2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーに初ノミネートされ、10BEST CARとして選ばれ、そして晴れて2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーのパフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーに選出されたアルピナのB3は、3の数字が示すように、BMW3シリーズ、それもM340i x Drive(日本国内価格987万円)をベースに、アルピナが仕立てたスペシャルなモデルである。
エクステリアはマニア垂涎のアルピナストライプ(オプション)が入り、リップスポイラー、4本出しマフラーが特別装備される程度で、20本スポークの鍛造アルピナクラシックホイールとピレリP ZEROのF255/30ZR20、R265/30ZR20サイズのタイヤが奢られるものの、いたってジェントル、いや、エレガントと言っていいほどの佇まいを見せている。
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インテリアにしても、過度な装飾こそなされていないものの、4段階から選べるトリムレベルによって、好みの世界を手に入れることができる。試乗車は、レザーステアリングの上部に、ボディカラーと同じダークグリーン色があしらわれるなど、カスタマイズは自在だそうだ。
が、そのスペックを知れば、BMW車のシャシー、エンジンなどに特別な手を加える、プレミアムブランドのさらに上をいくエクスクルーシブな自動車メーカーとしてのこだわりがあらわになる。何しろS58型と呼ばれるM3用を用いたパワーユニットは、3L直6ビターボ(ツインターボ)、最高出力462ps/5500-7000rpm、700N・m/2500-4500rpmというスーパーなスペックの持ち主なのである(M3用をさらにトルクアップ)。
アルピナのエンブレムが誇らしいスポーツシートに収まり、深いグリーンメタリックに塗られたB3を走らせれば、20インチタイヤとは思えないフラットで快適感極まる乗り心地の良さにまずは驚かされる。まさに、アルピナマジックである。
しかも、低回転域から分厚いトルクが湧き出て、ほんの少しアクセルを開けるだけで、静かに、そしてクルマの流れを大きくリードする加速力が得られる。この時点では、462psの獰猛さなど、みじんも感じられないジェントルさを保っている。スパルタンなM3では、これほどまでの快適性は望めないと言っていい。
アルピナ独自のエンジンチューニング、マネージメントがもたらす本領は、日本の高速道路ではそのごく一端を示すに過ぎない。本国でB3を走らせた関係者によれば、200km/hオーバーのクルーズを素晴らしく静かに、快適にこなし、”時間を買う”という概念を思い知らせてくれるそうだが、日本の高速道路の制限速度域では、アルピナB3の持つ性能のほんの入り口だけを堪能することになるはずだ。
ただし、それでもビターボと呼ばれるパワーユニットの素晴らしさは体感できる。とにもかくにも、シルキーシックスと呼ぶべき、リミットに向かってシルクのような感触でよどみなく回転をあげる、機械の雑味皆無の感動的と言っていいウルトラスムーズさ、パワーの劇的な盛り上がりの序章ぐらいは、我がものにできると言っていい。試乗中、高速道路の合流で、不用意にアクセルをやや深く踏み込んだ時には、まるで巨大な塊に蹴飛ばされるような、強烈すぎる怒涛の加速力に、思わず血の気が引いたほどだった。
実は、ガマンの公道試乗のあと、運よく、サーキットで走らせる機会を得たのだが、コーナーでの地を這うようなしなやかなフットワークマナー、精密なステアリングレスポンスの良さ、雨の中のサーキットでさえ安心できるxDrive(4WD)による圧巻の接地性と安定感の高さを痛感。ビターボに組み合わされたアルピナ独自の8ATの制御も極めてスポーティーなものだった。
言い換えれば、恐ろしいほど速く、そして想像以上の速さでコーナーを駆け抜けられるリムジンなのである。しかも、文句なしの快適感を伴ったまま・・・。そう、アルピナB3はサーキットでも際立つパフォーマンスの持ち主だったということだ。乗り終えたあとには、人生最高のレストランの最高のテーブルで、最高の料理とワインを、最高のサービスで味わったあとのような余韻、満足感に浸ることができたぐらいである。
なお、アルピナB3セダンのベース価格は1229万円。試乗車は様々なオプション込みで1500万円に達するものの、実は、ベース価格だけを見れば、M340i x Driveの987万円と大きく変わらないプライシングなのである。BMW3シリーズのサイズに魅力を感じても、やはり街に溢れているところに抵抗があるBMWファンも多いはずだが、1229万円~を”いかにもな”スポーツカーにではなく、玄人御用達のアルピナに費やすことは、能ある鷹は爪を隠す・・・ではないけれど、かなりオシャレな選択ではないだろうか。ちなみに、車体番号は、BMWの文字列を消して、その下に新たに打ち込んでいたりするこだわりだ・・・。
特に、日々、長距離を走り、時間を大切にし、時には後席に家族やペット(ワゴンのツーリングもある)を乗せる機会もある人には、これ以上の、日本の路上にジャストサイズなコンパクトリムジン、ハイエンドセダンもほかにないと思える。クルマで時間を買う、という概念が根付く、アウトバーンのあるドイツの「ドイツ・パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー2021」、「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したのも、納得せざるを得ない。
やがて自動車は、BMW含めて電動車一色になるはずで、こうした純ガソリン車の”究極”を味わい、賞味するなら、本当に、今のうちではないだろうか。
アルピナB3
https://alpina.co.jp/models/b3/highlights/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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みんなのコメント
このクルマを手放しで絶賛して、授賞してしまうCOTYは、腐り果ててる。
そりゃあ、ニッポンはアルピナの超お得意様だし、選考委員の自称ジャーナリスト様達が丁寧に扱われ、タダで乗り回して返却するぶんには、「いいクルマ!」でしょうけどね!!
自腹で購入、維持、日常使用して数年乗って売却するまで、「一般消費者」とは言わずども「消費者」目線で評価・評論してるCOTY選考委員は皆無でしょう。。。
過去モデルは3シリーズもラグジュアリーベース。
物書きの程度が低い。