数あるクルマの装備のなかでも「果たしてコレはホントに必要なのか?」と思えるものもある。そんな“なんちゃって装備”をピックアップし、その必要性や実際の使い勝手などを見ていこう。
文/長谷川 敦、写真/スバル、トヨタ、ホンダ、Newspress UK、写真AC
■なんちゃって装備にもいろいろある!?
現行型ホンダ シビックタイプR。フロントグリルには大きなエアダクトが設けられていて迫力満点だが、実際に冷却部品に空気を導く穴はそこまで大きくない
今回は、実用性がありそうで実はない、あるいはなくても特に問題にならない装備を考えていくことにするが、前者と後者は似ているようで異なる。
実用性がないにもかかわらず装着されている装備は、見た目のよさのみを目的にしているのに対し、なくても大丈夫な装備は便利になると思って採用されたのに、実際にはそこまで“使いようがなかった”ものだ。
もっとも、見た目用の装備も、見栄えをよくするという実用性があるともいえるのだが……。
ということで、次の項からは代表的ななんちゃって装備をピックアップし、その存在意義を考えていくことにしたい。
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■ルックス100%特化のエアロデバイス
まずはクルマの外観をアップデートするダミーエアロデバイスを紹介していきたい。
もちろん、ダミーエアロデバイスには前述のように車体の見た目をよくするという立派な効果があるのだが、本来はボディの空力&冷却性能を高めるのが目的のパーツのはずなのに、有効なのはルックスだけというのがまさに“なんちゃって”の真骨頂といえる。
■フロントエアダクト
スポーティなクルマのヘッドライト回りに設けられた空気取り入れ口がいわゆるエアダクト。エアダクト本来の目的はエンジン冷却水を冷やすラジエターや、ブレーキの冷却用エアをとり入れるためのものだが、実は多くのクルマのフロントエアダクトがダミーなのをご存じだろうか?
多くのダクトを装備していると、クルマの外観は厳ついものになり、いかにも速そうな雰囲気を見せてくれる。
しかし、高速で走行するためにエンジンやブレーキも大きく発熱するレーシングカーならいざ知らず、公道を走行するクルマにはそこまで大きな冷却口は必要ない。
つまり、フロントエアダクトの多くがルックスをよくするためのダミーであり、実際には穴が開いていない。
当然ながらラジエターに空気を導くための穴も開けられているが、本当の開口部とダミー部分がシームレスにつながっていて、より大きな開口部に見せているクルマも多い。
■エアアウトレット
2019年に復活して注目を集めた現行型トヨタGRスープラ。このクルマのフロントフェンダー後方にはエンジンルーム内の熱気を排出するためと思しき開口部(エアアウトレット)がある。
しかし、これはまったくのダミーで、エンジンルームとはつながっていない。
だから見た目100%装備なのかというとそうでもなく、ここはレース仕様に改造されたスープラでは本当のアウトレットとして機能するのかもしれない。
市販車ベースのレースカーではボディの改造範囲も規制されることがあり、公道用モデルでもあらかじめダミーのアウトレットを設けているということだ。
ちなみに市販型スープラのリアタイヤ直前にあるスリットもダミーだが、アウトレットと同様の理由で設けられている可能性もある。
■リアディフューザー
レーシングカー、特にタイヤがむき出しになったフォーミュラカーの後方下部に装着されているのが、床下の空気を引き出すためのディフューザー。
ディフューザーは空気を拡散させて底部の圧力を下げ、車体を路面に押し付ける(=ダウンフォース)効果を持っている。コーナリングスピードをアップするのに高い効果を発揮するディフューザーは、レーシングカーにおいて50年近い歴史を持つエアロデバイスだ。
そして昨今は市販車の多くに同様のディフューザーが装着され、いかにも効きそうな雰囲気を醸し出している。
だが、ここまで紹介してきたほかのデバイスと同様に、市販車のディフューザーは空力的な効果を発揮しないものも多い。
ただし、充分な空力性能を発揮するディフューザーもあってパッと見ではそうでないものとの判別がしにくい。それだからこそ、ダミーディフューザーを装着する意味もある。
■排気管だけど排気を助けない?
本来のマフラー(排気管)に被せてドレスアップするマフラーカッター。取り付けは簡単で、見た目の迫力が向上し、マフラー本体のサビ止め効果もある
マフラーカッターという自動車用パーツがあるのをご存じだろうか?
これはクルマの排気管に装着するパーツだが、排気効率や耐熱性の向上、あるいは排ガスの浄化を行うのではなく、純粋にドレスアップのために存在する。クルマのテール、あるいはサイドから突き出た太いマフラー(排気管)は、そのクルマがハイパワーであることをイメージさせる。
そして見た目でも重要なアクセントになるのは間違いない。
一般的なマフラーのクルマであっても、マフラーカッターを装着することによって手軽に迫力あるルックスに変貌する。
マフラーそのものを交換してしまうと、排気音やパワーなど、見た目以外の変化が大きくなる。その点、マフラーカッターの装着だけなら変わるのは見た目のみ。クルマの性能に影響を与えることなくドレスアップが行える。
マフラーカッターもまたなんちゃって装備といえるが、実は人気のあるパーツであり、市場では多数の製品が販売されている。
■実用性はある! でもホントに必要なのか?
最後に紹介する装備は実際に機能するし、使いこなせれば有効な点はあるが、果たしてこれは必要なのかと問われると少々怪しい。
その機能とはパドルシフトだ。パドルシフトとは、クルマの変速操作をシフトレバーではなくハンドル裏のパドルで行うシステムのこと。
そのルーツはF1にあり、クラッチ操作を必要とせず、両手でハンドルを保持しながら変速が行えるというメリットが大きく、導入の数年後にはF1のスタンダードになった。
登場からほどなくF1だけでなくほかのレーシングカーでも標準装備になったパドルシフトだが、これは規定によってフルオートマチックが禁止されているという理由もある。
変速操作まで完全オートマチックになってしまうとレースのスポーツ性が薄れてしまうため、レギュレーションで変速操作はドライバーが行うことになっている。
こうしたパドルシフトは市販車でも採用され、主にスポーティなモデルに装備されている。
だが、市販車のパドルシフト搭載モデルはフルオートマチックモードにもできることが多く、日常的にパドルシフトを使っているユーザーは意外に少ないという。
このパドルシフトをなんちゃって装備のひとつに数えるのは少々強引な気もするが、本当に必要な機能なのかには疑問が残る。
今回紹介した3つのほかにもなんちゃって装備は存在する。好意的にとらえるなら、なんちゃって装備はあること自体、クルマが実用一辺倒の機械でないことの証明になる。
将来的には、どんななんちゃって装備が登場するのだろうか?
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