積算1万2888km ウェールズの一般道もお手のもの
アルピナD3 S ツーリングは、AUTOCAR英国編集部の人気者。本来の長期テストの担当者はマット・プライヤーだが、残念ながら余り乗る機会は巡ってこないようだ。次々に同僚が予定を入れ、走行距離を1000kmほど伸ばし、満面の笑顔で帰ってくる。
【画像】独立時代を締めくくる1台 アルピナD3 S ツーリング B3にB4、B5 GT BMW M3も 全152枚
今回もまた、わたし、ジャック・ハリソンがキーを預かった。ご記憶の読者もいらっしゃるかと思うが、前回はリチャード・レーンが遠方への出張を楽しんでいる。滑らかなフランスの高速道路を走り、アルプス山脈を越え、イタリアを目指したようだ。
有能なD3 S ツーリングにとって、そんな長旅は朝飯前。そこで筆者は、傷んだアスファルトが延々と続くグレートブリテン島西部、北ウェールズ地方を目指すことにした。
リチャードは、平滑な高速道路を走って、世界最高の1台だと絶賛した。それでは、舗装の剥がれた穴が点在し、ワダチの深い北ウェールズの一般道で、同じ印象を与えるだろうか。この地域は雨も多い。
何事も、疑ってかかることは大切だ。だが、今回ばかりは無用だったかもしれない。スノードニア国立公園の片側1車線の道も、エランバレーの峠を越える細い道も、完全にお手のもの。終始、流暢にこなしてみせた。
ステアリングホイールには素晴らしいフィードバックが伝わり、極めてラインを辿りやすい。幅員の狭い区間でも、ボディサイズが煩わしく感じることはなし。2023年にフォード・フォーカス STで同じ区間を走ったが、D3 S ツーリングの方が確実に優れていた。
非常に扱いやすいのに、凄まじく速い
ドライバーズシートに座ってから、驚くほど短時間でクルマと親しくなれ、操る自信が生まれる。スポーツ・モードを選ぶと、望ましい条件ではなくても、より速く運転したいと気持ちを刺激する。1900kgも車重がある、ステーションワゴンだとは思えない。
アルピナ独自の改良が加えられた四輪駆動システムにより、トルク分配は知的で緻密。しなやかなサスペンションが、路面の凹凸をくまなく均す。非常に扱いやすいのに、凄まじく速い。
今回のルートには、左の高速コーナーの手前で、途中に大きなコブが浮いたアピンを何度か通過する、絶妙な区間があった。思わず筆者は1度引き返し、2回も走ってしまったが、コーナリングは正確で完璧。凄まじく強力な制動力と加速力にも、唸ってしまった。
しかも、北ウェールズ地方からの帰り道でも、AUTOCARのオフィスまでの通勤も、まったく妥協ないことにも度肝を抜かされた。コンフォート・モードを選んでおけば、高速道路は快適至極だ。
長時間の勤務でイライラしがちな夕刻も、D3 S ツーリングを運転すれば不思議と新鮮な気分へ入れ替わる。往復で800km移動した出張も、過去にないほど快適だった。
これほどの走りを叶えていながら、バンドのドラムセットを軽々と積めるモデルは、果たして他に存在するのだろうか。なんて素晴らしいクルマなのだろう。
積算1万3776km ディーゼルのアドブルー液を補充
同僚が代るがわる1か月ほど楽しんだ後、ようやく筆者、マット・プライヤーの手元へD3 S ツーリングのキーが帰ってきた。すると早速、クルマは排気ガスを浄化するアドブルー液を補充して欲しいと訴えてきた。
淡白な告知だったものの、完全に空になってしまうとエンジンは始動しなくなる。5Lほど補充したが、次に警告されるまで何km走れるのか、確かめてみたい。
積算1万3776km 友人のポルシェ944を牽引
クルマ好きの友人と愛車を連ねて、カーイベントへ参加するのは、楽しい週末の過ごし方だ。しかし、ドライブシャフトを最終的に取り外すような深刻なトラブルへ、仲間のポルシェ944が見舞われてしまった。
幸いにも、長期テストのD3 S ツーリングには最大1800kgまで牽引できるトゥーバーが装備されている。交通量の少ない、なだらかな丘陵地帯を選びながら、牽引して連れ帰ることができた。
テストデータ
気に入っているトコロ
高速での扱いやすさ:驚くほど速いにも関わらず、とても扱いやすい。独自設定のサスペンションとステアリング、トルクベクタリング機能により、万能といえる力を簡単に解き放てる。
気に入らないトコロ
ワイドなホイール:タイヤのリムプロテクターの意味がないほど、アルミホイールは大きくワイド。狭い駐車場では、とても気を使う。リチャードも触れていたが、塗装もブラックではない方が良いだろう。
価格
モデル名:アルピナD3 S ツーリング(英国仕様)
新車価格:6万6000ポンド(約1228万円)
テスト車の価格:8万8265ポンド(約1641万円)
テストの記録
燃費:14.1km/L
故障:なし
出費:なし
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