スーパースポーツが431.0km/hを達成
人類は記録更新のために努力を重ねてきた。乗り物の速さも、挑戦対象の1つ。列車や船、飛行機、そして自動車にとって、速さは性能を端的に示す指標といえる。
【画像】2000年代の量産車最速 ブガッティ・ヴェイロン 現行型のシロンとディーヴォも 全108枚
2005年、ブガッティ・ヴェイロンは量産車として新たな記録を残した。メーカーが主張した最高速度は407.1km/h。グレートブリテン島の南部に位置するロンドンから北部のグラスゴーまで、全開なら2時間で到着できるスピードだ。
ただし、ヴェイロンには頻繁な給油が求められる。最高速度で走った場合、12分毎にガソリンタンクは空になるという。
スペック表に記載された燃費も、3.9km/Lと褒められるものではない。最高出力1001psと最大トルク127.0kg-mを発揮する、W型16気筒クワッドターボエンジンの排気量は8.0Lもある。そのかわり、0-100km/h加速を2.5秒でこなせる。
ヴェイロンは、それまで量産車最速の座にあったマクラーレンF1を凌駕した。もしドラッグレースを競わせたら、発進から200km/hほどまではF1が先行するだろう。だが、300km/hへ先に到達するのはヴェイロンだ。
更に記録を伸ばすべく、2010年に進化版となるヴェイロン・スーパースポーツが登場。エンジンカバーをフラットにするなど、空力特性を磨いたボディで431.0km/hの最高速度に達した。最高出力は1201psまで引き上げられていた。
超高速でオープンエアを楽しみたい富豪のため、タルガトップのヴェイロン・グランスポーツは2009年に追加。スーパースポーツのタルガトップ版、グランスポーツ・ヴィテッセも2012年に設定されている。
妻をオペラ鑑賞へ乗せていけるほど上品
このハイパーカーを生み出すことを決めたのは、当時フォルクスワーゲン・グループの最高責任者を務めていたフェルディナンド・ピエヒ氏。ブガッティというブランドを再起させる狙いがあった。
世界最速となる量産車のスケッチは、東京から名古屋へ走る新幹線のなかで描かれたという。実は日本にも縁があるモデルといえる。
その速さを叶えたパワートレインは、アウディ由来のV型8気筒を2基組み合わせたエンジン。冷却用のラジエターは合計10枚も備わっている。エンジンカバーの上部に並ぶ2本の峰は、4基のターボチャージャーへ空気を送っている。
空気を滑らかに受け流すふくよかなボディラインは、レーシングカーを開発するザウバー社の風洞実験施設で当初テストされた。しかし、360km/h程度までしか計測できず、最終的にブガッティは別の施設を利用している。
その場所は明らかになっていない。少なくとも9176psを発揮するパワーユニットが、幅8mのファンを回したことは確かなようだ。
開発でチーフドライバーを務めたのは、最高速度にも挑んだピエール・アンリ・ラファネル氏。F1レーサーだった彼は、ヴェイロンに1万1000回も試乗。テストコースの場所は23か国に及んだという。
「ピエヒがヴェイロンへ求めた技術要件の1つに、オーナーが妻をオペラ鑑賞へ乗せていけるほど、上品で洗練されていることでした」。と、ラファネルは後に発言している。
地球を小さく感じさせる内燃時代の偉業
ヴェイロンで注目するべきは、猛烈な最高速度を追い求めた技術面だけではない。四輪駆動システムとワイドな20インチ・タイヤが、コーナーでは絶大なグリップ力とトラクションを発揮。常に速く、落ち着いて運転できる。
しかも、市街地ではフォルクスワーゲン・ゴルフと同じくらい扱いやすい。高速道路では、上空1万mを飛行する飛行機のように終始安定してもいる。
インテリアは、プライベートジェットのように豪奢。後方視界には優れないが、シートは上質なレザーで仕立てられ、ウインカーレバーは軽量なマグネシウム製。サウンドシステムも一級品で、新車時84万ポンドという金額に妥当性を与えていた。
すべてがハイパーだったヴェイロンだが、近年はプレミアが付き取り引き価格は上昇中。ちなみに、右ハンドル車は存在しない。
