この記事をまとめると
■日本のモータリゼーションに多大な影響を与えた名車を振り返る
「意外と遅い」「レビンのほうが人気」「色は赤黒」! いま「神車」扱いの「AE86」の当時をリアタイ世代が語る
■安くて高品質なクルマというイメージの日本車に新しい価値をもたらしたクルマが第一候補
■モータースポーツにおける活躍を果たした日本車も捨てがたい
日本の自動車産業に革命をもたらしたクルマたち
かつて日本の小学校の多くに「二宮金次郎(二宮尊徳)」が、燃料となる柴を背負ったまま本を読んでいるという銅像が設置されていた。子どもが労働力の一端を担わなくてはまわらなかった時代にも、勉学を忘れなかったという点で、勤勉であることを目指す象徴とされていた。
ただし、近年では銅像や校舎の老朽化に伴い撤去されることも多く、昭和の遺物として伝説的に語られることも多いという。では、二宮金次郎に変わって設置すべき像はあるのだろうか。
若者のクルマ離れが指摘されるようになって久しいが、いずれにしても子どものうちから日本の自動車産業へのリスペクトを育むような教育機会があればと思う。その象徴として歴史的遺産といえる自動車の銅像を寄贈する動きが起きれば、という妄想にお付き合いいただきたい。
自動車産業によって日本経済が成長したことを考えると、歴史に残る名車の像を小学校に飾り、自動車産業への敬意を示してもいいのかもしれない……というのは無理筋な話としても小学生にも認識しておいてほしい歴史に残る名車について考えてみよう。
トヨタが自動車メーカーとしては世界最多販売を誇るようになるなど、近年の日本自動車産業というのは世界トップレベルであると認知されているかもしれないが、かつては産業として日本の自動車産業は後進国扱いだった。欧米の自動車メーカーに追いつき追い越せのスピリットで、ここまで成長してきたといえる。
そんな日本の自動車産業が世界のトレンドをリードするようになったのは、どのタイミングで、どのモデルがポイントになったのだろうか。
トヨタ2000GTが映画「007」の劇中車として使われたとき、同じくトヨタ・カローラが世界でもっとも売れたとき、マツダ・ユーノスロードスターがスポーツカーとして認められたときなどなどさまざまな意見はあるだろう。
日本ドメスティックなモデルであったが、2.6リッターツインターボとトルクスプリット4WDのスポーツカーとして日産スカイラインGT-Rが生まれたことも、日本の自動車産業をレベルアップさせたという思いもあるだろう。トヨタがレクサスブランドを開始、初代LS(日本名:セルシオ)を生み出したことも産業としての実力の高まりが実感できた。
日本車に新たなる価値を付加したトヨタ・プリウス
しかし、筆者が個人的に、日本の自動車産業が新しい価値を生み出したと思うのは、1997年、トヨタが量産ハイブリッドカー「プリウス」を誕生させたときだと考えている。
エンジンを積んでいるハイブリッドカーは電動化というトレンドの種となったことは間違いない。なにより、それまでの国産車は基本的には自動車メーカーの先輩である海外ブランドの生み出した価値観の延長線にあったが、プリウスはまったく新しい世界観を誕生させた。
小学生にイノベーションの重要性を伝えるのであれば、初代プリウスほど適したモデルはない。正直言って、プリウスの銅像に見守られて小学生が通学する日が来るとは思わないが、プリウスを生み出したことは産業史の重要なトピックとして教えるべきだと思う。
自動車産業というのは地域に根付いている部分も大きく、場所よってはトヨタのクルマを飾りたくないという思いもあるだろう。そんなときには、各メーカーが日本を元気にしたクルマを銅像にして讃えることもアリではないだろうか。
そこで注目したいのはモータースポーツで活躍したモデルとなる。不思議なもので、賛否あるだろうが、スポーツで国の代表が活躍することは国威発揚につながるのは事実だ。その点でいえば、1965年10月24日にメキシコGPでF1初優勝を遂げたHonda RA272は銅像として讃えるのに最適なモデルといえそうだ。
1991年のル・マン24時間耐久レースで日本車として初の総合優勝を成したマツダ787Bも銅像化するにふさわしいだけの価値があるといえるかもしれない。
いずれにしても、自動車業界の大変革期といわれるいまだからこそ日本の自動車産業を子どものうちからリスペクトするようなきっかけになる何かが生まれることを願うばかりだ。
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