新車試乗レポート [2022.02.14 UP]
LEXUS 新型LX 先行試乗!!
新型LXは、“レクサス版ランクル”ではなく、レクサス独自の最上位ラグジュアリーSUVであることを強くアピールしている。ランクルと並行して開発され、4座独立仕様の設定をはじめ、仕掛けは万全。今回はクローズドコースでのオン/オフ試乗を交え、その実力に迫る。
最新版・人気SUVトップ10【番外編】2022年の注目SUV×8
●文:川島 茂夫 ●写真:澤田 和久
【左】新型 LEXUS LX ●価格:1250万~1800万円 ●発売日:1月12日
<フルモデルチェンジ> 主要諸元(LX600“エグゼクティブ”) ●全長×全幅×全高(mm):5100×1990×1895 ●ホイールベース(mm):2850 ●最低地上高(mm):210 ●車両重量(kg):2600 ●駆動方式:4WD ●パワートレーン:3444ccV型6気筒直噴ツインターボ(415PS/66.3kg・m) ●トランスミッション:10速AT ●使用燃料・タンク容量:無鉛プレミアムガソリン・80ℓ ●WLTCモード燃費(km/ℓ):8.0 ●最小回転半径(m):6.0/【右】従来型 LEXUS LX ●価格:1135万6481~1191万6666円 標準系も先進機能満載で、内外装の仕立ても豪華だ。2列5人乗りと3列7人乗りをラインナップ。ホイールは20インチ(22インチはOP)。
国産SUVの頂点モデルがTNGA世代に大進化!!
路面を問わず信頼できる
オフ車ならではの上質感
オフローダーは実力の世界。踏破性能はもちろん耐久性も含めて乗り手を護る力が試される。ブランドイメージではない、実績がすべてだ。故にレクサスブランドの威力は通用しないとなるのだが、LXは違っている。何しろベースがオフローダーの頂点たるランドクルーザーなのだ。新型となったLXも先代同様に基本設計をランドクルーザーと共用する。そこにレクサス基準の快適性や走行性能、贅を盛ったモデルがLXである。
しかも新型ではランドクルーザーには採用されなかった車高調整機能・AHCを全車に標準装備。可変サス・AVSと併せてオンロードでの安心と心地よさ、悪路踏破性の両面の向上を図っている。オフローダーとしてもランクルと同等以上の存在となったわけだ。
試乗といっても試食レベルの環境だったが、それらが目指したLXの走りの狙いを垣間見ることができた。「信頼」である。
オンロードのお試しコースはジムカーナコース相応。タイトターンの捌きや80km/h制動旋回等を試す。何事も起きない。2・6t級の車重に負けて予想外の反応や破綻を来すこともない。挙動は重量を感じさせるが、ライントレースも姿勢も安定している。とくに制動旋回の安定性が印象的だ。
オフロードは人工のトライアルセクション。登降坂では階段状の登坂もあり、マッドガードを擦りながらの試乗である。ここで試されたのは安心感。スリップ制御やクロールコントロールなど運転支援機能がもたらす余裕に加え、車体下部路面も映し出すモニターが利便性と共に心理的な負担を軽減してくれた。ドライバーを試すような部分がない、頼もしい相棒といった振る舞いなのである。
どこでも全幅の信頼を抱かせる走行性能。一般的に言うプレミアムとは違う、オフローダーの本質に沿ったプレミアムが感じられた。
■グレード バリエーション
LX600
●車両本体価格:1250万円 5人/7人乗り
LX600 “オフロード”
●車両本体価格:1290万円 5人/7人乗り
センターに加え、フロント/リヤにもデフロックを備えるほか、18タイヤを装着するなど、特に悪路走破性の向上を狙った仕様だ。
LX600 “エグゼクティブ”
●車両本体価格:1800万円 4人乗り
オフロードとともに新設定されたグレード。2列目のくつろぎを重視して専用キャプテンシートを備えた4人乗り。ホイールは22インチの専用意匠だ。
ファーストインプレッション
【実力チェック】ON-ROAD
力強くかつ安定性が高く
自然体で扱いやすい
サイズと重量がもたらす車格感と、車重やサイズを足枷と感じさせない動力性能や操縦性を高水準でバランスさせた走りである。3.5ℓのV6ターボはどの回転域でも力強いのだが、ラフなアクセルワークでも急激な駆動力変化を起こさない。車重を意識させるパワーフィールとも言えるが、それが心地よくも頼もしくも思えた。フットワークは車軸周りの緩さを多少意識させられるが、本格オフローダーとしてはかなり剛性感が高い。ハンドリングは安定性を第一とした特性であり、軽快感や切れ味は二の次。ただし、ラインコントロール性がよく、自然体で扱いやすいのが印象的だ。
【新型】
【従来型】
【実力チェック】OFF-ROAD
初心者もベテランも
運転支援機能でストレス軽減
マルチテレインセレクトのスリップコントロールの制御は繊細にして滑らか。従来型の制御では少々唐突に感じられた状況でも確実に穏やかに踏破する。極低速クルコンともいえるクロールコントロールやマルチテレインモニターにしても、厳しい状況での一部運転代行や安全確認ができるので、オフロード走行に不慣れなドライバーはもちろん、ベテランドライバーでも運転ストレス軽減には効果的。シャシーや駆動系の持つ圧倒的な踏破性の高さがあればこそだが、困難な状況でさらに大変な想いをさせないように配慮されたオフロード向け運転支援機能の充実に感心させられた。
