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“珍”装備&技術で注目したい1980年代の日本車5選

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“珍”装備&技術で注目したい1980年代の日本車5選

1980年代の日本車には今では考えられないような奇抜な装備・技術を採用した多数あった。そこで小川フミオが当時を振り返る!

作り手のこだわりを強く感じさせる

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クルマがいつの時代もおもしろいのは、“人間臭さ”があるからだ。大量生産される工業製品であるものの、“趣味性”といった厳密な定義が不可能な要素に左右されるのも、クルマのユニークなところ。

かつてのフォード・モデルTのごとく“趣味性”がまるでないようなクルマも、自動車創成期には受け入れられたが、人間は欲張りだ。付加価値をつけ、ほかとは異なる“趣味性”を持ったクルマを求める人が増えた。T型フォードも、結果的にはシボレーといったライバルにシェアを奪われた。

“趣味性”というキーワードで思い浮かぶのは、フランスのシトロエン。油圧と窒素ガスで、サスペンション・システム、ステアリング・システム、ブレーキなどを動かすメカニズムを採用したからだ。最初は1954年に「15CVH」のリアサスペンションに搭載。翌1955年にあらゆるところに油圧制御システムを採用した「DS」を発表した。

シトロエンのエンジニアによると、「金属バネとガスあるいは油圧ダンパーという従来のサスペンション・システムの代わりに、本システムを使うことは、まるで水の上を滑るような乗り心地をもたらす」という触れ込みだった。

この考えが主流になるかどうかは、フォロワーで決まる。シトロエンの技術は、一時期ロールス・ロイスやマセラティが部分的に使用したものの、さらに続くメーカーはなかった。シトロエンは、2007年のシトロエン「C5」まで使い続けたが、それで終止符(涙)。

しかしファンは、そんな昔の個性あふれるシトロエンを愛する。理由はひとそれぞれかもしれないが、エンジニアの理想主義が作り上げた技術を使い続けたシトロエンのありかたに、マニア心をくすぐられるからではないだろうか。

今回採り上げるクルマは、シトロエンの油圧サスペンションほどの“独自性”や“趣味性”はないかもしれないが、それでもどこかしらに、作り手のこだわりを強く感じさせる装備やメカニズムを搭載する。

いまいちど、探して、乗ってみたくなるのでは? 現存する個体はほとんどないと思われるが……。

(1)5代目トヨタ「セリカ」:油圧制御式アクティブ・サスペンション1989年発表の5代目セリカといえば、世界ラリー選手権で疾走するイメージが強かった。登場したときは、シャシーを継続使用しているなど、4代目との関連性がそれなりに強かったものの、しかし、中身は濃かった。

高性能エンジン、高性能な足まわり、さらに四輪操舵システムなど、技術は凝っていた。しかも世界ラリー選手権での活躍もあって、存在感は強かった。

なかでも特筆すべきが、「アクティブスポーツ」に設定されたアクティブサスペンション。走行状況を検知し、コンピューターによってサスペンション・システムを油圧で制御。たとえばコーナーを曲がるとき、車体のロールを抑えて操縦性を向上させるという具合だ。

目的はスポーツ走行時の姿勢制御。シトロエンもこれに心を砕いていた。1980年代は多くのメーカーが自分たちなりのやりかたでアクティブ・サスペンション・システムを手がけていたものだ。

ちなみに、通常のサスペンションはパッシブ(受け身)型。路面からの入力やG(重力)がかかったときに、それをどう受け止めて、姿勢安定性を維持するか? を、考えて開発されている。

セリカの本システムは、非常に高価なオプションであり、製造する手間もかかったようだ。受注は300台限定。あいにく私はアクティブスポーツを運転する機会はなかった(涙)。運転できた人はかなり限られていたと思う。

継続しなかったのは、セリカがラリー選手権から引退したのと、そこまで市場でのニーズがなかったのと、当時の電子制御と油圧制御が本来狙ったパフォーマンスを出せなかったとか、いろいろ考えられる。

(2)初代日産「レパード」:フェンダーミラーワイパー日産自動車が1980年に初代レパードを発表したときは驚かされた。なにしろ大なり小なり、日産が持てる技術のオンパレード。大きいものは、車高自動調整機能やロックアップ機構つきオートマチック変速機。小さいのは、フェンダーミラーの水滴を拭き取るワイパーだ。

小さなもので、ギミック(こけおどし)と一蹴される可能性だってあっただろうに、いまだに初代レパードというと“あのフェンダーミラーワイパーがついたモデル”と連想されるぐらいの存在感だったのが笑ってしまう。

実際に使うと、限られた鏡面のなかでワイパーが邪魔だ、とか、そこまでワイパーの必要性を感じない、とか、評価は高くなかった。それで消えてしまっても不思議ではなかったが、1988年発表の「セドリック/グロリア・シーマ」のドアマウンテッドミラーにもワイパーが用意されていた。

じっさいに困るとしたら、ミラーよりもサイドウィンドウの汚れや水滴だ。そこに気がついていたトヨタは、1988年発表の6代目「マークIIで」、サイドウィンドウワイパーを用意した。小さなワイパーがドアマウンテッドミラーあたりのサイドウィンドウをしょこしょこと拭いてくれるのである。

雪解け道などを走っていると、クルマによってはサイドウィンドウがかなり汚れる。したがって、そういうときに便利かもしれない。が、ウォッシャーないと汚れはあまり拭き取れない。もうすこし煮詰めていけば、いい技術に成長しただろうか……微妙である。

