短期間で生産モデルを変更させるなど、生産効率を最適化する。

また、太陽光パネルや、定置型大型蓄電池の採用など、再生可能エネルギーを活用した地産地消型のエネルギーで工場を稼働されている。

こうした生産拠点での配慮は、BMWもフォルクスワーゲングループも行っているが、それをSクラスで、このタイミングで行ったことに大きな意義がある。

見方を変えると、今回の発表ではファクトリー56が中心であり、そこにSクラスの登場に同期させたと言えるのかもしれない。

狙いはずばり、ESG投資だ。

近年の企業経営には、従来のような売上至上主義ではなく、環境・社会性・ガバナンスに対する評価が重要視されている。

今度、BMWやアウディでも、新車発表時にESG投資対応が度合いが高まることが予想される。

「S、E、C」クラス時代の終焉か?

ESG投資重視という、これまでの自動車産業の流れが大きく変わる中、高級ブランドのハードウエアとしての在り方にも変化が見える。

直近では、Aクラスからマイバッハや各種AMGなどフルライナップ化されたメルセデス・ベンツ。そうしたモデルの多様化の原点は、70年代のSクラス登場と、Sクラスをラグジュアリーセダンの最高峰とした、Eクラス、Cクラスというヒエラルキーを強調するブランド戦略だ。

メルセデス・ベンツをベンチマークとして、BMWは7シリーズ/5シリーズ/3シリーズ、またフォルクスワーゲングループはアウディブランドでのA8/A6/A4を導入。

さらに、アメリカ市場優先で誕生したトヨタがレクサスが、LS/ES/ISとしてきた。

そのため、これまでSクラスのフルモデルチェンジの度に、7シリーズ、A8、LSとのボディ寸法、内外装デザイン、車体やサスペンション、衝突時の安全性、エンジンラインアップとそれらの性能について単純に比較してきた。

その上で、AMG、M、RS、Fなどハイパフォーマンスな上級グレードによるサーキット走行性能などを単純に比較してきた。

だが、今回の新型Sクラスを契機に、メルセデス・ベンツの商品戦略が根本的に変わった印象が強いのだ……。

キーワードとなるのが「UX」

キーワードとなるのがUX(ユーザーエクスペリエンス)だ。

すでに「ハイ、メルセデス」と発話して始める車内音声認識などで、UXという考え方を強調しているメルセデス・ベンツ。

一方、アウディは2010年代前半から世界最大級の家電IT見本市「CES」を舞台に、自動運転を中心として、またBMWは電動化「i」やBMWコネクトを強調して、UXに対する新しい見解を示してきた。

そうした中で登場した、新型Sクラスは、BMWやアウディなどとの競争や協業という考え方ではなく、商品の出口戦略として、ユーザーに対して直面している印象が強い。

ハードウエアとして、搭載する様々なソフトウエアアプリケーションの全てに対して、さらにそこから生まれる様々なサービス事業に対して、ユーザーとSクラスが対峙する。

これぞ、UXである。

結果として、メーカーとディーラー、ディーラーとユーザーとの関係にも、新型Sクラス登場をきっかけとして、メルセデス・ベンツは大ナタを振る可能性もある。

これまで、Sクラスはラグジュアリーセダンの頂点であり、そこを上流として、最新技術が各メーカーへと大きな影響を与えてきたが……。

新型Sクラスは、ドイツのライバルたち、そして日系メーカー各社に対して、パラダイムシフトと呼べるほど大きなインパクトだと言える。

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みんなのコメント

7件
  • うーん、分からんかった。
  • もともとドイツ車と日本車を単純比較すること自体が無意味。それをしているのはモータージャーナリストと呼ばれる人たち。そうでもしないと仕事が無くなるのかもしれないが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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