年々車種やラインナップが充実し、好調な売れゆきが続くSUV。ニューモデルも続々と登場しているだけに、その乗り心地や快適性が気になる、という人も多いのでは?
そこで今回は、最新ミドルクラスSUVのフォレスター、エクリプスクロス、CX-8、ハリアーの4台をピックアップ、乗り心地テストを敢行してみた。
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フォレスターは6月にフルモデルチェンジ、エクリプスクロスは3月にデビューと、どちらも今年登場したばかりの最新モデル。CX-8は3列シートSUVとして昨年9月のデビューから好調に売れている人気車で、ハリアーはデビューから今年で5年目を迎えるモデルだが根強い人気を誇る。
テスターはレーサーとしての運転技術のみならず、乗り心地への優れた評価や深い見識を持つ“乗り心地マイスター”大井貴之氏。
一般道ながら、うねりが連続する波状路や荒れた路面などさまざまな路面をもつ、乗り心地をチェックするには最適な1周約1.5kmのルートで、乗車時の不快指数、キッチン用のバネばかりを持ち込んでの波状路での揺れ具合の測定、ノイズについても実測してもらった。
いずれも街乗りタイプの4車、その乗り心地やいかに。
※本稿は2018年8月のものです。
※ここで紹介している「不快指数」は、一般道を走行したもので、0%が最も乗り心地が良い、100%が最も乗り心地が悪い、となります。ノイズ測定は窓を閉めた状態で測定、揺れ具合を測定したバネばかりと騒音計は前席中央に配置しました。遮音性は停車時に隣に置いた車両のアイドリング音を測定しています
文:大井貴之、永田恵一/写真:平野学
初出:『ベストカー』 2018年9月26日号
■SUBARU フォレスター プレミアム4WD
305万6400円
(テスト車のオプション装備込価格:339万1200円)
(TEXT/大井貴之)
ついにスバルグローバルプラットフォームが採用されたフォレスター。期待どおり、いや、期待以上によくできたクルマに仕上がっていた。
ドアを閉めた瞬間に感じる遮音は優秀。開放感があり、斜め後方視界もバッチリ。余裕のある高さのルーフは、試乗車にはオプションの大型サンルーフを装備。車内が明るく、より室内が広く感じられる。
乗り心地は起点としたお寺の境内の砂利道、そして石畳の乗り越えではしなやかに足が動いていることを実感。斜めにクルマを揺さぶられるようなシーンでも、クルマの背の高さを感じるような不快な動きをしない。特徴的だったのはボンネットの形状。両脇のフェンダーが盛り上がっていて車幅感覚が掴みやすい。
一般道に出てからも超快適。ロードノイズもエンジン音も、すれ違うクルマたちが発する音も上手に遮断。走りの質感が高い。これならロングドライブも快適にこなせるだろう。これでオフロード走行において重要な最低地上高は今回のテスト車で一番余裕のある220mm。さすがは老舗! といえる仕上がりだ。
不快指数…22%
ハカリの揺れ幅…50g
ノイズ計測 ※はアイドリング時
フル加速時:68dB
スムーズ路面:59dB
荒れた路面:62dB
遮音性:34dB
エアコン送風MIN時:41dB※
エアコン送風MAX時:61.5dB※
【プラスCHECK!】 後席の居住性は?
(TEXT/永田恵一)
広さはミドルSUVの平均+αといったところだが、着座位置が高めで正しい姿勢で座れることもあり、広さ感は上々でシートの座り心地も良好。また後席用のシートヒーター、前席背もたれ裏のポケットにはスマホやタブレットを置くスペースに加え、USB電源も備わる。乗り心地は硬めながら不快な揺れや硬さはほぼなく、しなやかさとほどよい引き締まり感があり、前席より印象がいいほどだった。
居住性…★★★★★
■MAZDA CX-8 XDプロアクティブ4WD
382万3200円
(テスト車のオプション装備込価格:401万7600円)
スタイリッシュなCX-3、CX-5の流れを壊さずに仕上げられた3列シートモデル。ホイールベース2930mm、車重1900kg、19インチの大径タイヤは間違いなく乗り心地に有利に働くに違いない。
ただ、最小回転半径は5.8m。ボディの大きさを含め取り回しが厳しいかと心配したが、今回の試乗で不便さを感じることは一度もなかった。
近頃のマツダ車らしく、ドライビングポジションは良好。静粛性、乗り心地も優秀。それは計測データにも数字として表われ、7つのテスト項目中、5項目でトップの数値を記録した。
現実的に購入を考えるとすると、200kg重い車体にCX-5と同じエンジンで大丈夫なの? という心配がありそうだが、意外に過酷な音羽ニュルを何のストレスもなく、いや、それどころかパワフルささえ感じた。
気になったのは急な上り坂のフル加速でホイールスピンを起こしたこと。4WDなのに。i-ACTIVE AWDは上り坂を検知、自動制御するはずだが、トラコンが活躍していた。
不快指数…25%
ハカリの揺れ幅…50g
ノイズ計測 ※はアイドリング時
フル加速時:68dB
スムーズ路面:58dB
荒れた路面:61dB
遮音性:32.5dB
エアコン送風MIN時:43dB※
エアコン送風MAX時:61dB※
【プラスCHECK!】 後席の居住性は?
