2023年12月末、43年もの歴史を持つミドルクラスセダン、トヨタ「カムリ」の国内生産が終了となる。カッコよくて広くて使いやすいセダンであったカムリ。海外では人気モデルのひとつなのだが、残念ながら国内ではそうはいかなかった。なぜ日本では、カムリが撤退することになってしまったのだろうか。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA
カッコよくて広くて使いやすくて…カムリはなぜ日本から撤退したのか
走りを意識したデザインが、とにかくカッコよかった!!
現行型のカムリが登場したのは2017年7月のこと。TNGAに基づくプラットフォームや次世代エンジン「ダイナミックフォースエンジン」の搭載、改良されたハイブリッドシステムなど、動力性能、静粛性など全面的な刷新でのデビューだった。デザイン的にも、スリムなアッパーグリルと立体的で大胆な造形のロアーグリルを組み合わせた迫力のあるフロントマスクや、低く構えたフード、フェンダー、ベルトラインなど走りが意識されており、クルマ好きならば、もうぱっと見で「カッコいい」と思えるクルマだった。
スポーティでエモーショナルなデザインの現行型カムリ。セダン市場の若返りを期待して投入されたが…
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日本ではマルチに活躍できるクルマが人気 デザイン的にもセダンは分が悪い
セダンであるメリットは、トランクとキャビンが仕切られているので剛性が高く静粛性も確保できること、低重心でハンドリング性能を追求しやすいことなど。またセダンのトランクは意外と広く、旅行やレジャー、ゴルフなどでも快適に使える。近年のミニバンやSUV人気に押されながらも、ここまでセダンが残ってきたのは、こうした使いやすさや基本性能の高さを評価するユーザーが一定数いたからだろう。
ただ、こうしたセダンの性能の高さを評価するユーザーの年齢層は年々高くなってきており、若い世代はデザインやライフスタイルでクルマを選ぶため、セダンはどうしても刺さりにくい。いまでもセダンのほうが、基本性能が高くなる傾向にあることは事実なのだが、SUVにしてもミニバンにしても、近年は基本的なシャシー性能や静粛性、パッケージングが向上しているので、よほどこだわりがなければその差は感じにくい。
セダンが若者ウケしにくい日本特有の事情としては、狭い道路も多く、駐車場スペースが限られる(=複数台所有することが難しい)ことが多いということがある。同じサイズのクルマを買うなら、「どこか旅行に出かけるときのために」とか、「たまにフル乗車する時のために」を考え、SUVやトールワゴンのようなマルチに活躍できる、高効率パッケージのクルマを選びたくなる。また見晴らしのよいSUVのほうが、狭い道路での安全性という面でもメリットがあり、「運転のしやすさ」というところでもセダンは分が悪い。
クルマ好きからすると「ぜひこだわって選んでほしい」と思うところなのだが、忙しい現代人にとっては、やはり「便利」であることがもっとも重要。また、いまの日本では「かっこいい」の基準が、ボリュームのあるボディに威圧感のあるフェイスにあるというのも、全高が低いセダンにとって逆風となっている。
カムリと同じプラットフォームを使用するハリアー。高級感、走りの良さ、使いやすさ、存在感、デザインで大人気
日本では人気がなくても、世界ではまだまだ「イケてるクルマ」
グローバルでみれば、たとえば中国市場では、ミニバンも人気となりつつあるが、まだまだメインはセダンカテゴリーであるし、SUV人気が高い北米でも、セダンはまだまだ販売数を稼げるモデルだ。実際、カムリは世界約100ヶ国で販売が行われており、アジアの新興国では高級車としても人気だ。日本撤退となってしまったことは残念でならないが、世界的には、まだまだ「イケてるクルマ」と認知されていることは、日本人として素直にうれしい。
今後も、日本においてセダン市場がモリモリ回復していく、というのは考えにくい。セダンのスタイリングや走りを味わっておきたいという人は、いまのうちに乗っておくことをおすすめする。
世界的に見ればセダン市場はまだまだ活況だ。カムリはその中でも多くの国で上位に食い込む人気を誇る
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営利至上主義のトヨタは切るだろ