■アカデミーを作るなんて思いついたのは誰だ!
「レース中に自問自答したよ。アカデミーを作るなんてアイデアを思いついたのは誰なんだってね!」
「ロッシに会うまで死ねない!」102歳のおばあちゃんが新型コロナから奇跡の生還!!
これはミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われたMotoGP第7戦サンマリノGPを終えたバレンティーノ・ロッシ(Monster Energy Yamaha MotoGP)のひと言だ。 ロッシ校長こそファイナルラップで終盤ペースを上げたジョアン・ミル(Team Suzuki Ecstar)にオーバーテイクされ、惜しくも3位を逃したものの、ミサノの週末は「VR46アカデミー」を拠点とする愛弟子たちが躍進した。
MotoGPクラスでは、予選2番手からスタートした“フランキー”ことフランコ・モルビデリ(PETRONAS Yamaha Sepang Racing Team)が、オープニングラップで首位を奪うと、そのままトップを独走して自身初めての優勝。“ペッコ”ことフランチェスコ・バニャイア(Pramac Racing Ducati)も右脛骨骨折からの復帰初戦とは思えない走りで、最高峰クラス初となる2位表彰台を獲得した。
Moto2クラスでは、ロッシの異父弟としても知られるルカ・マリーニ(SKY Racing Team VR46)が今シーズン2勝目。チームメートのマルコ・ベッツェッキが2位に続いてワン・ツー・フィニッシュを決めた。
“The Doctor”も「表彰台はいつも特別だからとても残念。それに、ここはミサノだから、なおさら。フランキーとペッコと僕とで表彰台に立ったら、それはまるでモーターランチでのレースのようだっただろうね。厄介なヘビを育てしまったよ(笑)」と悔しさを滲ませながらも納得した様子だった。
■ロッシ校長自ら人生相談に乗ってくれることも
MotoGPの生ける伝説が主催する「VR46アカデミー」は、将来を担う若手イタリアンライダーの育成を目的として2014年の3月に発足。かつて小排気量・中排気量クラスを席巻していたイタリア人の世界チャンピオンが、125cc及びMoto3クラスでは2004年のアンドレア・ドヴィツィオーゾ、250cc及びMoto2クラスでは2008年のマルコ・シモンチェリを最後に誕生していなかったことに危機感を感じたことに端を発している。
現在もその状況は続いているが、当時は2005年にMotoGPを運営・管理するドルナスポーツが設立し、元GPライダーで現HRCチーム・マネージャーのアルベルト・プーチらが指導する「MotoGPアカデミー」をベースに活動し、スペイン選手権を前身とするFIM CEVレプソルインターナショナル選手権を勝ち抜くことが、MotoGPへの最短距離と認識されており、そのコースを辿ったライダーたちに育成したイタリア人ライダーで対抗しようというのが、9回チャンピオンが思いついたアイデアだ。
父親のグラツィアーノと共同で故郷イタリア・タヴィッリアに購入した土地を利用して、2重になったダートトラックコースとそこへとつながるモトクロスコースから成る「モーターランチ(バイクの牧場)」を建設し、そこでロッシ自身も混ざってのトレーニング、近隣のミサノ・サーキットに出向いて練習走行をする他、英会話も勉強するのがアカデミーのプログラム。シーズンオフや大会が開催されない土曜日にはレースを行い、他のライダーと競い合う方法やバイクをコントロールする技術を学び、切磋琢磨しているということだ。
「ライダーとして、アスリートとして、そして男としても成長できるようにアカデミーの生徒たちを助けたい。経験を共有して、ガールフレンドとの関係等、抱えている人生全般の問題、僕らの情熱について話し合うことをしたいんだ」と語るように、時間を作って、校長自ら人生相談に乗ることもある。
また、施設内にはマシンの収納スペースや更衣室、浴室等が用意されており、アカデミーに所属していないロッシの友人のライダーもしばしば訪れる。
「イタリア人選手たちをトップレベルにするのが目的だから速いのはもちろんだけど、日頃の態度も大事。ハートで選んでいる」という基準で選ばれたライダーたちの中で、すでに前述のモルビデリとバニャイアのふたりはMoto2クラスのタイトルを掴み、昇格したMotoGPクラスでも存在感を見せ始めており、成果は着実に現れている。
第8戦エミリア・ロマーニャGPもミサノで行われるが、中低速のテクニカルなコーナーが多く、ストレートが短いため、アベレージスピードが低いこのサーキットは、旋回性能には定評があるYZR-M1との相性も良い。2戦連続での地元開催となるだけに、今度こそアカデミーを率いる存在としての威厳を示し、200回目となる最高峰クラスの表彰台を獲得したいところだ。
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