(TEXT/永田恵一)
2列目席はテスト車が6人乗りのキャプテンシート仕様だったこともあり、頭上空間以外はラージミニバンに近い広さがあり、快適に過ごせる。3列目席は身長160cmの私で2時間くらいなら乗れる広さで、広くはないものの3列目の使用頻度が少ないならミニバンとしての使用にも対応できるだろう。乗り心地は不快感なくよくまとまっていた。気になったのは2列目席でアイドル振動を少し感じた点。
居住性…2列目 ★★★★☆/3列目 ★★★☆☆
■MITSUBISH エクリプスクロス Gプラスパッケージ 4WD
309万5280円
(テスト車のオプション装備込価格:379万5942円)
今回のテスト車では一番小ぶりで、トヨタC-HR、スバルXVなどが直接的なライバルといえるエクリプスクロス。
ドライビングポジションはスポーティな出で立ちのイメージどおりで、欲をいえばもう少し低いポジションが取れるといい。しかし、チルト&テレスコの調整幅、シートの高さと角度も充分な調整幅がある。ちょっと残念なのはインパネをはじめとする内装の質感。ほかの3車に大きく遅れを取っている。
乗り心地は、走り出しの印象は良好で、一般道に出るまでの低速走行ではスムーズな足の動きを示した。ところが、一般路での50km/h程度のスピードになると若干ではあるが路面の凹凸に対し、ホイールがバタつく場面があった。
一方で、1.5Lターボエンジンは、排気系からと思われる音量が大きめ。ただし、低回転から充分なトルクを発揮し、アクセルを踏み込めばかなりパワフルだ。
気になったのは、すれ違うクルマの走行音。遮音性計測では他車とそれほど違いはなかったが、感覚的はちょっと壁が薄いような感じだった。
不快指数…33%
ハカリの揺れ幅…70g
ノイズ計測 ※はアイドリング時
フル加速時:69dB
スムーズ路面:59dB
荒れた路面:63dB
遮音性:34dB
エアコン送風MIN時:42dB※
エアコン送風MAX時:65dB※
【プラスCHECK!】 後席の居住性は?
(TEXT/永田恵一)
小さめのミドルSUVとして充分な広さだが、頭上空間はギリギリといったところ。しかしスペシャルティクーペ的なSUVというコンセプトを踏まえれば納得できる。なおテスト車はフォレスターと同様に面積の広いサンルーフ付きで解放感があるのは好印象。乗り心地は許容できる範囲だが、ドタバタ感やゴチゴチ感があり、しなやかさに欠ける。また排気系からのこもり音のような音も気になった。
居住性…★★★☆☆
■TOYOTA ハリアー プログレス“メタル&レザーパッケージ” 4WD
457万4880円
(テスト車のオプション装備込価格:470万700円)
今回のテスト車中、最も高価で、価格は457万4880円のハリアー。フォレスターやCX-8より40mm低い全高を活かしたフォルムは美しく、高級感を漂わせている。内装の質感もデザインも同様に高級。シートもステアリングも電動式。その可動域も充分で微調整も可能。
昨年に新設定された2Lターボエンジンは一瞬6発と間違えたほど滑らかに穏やかに目覚める。
SUVといいながら泥のついた靴で乗って欲しくない雰囲気なのだが、問題は走り。ハッキリいって残念なレベル。ホイールにちょっと速い入力が入るとガッツリ止めようとしすぎるダンパー。足のバタつきも気になることがあるが、何より、路面からの振動がフロアを通じて足や座面に伝わってくる。ロングドライブをするなら座布団を敷きたい気分だ。
エンジンはパワフルかつ静かだが、高級車のはずなのにすれ違うクルマのノイズの進入度合いはエクリプスクロスと変わらない印象。プラットフォームの古さが隠せないといったところだろう。カッコいいだけに、惜しい!
不快指数…40%
ハカリの揺れ幅…70g
ノイズ計測 ※はアイドリング時
フル加速時:70dB
スムーズ路面:58dB
荒れた路面:62dB
遮音性:34.5dB
エアコン送風MIN時:39dB※
エアコン送風MAX時:58dB※
【プラスCHECK!】 後席の居住性は?
(TEXT/永田恵一)
広さ自体はフォレスターとイーブンのミドルSUVの平均+αといったところだが、着座姿勢に特に感じる点もなかった。革シートやドアトリム、後席から見えるインテリアの風景などにはハリアーのゴージャスなキャラクターが感じられる。乗り心地はひどいとまではいわないが、常にギリギリ我慢できるくらいのガタガタ感、ゴツゴツ感があり、見た目に中身の高級感が追いついていないのが残念。
居住性…★★★★☆
■まとめ 最新SUVの乗り心地をどう評価する?
(TEXT/大井貴之)
今回の乗り心地テストは、新型プラットフォームを採用したフォレスターがブッチギリのナンバー1だった。C-HRも同様だけど、新しいプラットフォームは優秀だ。
SUVは大きいタイヤや重いボディによって重さを感じる乗り心地になるが、新型プラットフォーム採用車は気になるレベルではなくなった。
スペース効率を考えればSUVはミニバンに遠く及ばないが、多少の悪路でも走れるクルマに乗っている頼もしさ、一度味わってほしいな。
■大井貴之…ドライビングスクールを運営するドラテクの先生であり、サーキットからラリーまで何でもできちゃうレーシングドライバー。元ベストカー編集部員。
【番外コラム】以前にテストしたC-HRがもし今回あったら何位?
今回のテストにC-HRが参加していれば今回ナンバー1のフォレスターの座を脅かしていたかもしれない。スタイルについては好き嫌いが分かれそうだが、何よりも走りの質感が高い。ボディの剛性感も、足のしなやかさも、ドライビングポジションも、インテリアの質感も、決して高いクルマではないのだが、走りは安っぽさを感じない。トヨタ車でもナンバー1といえるほどクルマとしての完成度が高い。
最低地上高は140mmしかないが、1550mm(FF)という全高の低さもC-HRの走りのよさに大きく貢献している。これならタワーパーキングに入る。最小回転半径5.2mで取り回しもいい。
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