もくじ
どんなクルマ?
ー 911の哲学は変わらない
どんな感じ?
ー 後輪駆動のSなら、意のままの世界
ー インテリアにひとこと
「買い」か?
ー 理想の911であり、最高のスポーツカー
スペック
ー ポルシェ911カレラSのスペック
初試乗 ポルシェ911(992)カレラ4S 着実な進化 普遍のポルシェ像
どんなクルマ?
911の哲学は変わらない
期待の真新しいポルシェ911が目の前にある。正確には、85%ほどが新しいポルシェ911といった方が正しいかもしれない。先代の991型とホイールベースが同値で、エンジン自体も同じものが搭載されている。既に真っ赤なカレラ4Sの試乗記を読んだ方ならご存知だろう。
しかし全長は長くなり、カレラSの場合はフロントトレッドが広がり、ボディワークは完全に一新された。誰が見ても911とわかるデザインながら、ボディは初めてオールアルミニウム製になっている。トランスミッションもまったく新しい8速のPDK、ツインクラッチATに置き換わり、タイヤの直径もフロントとリアとで異径となっている。サスペンションもブレーキも新しくなり、インテリアデザインもリニューアルされた。
カレラTの存在は明らかではないが、通例に沿って、GTシリーズなど様々なバージョンの911が時間をかけて登場するはず。現段階で選択できるのは、後輪駆動か四輪駆動か、どちらかのカレラSのみとなる。残念なことに標準の911には存在していた、全幅が狭いナローボディはラインナップから落とされてしまった。駆動輪の本数に関わらず、新しい911はすべてワイドボディとなる。
リニューアルしたことは間違いないのだが、新しい992型は、1998年の996や2012年の991などと、方向性としては共通している。従来までの911のいい部分を引き継ぎつつ、総合的に進化をさせた印象で、哲学の部分は同じながら、それをひとつ上の水準へと高めている。今回は、サーキットでの印象を中心にお伝えしよう。
どんな感じ?
後輪駆動のSなら、意のままの世界
刷新された様々な技術を認識する前に、カレラSをひとまずコーナーへと走らせる。ポルシェは世界最高水準のドライビングマシンとして、911を実体験として再認識させてくれる機会をわれわれに与えてくれたことは明らかだった。
外観は慣れ親しんだ雰囲気が漂う。991型のオーナーにとっては、少し安心するデザインかもしれない。しかし、電子制御システムの洗練性を高め、機械的な技術レベルも引き上げることで、最新の911が一番、というイメージは固持している。ただ、ポルシェ911のフリークは、実際のところかなりアナログ好きで、ハードコアな指向であったりするのだが。
ステアリングのスピードはややクイックになり、クルマは一層イキイキと感じられる。フロントトレッドが広げられているおかげで、先代991のノーマルグレードが備えていた、コーナリング初期の僅かなアンダーステアが解消している。それを確かめて、エイペックスへと切り込んでいく。
若干ハンドリングで劣る四輪駆動の4Sではなく、後輪駆動のSを運転している限り、まさに意のままの世界が待っている。スタビリティコントロールはオンのままでも、気持ちよくクリーンにコーナリングしていくだけでなく、カウンターを当ててテールを流すことも受け入れてくれる。うっかりコースから外れて、苦笑いをしてしまうまでは。
この911のモデルラインナップが一通り揃えば、恐らく「S」は最もパワーで劣り、安価なグレードになるはずだが、それでも驚くほどに運転が楽しいクルマだ。これほどに会心で懐の深いハンドリングを獲得していると、逆にエンジンの仕上がりに不安を感じるかもしれないが、そんなことはない。
インテリアにひとこと
3.0ℓの水平対向6気筒エンジンは大型のターボを採用しているのにも関わらず、レスポンスは向上しており、スムーズな吹け上がりも従来通り。過去の911と最高出力を見比べてみると、3年前のGT3より、最新のカレラSはわずか25psほど劣るだけなことに驚かされる。しかもトルクは上回っている。このボディキットも付かない、つややかなボディに秘められたポテンシャルを実感できると思う。
最高速度もスーパーカーの大台、300km/hを超えている。標準グレードであっても、かつての911ターボやマクラーレン、フェラーリなどが叩き出す、やや恐怖を感じる速度域と同レベルというわけ。
気になる部分はないのかって?わたしの意見では、サーキット走行中心のレーシングカーでも目指していないのなら、オプションのカーボンセラミック・ブレーキと、後輪操舵システムはいらないと思う。強いていえば。インテリアも、個々の機能やデザインはまったく問題ないのだが、総合的なまとまりという点でしっくりこない印象がある。少なくともMTモデルが加わる場合は、センターコンソールのカップホルダーは移設しなければならなそうだ。
911も、パナメーラのように物理的なボタンをやめて、未来的なタッチパッド式の操作系に改めても良かったのではないだろうか。あるいは、思いっきりレトロなデザインテーマに振るとか。少し大柄なスイッチ類や、アナログメーターが採用されたタコメーターと、つややかなTFTモニターのコントラストはどこかぎこちなく感じるのだ。少し慣れが必要かもしれない。
「買い」か?
理想の911であり、最高のスポーツカー
新しい992型は、911をドライバーの手の中に戻してくれた印象が強い。先代の991型が理想のポルシェ像に逆らっていたというわけではないが、延長されたホイールベースや電動パワーステアリング、ターボを搭載したエンジンなど、伝統的に受け継がれていた911の感覚とは少しずれているような味わいがあった。
もちろん、992になったからといって、時計の針が戻ったわけではない。よりシャープでありながら、高次元でのバランスを身に付け、運転する楽しさに溢れ、更なるスピードを獲得することで、アナログライクな911とは別の仕上がりとなっている。
先日のマット・プライヤーによる一般道でのレポートもかなりの高評価だった。まさしく、992は20年来納得することができなかった、新しい理想の911といえるモデルなだけでなく、10万ポンド(1380万円)以下で買える、最高のスポーツカーだといえるだろう。
ポルシェ911カレラSのスペック
■価格 9万3111ポンド(1284万円)
■全長×全幅×全高 4519×1852×1300mm
■最高速度 307km/h
■0-100km/h加速 3.5秒(スポーツクロノパッケージ)
■燃費 11.2km/ℓ
■CO2排出量 204g/km
■乾燥重量 1515kg
■パワートレイン 水平対向6気筒2981ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 450ps/6500rpm
■最大トルク 53.9kg-m/2300-5000rpm
■ギアボックス 8速ツインクラッチ・オートマティック
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