深遠な能力で落ち着いた気分になれる
悠々。マセラティの最新ミドシップモデル、MC20 チェロへ試乗して、こんな言葉が浮かんできた。
【画像】優雅に速い マセラティMC20 チェロ ライバルの高性能オープンと写真で比較 全136枚
スーパーカーの印象として、一般的な表現ではないかもしれない。しかしこのクルマを運転すると、秘めた深遠な能力のおかげで、望外に落ち着いた気分にさせられたのだ。
もちろん、走りは決して鈍重ではない。カーブの続く手強いルートへ、臆することなく飛び込んでいける。3.0L V6ツインターボ・エンジンは630psを発揮し、圧倒されるほどの加速を生み出す。最大トルクは74.2kg-mあり、極めて扱いやすい。
必要なら、大きくて軽いカーボンセラミックブレーキが速度をしっかり絞ってくれる。シャシーもカーボンファイバー製で、極めて強固。ルーフが切り取られても、さしたる問題はないようだ。
4本のタイヤを吊り下げるのは、前後ともにダブルウイッシュボーン式のサスペンション。アダプティブダンパーの制御は素晴らしく、最適な減衰力を瞬時に与える。
ドライブモードには、ウェット、GT、スポーツ、コルサ(レース)の4種類が設けられている。各モードによる操縦特性の変化の幅は非常に大きい。MC20のポテンシャルの高さを証明するように。
パワフルでありながら上品で、洗練された歴史あるマセラティ・ブランドに相応しい内容といえる。そして、その容姿にも見惚れてしまう。
GTモードはクルージングにピッタリ
MC20は、カナードやディフューザーがこれ見よがしに付加された、エアロダイナミクス最優先のスタイリングではない。過度に大きいエアインテークも、威圧的なフロントフェイスも与えられていない。ビビッドなカラーで、視線を集めることもない。
「アロガント(傲慢)ではなく、エレガント(優雅)なデザインです」。主任開発技術者のジャンルカ・アンティノリ氏が、優しく説明する。ただし、見た目がアグレッシブでなくても、MC20 チェロがハードコアな走りを受け付けないわけではない。
今回の試乗場所となったのは、イタリア・シシリー島の東部、エトナ山の麓だった。一見おおらかだが、活火山だと主張するように風にのって硫黄の匂いが流れてくる。
この地域に広がる道は、交通量の少ない幅の広い区間もあれば、小腸のように細くうねった区間もある。場所によっては洪水の被害が残っていて、沿岸部では海水が蒸発した塩で滑りやすいところもある。多彩なシャシー能力を確認するのに不足はない。
まず、GTモードで発進する。若干弾む印象ながら、MC20 チェロは靭やかに路面を処理する。つぎはぎの多い都市部でも、少し入り組んだ海岸沿いでも、ルーフとサイドウインドウを開いてクルージングするのにピッタリな乗り心地だ。
スポーツ・モードでは、姿勢制御が1段引き締まる。それでも、硬さは殆どの一般道で許容範囲。8速ATは低めのギアを選ぶようになり、トルキーなV6ツインターボの実力を発揮しやすくなる。自分でシフトパドルを弾いた方が、より好ましいが。
挙動は予想しやすく、反応は直感的
この設定が、MC20 チェロのスイートスポット。驚くほど高速でのコーナリングと、穏やかと呼べる快適性とを両立させている。
カーブの途中で、内側にラインを絞りたいような操舵も問題なく受けつける。旋回途中にブレーキペダルを踏んでも、ヘアピンでカント角が変化しても、至って安定している。
MC20 チェロは、グランドツアラーでありスーパーカーなのだと実感する。見事な姿勢制御とグリップ力で、クルマに対し高い信頼感を抱ける。
ドライブモードには、更に上のコルサがある。コーナーでステアリングホイールを切り込んでいくと、明確に重さが増したことがわかる。アダプティブダンパーは引き締まり、靭やかな筋肉のように迫りくる負荷へ備える。
トラクション・コントロールも緩くなる。ドライバーが望めば完全にオフにもできるが、充分に介入が遅くなるから、その必要はないかもしれない。
塩の浮いた滑りやすい路面では、2速で思い切りテールスライドを味わえた。電子制御の手を借りず、ドライバーのスキルに依存した状態にあった。
シャシーの挙動は予想しやすく、入力に対する反応は直感的。MC20 チェロとの信頼関係が、一層深くなる。舌を巻くほど有能で、運転しがいがある。0-100km/h加速2.9秒という、過剰なほどのパワーを恐れる必要もない。
オープントップでも本来の洗練性は失わず
ちなみに、この0-100km/h加速の数字は、クーペのMC20と同値。ルーフを一旦切り取り、リトラクタブル・グラスルーフを追加する作業を、65kgの重量増で達成している。走行中でも、約49km/hまでなら12秒で開閉可能だという。
グラスルーフだから、クローズ状態でも見上げれば大空を眺められる。高分子分散型液晶という層が与えられ、スイッチ1つで不透明になり日差しを遮ることもできる。
MC20のカーボンファイバー製タブシャシーは、未来を見据えた設計が施されていた。オープントップのチェロだけでなく、今後のバッテリーEV化にも対応するという。
とはいえルーフを切除すると、強固なタブシャシーといえども剛性は落ちる。そこで、カーボンファイバーの織り方に変更を加え、厚みを増やすことで、低下した一部を補っている。アンティノリによれば、競合モデルより25%ほど勝るという。
リトラクタブル・グラスルーフを支えるアルミニウム製フレームも、シャシーの補強に貢献しているそうだ。リアのストラットタワーとエンジンマウント部分とを結び、ボルトで締結することで、リアアクスル付近の剛性を大幅に高めている。
かなり傷んだ区間を走らせると、クーペ版と比べてMC20 チェロの剛性が落ちていることを確認できる。しかし、一般的な路面なら実感することはない。本来の洗練性はほぼ失っていない。
間近に聞こえるエンジンのサウンド
不必要なノイズも充分に遮断されている。グラスルーフを開いた時に生じる風切り音は、リアデッキの両サイドに立ち上がるバットレスの形状を煮詰めることで軽減している。
流石にワイドなリアタイヤは、転がり音が小さくない。それでも、シリアスなスポーツカー水準だけでなく、グランドツアラー水準でも、車内の音環境は優秀だといっていい。
グラスルーフを開くと、3.0L V6ツインターボ「ネットウーノ」ユニットのサウンドが、より間近に聞こえてくる。コルサ・モードで増強される吸気音も痛快だった。
常用域でのエンジン・サウンドは、さほど聴き応えのあるものではないかもしれない。しかし高回転域まで引っ張れば、滑らかで興奮を誘う雄叫びが響き渡る。
深遠で訴求力の高い動的能力に、エレガントなスタイリングとこの音響が組み合わさり、MC20 チェロの素晴らしい独自性が完成している。現在のどんなライバルを並べても、引けを取らない仕上がりだと思う。
イタリアの伝統あるマセラティは、完全に復調したようだ。それを確認できたことも、うれしい事実だといえる。
マセラティMC20 チェロ(欧州仕様)のスペック
英国価格:23万1885ポンド(約3826万円)
全長:4669mm
全幅:1965mm
全高:1224mm
最高速度:320km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1540kg(予想)
パワートレイン:V型6気筒3000ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:630ps/7500rpm
最大トルク:74.2kg-m/3000-5500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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