(3)初代ホンダ「バラードスポーツCR-X」:ルーフベンチレーションホンダが1983年に発売したバラードスポーツCRXは、ユニークなコンセプトのかたまりだった。全長3675mmとかなりコンパクトなクーペスタイルのボディは軽快感あふれて、グッドデザイン。きびきび走るという機能表現としてよく出来ていた。

内装面でも、「1マイルリアシート」と呼ばれた後席(らしきもの)が印象的だ。人間のおしりがはまるようなくぼみのついた合成樹脂性のクッション。これをシートと言っていいのだろうか……なにしろ作っている本人が「1マイル(1.6km)」しか乗っていられないとしているのだ。当時のホンダらしい奇想天外な装備である。

同様が、ルーフベンチレーション。四角い小さな空気採り入れ口が、室内からの手動レバー操作で持ち上がそこを開けて外気を室内に取り入れるが、実際使うとたいして入ってこなかった。

アイディアソースは、当時からアバルト車と言われた。形状はまったく違うけれど、アバルトは「OT1300」などのモデルに「ペリスコピカ」なるルーフベンチレーションを採用したので知られていたからだ。潜望鏡のような形状で、窓がほとんど開かないレースカーの車内に、空気を採り入れるために取り付けられた。

バラードスポーツCRXは、サイドウィンドウがめいっぱい下げられるし、オプションで大きなスライディングルーフも選べた。外気を浴びたいひとは、後者を選んだ。

ルーフベンチレーションは、機能ではない。アルファロメオ「ユニアZ」(1969年)を彷彿させる“コーダトロンカ”なるテールエンドのデザイン処理などとともに、“わかっているクルマ好き”がニヤリとするための装備(にすぎない)といえる。

あいにく遊びに終わってしまっているのが、惜しい。

(4)2代目三菱「デボネア」:アクアスキュータム仕様自動車メーカーのカラー&トリム担当部門は、おそらくマーケット部門の要請もあって、服飾メーカーとのコラボレーションを進めてきた。最近では、ポール・スミスとミニがよく知られているが、ブガッティ「シロン」とエルメス(2019年)をはじめ、枚挙にいとまがない。

1970年代にはキャデラック「セビル」のグッチ仕様(1978年)や、リンカーン「コンチネンタル」とジバンシー(1978年)もそれなりに人気を博したようだ。異業種とのコラボレーションは見ていても楽しい。

三菱自動車もデボネアVに英国のブランド、アクアスキュータムとコラボして内装を仕上げた限定車を、1991年に発売した。

デボネアVにあった、大きなクッションが積みかさねられたようなユニークなシート形状を活かし、シート素材をふたつに分けた。身体が触れる部分に、アクアスキュータム独自のクラブチェックなる格子柄のファブリックを採用。

アクアスキュータムは、バーバリーと並んでトレンチコートで人気のあったブランドだったが、経営不振のため、1990年に日本のレナウンに買収されていた。

レナウンは、バブル崩壊後の経営危機に直面していて、アクアスキュータム買収が経営建て直しの一助になれば……と、考えていたようだ。しかし展開はうまくいかず、三菱自動車とのコラボレーションも、一部に話題を提供しただけに終わってしまった。

そもそも、クルマの機能ということから考えると、もっともホールド性が求められる部分に、すべりやすいファブリックを使うというのに無理があった。三菱デザイン部のカラー&トリム担当デザイナーは、この無理筋の企画実現において、内心忸怩たる思いだったのでは? と、想像したものだ。

(5)初代いすゞ「アスカ」:NAVi5いすゞ・アスカが発売されたのは1983年。親会社だった米ゼネラルモーターズが推進していたグローバルカープロジェクトの日本版として開発されたモデルだ。

1967年から1982年まで作り続けられた「フローリアン」の後継車という位置づけだったが、アスカはすっきりしたスタイリングで、軽快。

アスカの大冒険は、「NAVi-5(ナビファイブ)」と名づけられた変速機の搭載だ。コンピューターがクラッチ操作をおこなうセミオートマチック。シフターはマニュアル5段のようなパターンで、ドライバーがシフターを握ると電流でクラッチが切れ、ギアを入れるとアクチュエーターがギアをつなぐ。

ゆっくり運転するぶんには、問題なかったが、すばやいシフトやスポーツドライビングなどというときは、ドライバーのそれぞれの流儀に合わないこともあり、イライラするひともいた(私だ)。

そもそもNAVi-5が使えたのは、エンジントルクがさほど大きくないからで、逆からいえば、パワー感にとぼしかった。つまり、アスカのNAVi-5は、もっとも重要なファン・トゥ・ドライブに欠けていた。

2代目ジェミニにも1986年にNAVi-5搭載。アスカには1989年まで使い続けられ、次はなかった。ただし、6段化されたものが、いすゞの商用車に搭載されるなど、技術は終わらなかった。

当時、ギアボックスを開発する資金繰りに苦しむなど、いすゞの台所事情を勘案すると、今に活きる技術となったNAVi-5に、「よくやった」と、言いたくなる判官贔屓の私である。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

14件
  • 5代目セリカGT-Rに乗っていました。
    私としては電子制御四輪操舵システムが印象的でした。
    Uターンの時どうしても大きく膨らむなと思っていたら、
    プログラムミスで低速でも後輪を同方向に切っていたようでしたw
  • セリカのアクティブサスペンションとWRCは関係ないだろう
    グループAのベース車両は、GT-Fourだったんだから
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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