その一台の誕生で街のバイクは一変した
いかに高性能であるか、いかにサーキットを走るレーシングバイクに近いかを競い合ったレーサーレプリカブームに陰りが見え始めた80年代末(89年4月)にデビューしたカワサキ・ゼファー400。時代はこれを待ちわびていたかのように大ヒットし、ネイキッドブームの立役者となる。
80年代にもノンカウルモデルはあるにはあったが、そのほとんどはレーサーレプリカのエンジンを低中速寄りにリチューンし、カウルレスにしただけのバリエーションモデルに過ぎないもので、いかにも剛性の高そうなアルミ製フレームを剥き出しにしていた。
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その一方でゼファーは鋼管スチール製ダブルクレードルフレーム、つまり何の変哲もない鉄の骨格に、見せることにも意識したエンジンを搭載。空冷DOHC2バルブ4気筒、リア2本サスという当時にしては時代遅れとしか言いようがない構成とし、最高出力も当時の上限59PSに対したったの46PS、時代に逆行するかのような新機種であった。
ゼファー400のヒットを受け、スズキはフレームワークにこだわったバンディッド400/250を89年の内に発売し、ヤマハも90年にTZRのエンジンを専用開発したトラスフレームに積むR1-Z、そしてSRX250を復活させて対抗させたほか、さらに91年にはFZR250のエンジンを搭載するジール250を生んでいる。
もちろんホンダもこのビッグウェーブを逃すまいと250には根強い人気のあったVTZ250に加え、VT250スパーダも89年に追加。さらに91年には、CBR系のカムギヤトレイン4気筒を搭載するジェイドをラインアップした。
400にはゼファー400の1か月前にCB-1を発売済みだったが、ゼファーのようなヒットには至らず苦戦という印象はいま振り返っても否めない。
その甲斐あってか92年には、ロングセラーモデルと名高いCB400スーパーフォアを生み出すことに成功する。
カワサキはZXR250の水冷4発を低中速寄りにしたバリオスを91年に、92年には往年の名車メグロを彷彿とさせるエストレヤを250クラスに投入し、ゼファーだけでないことをアピールした。
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