ブガッティ・ヴェイロンは、誕生したことを称賛するべきモデルの1台といえる。地球を小さくすら感じさせる、内燃エンジン時代の偉業といっていいだろう。
新車時代のAUTOCARの評価は
ステアリングホイールを握ると、想像以上にドラマ性が薄い。無限に続くような加速の体験を、非現実なものに感じさせるほど。
路面が乾いた状態でアクセルペダルを踏み込めば、四輪駆動システムが巨大なトルクを知的に分配していくさまを感じ取れる。平然と、恐怖を感じさせることなく。
ステアリングの反応は正確で、乗り心地はしなやか。一般的なスポーツカーと変わらないほど簡単に、一般道を飛ばすことも可能だ。(2011年3月2日)
購入時に気をつけたいポイント
リコール
さすがのヴェイロンでも、リコールがいくつか出ている。1つ目は燃料計の不具合で、ガソリンが減っていても満タンだと表示される可能性があるというもの。ガソリンを激しく消費するヴェイロンの場合、重要な不備といえる。
もう1つは、ボディ下面のアルミニウム・プレートが腐食して脱落する可能性があるという内容。2006年から2010年にかけて製造されたヴェイロンが対象だった。購入時は、念のため下回りを確認しても良いだろう。恐らく、ディーラーで対応済みだと思うが。
ジャッキアップポイント
2006年から2010年に製造されたヴェイロンでは、ジャッキアップポイントの強度が足りず、ジャッキがボディへ当たってしまうことがある。変形していないか確認したい。
リアバンパー
中東地域や北米向けに作られたヴェイロンは、リアバンパーのナンバープレート用エリアの形状が異る。欧州向けの場合は、ナンバープレートの形に合わせて横に長い。
トランスミッション
巨大な最大トルクを受け止めるトランスミッションは、ブガッティの技術者によって定期的な点検が必要。これまでの整備記録と調子を確かめたい。新しいユニットへの載せ替えには、数10万ポンド(数1000万円)の費用が求められる。
ホイールとタイヤ
400km/h以上の最高速度を安全にこなすため、タイヤとホイールは3年毎の交換が推奨されている。タイヤは特注のミシュラン・パイロットスポーツPAX。アルミホイールとのセットで、3万ポンド(約483万円)程は見ておきたい。
知っておくべきこと
エンジンは基本的に密閉構造で、整備が許されているのはブガッティ・ディーラーの技術者のみ。週末にガレージでメンテナンスしたいと考えるクルマ好きには、残念な事実かもしれない。
サービス費用はとても高いと、ブガッティは認めている。可能なら、フランス・モルスハイムに位置する本社工場での整備が望ましいという。
ちなみに、オイル交換だけでも1万6500ポンド(約265万円)取られる。状態を完璧な状態に保つため、オーナーは1万ポンド(約161万円)の固定費をブガッティへ支払う必要もある。中古車のオーナーになる場合でも、同様と考えていい。
英国ではいくら払うべき?
85万ポンド(約1億3685万円)~94万9999ポンド(約1億5294万円)
2007年式前後の、生産初期のヴェイロンを英国では探せる価格帯。走行距離は3万km台が中心。実際にクルマとして乗られてきた例が多い。
95万ポンド(約1億5295万円)~99万9999ポンド(約1億6099万円)
2009年以降のヴェイロンが含まれてくる。走行距離は2万km以下。執筆時には、特注のアルミホイールとエグゾースト・システムが組まれた2006年式も1台含まれていた。
100万ポンド(約1億6100万円)以上
グランスポーツとグランスポーツ・ヴィテッセをお探しなら、この価格帯から。投資目的でコレクションされている、走行距離が3000kmを切るような例も含まれる。
英国で掘り出し物を発見
ブガッティ・ヴェイロン 登録:2007年 走行距離:2万8900km 価格:89万9989ポンド(約1億4489万円)
ブガッティのディーラーで完璧な整備を受けてきた、平均的な状態のヴェイロン。コレクターズアイテムとしてではなく、定期的に乗られてきたと考えていい。
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エンジンオイル替える費用で俺の車買えるとは。