【新型】●最大渡河性能:700mm ●登坂能力:45° ●最大安定傾斜角:44°
【従来型】
エクステリア
プレミアムのベースは
装飾ではなく機能性だ
車体寸法に比べて短いオーバーハングに大径タイヤ。乗用車最大級のサイズながら車両感覚を掴みやすくしたボンネット。荷室部までルーフ高を高くしたキャビン形状。フロントマスクや各部の仕立てにおいてレクサスのプレミアムを感じさせるが、その基本は“機能を形にした”スタイルだ。
全長5100mm ホイールベース2850mm 最小回転半径6.0m
全幅1990mm 車重2540~2600kg
全高1885~1895mm 最低地上高200~210mm
機能性に優れるスクエアなボディは、全長5mオーバー、全幅は2mに迫る。堂々たる体躯に押し出し抜群のスピンドルグリルやシャープな表情のヘッドランプを備えている。
先進的な印象にも寄与する三眼フルLEDヘッドランプ。フルLEDリヤコンビネーションランプとともに、L字形状の意匠が強い印象をもたらしている。
インテリア
派手さや豪華さよりも
居心地の良さを感じる
レイアウトを見るとインパネの基礎はランドクルーザーと共用と理解できるが、レザーで包まれたトリムなどひと手間もふた手間も掛けた仕立て。付け加えるなら、プレミアム性は高いが豪奢といった印象はなく、落ち着いた居心地のよさを主としているのが特徴だ。
7人乗りの3列目は内装とのコーディネートで一環で仕立てられている。見た目はいいのだが、クッションは薄く座り心地は今ひとつ。レッグスペースやヘッドルームの余裕もなく、フロント/セカンドシートと比較するまでもなく、補助的用途の印象が強い。
■4人乗り[エグゼクティブ]
LX全仕様のシートの中で最も寛げ、もてなされている気持ちになれるのがこのシート。たっぷりゆったりの座り心地に個別エンタメとセンターコンソールが贅を実感させる。
■5人乗り
■7人乗り
エグゼクティブ以外の2列目は3人掛けのベンチシートとなる。大柄なボディゆえ荷室は広く、7人乗りの3列目は床下に格納され、2列目はタンブル可能。また、3列目への乗降が楽になる電動ウォークイン機構も備えている。
メカニズム/装備
TNGAによる新世代の
知見を惜しみなく投入
TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)による新世代のクルマ造りの成果を盛り込みつつ、本格クロカン車の証とも言えるラダーフレームを採用。防犯効果の高い指紋認証システムや充実した制御モード、オフロードにも適した運転支援など先進機能も満載する。
■新GA-F プラットフォーム
■新開発10速AT
GA-Fプラットフォームは伝統のラダーフレーム方式にTNGAの知見を採り入れて新開発。強大なトルクを発生するエンジンには新開発10速ATが組み合わされ、新世代の走りを実現している。
■3.5ℓV6ツインターボ
ロングストロークの3444ccV6を高レスポンスなツインターボで過給。トルクはワイド&フラット、力強く扱いやすい特性だ。
■マルチテレインセレクト
選択に応じて動的な特性を統合制御。すべてお任せの「AUTO」も選べる。
■マルチテレインモニター
直前の映像から合成した床下の状況をリアルタイムに映し出し、見える化で運転不安を軽減。フロントに加え、リヤにも対応した。
■指紋認証
市場での評価の高さゆえに防犯性能の向上も期待された部分。ランクルと同様の指紋認証システムを採用して対処している。
【まとめ】
プレミアム性と走破性を
最高水準で両立している
現行ランドクルーザーが登場した時に、先代に比べてプレミアム志向が弱まった印象を受けた。虚飾を廃したというか、玄人好みというか、そんな印象だ。多分、次期LXとの差別化を進めるためだろうと予測していたのだが、半ば予測どおりだったものの、意外な部分もあった。
悪路走行機能も含めて現行ランドクルーザーの信頼感に関わるすべてを取り込み、さらに上乗せ。乗員に圧倒的な安心感を持たせた上で肌触りよく寛げる環境。ランドクルーザーよりも600~1100万円近く高い価格をすればよくて当然と思えるものの、オフローダーとして見当違いの方向に贅を凝らしたという印象もない。
オフローダーとしてのコスパを考えればランドクルーザーとLXは比較にならない。また、オフロードに興味がなければ高性能ハイブリッド車も用意するRXのほうが投資効果が高い。現在SUVの主流となるクロスオーバー系としては、むしろRXが一般的だ。ただ、プレミアムとオフローダーを矛盾なく最高水準でまとめる解答のひとつがLXなのは間違いない。世界最高水準のサバイバビリティを有しているからこそ、レクサスSUVの頂点モデルなのだ。
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みんなのコメント
ランクルは機能からすると他社のフラッグシップSUVに比べて価格が安すぎるし、内装もさっぱりしすぎ。
ランクルを1000万円から、LXを1500万円からくらいにしたほうがいいんじゃないかな。