バイクメーカーがあるヨーロッパの国といえば、まずドイツ、イタリア、イギリスを頭に思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
しかし、日本と縁が薄いだけで、それ以外の国々にもバイクメーカーは存在する。小規模な企業が多いが、特定のカテゴリーに一球入魂していたり、尖ったデザインを追求したりと、個性的なモデルが少なくない。
というわけで、各国のバイクメーカーが一挙に集う世界最大級の二輪モーターショー「EICMA2023」で見た、ディープな欧州車の世界を紹介しよう。
編集部註:「EICMA」とはイタリア・ミラノで例年11月に開催される二輪車だけのモーターショーで、通称ミラノショーとも呼ばれる。
【画像12点】マニアックな欧州車を紹介!公道走行可能な2スト・モタード、燃料タンク39Lのアドベンチャー、前後16インチのスーパースポーツなど個性派ぞろい
MITT MOTORCYCLES(ミットモーターサイクルズ)「スペインのフルラインアップメーカー」
MITTS MOTORCYCLE(ミットモーターサイクルズ)はバイクとスクーター、ATVの開発・販売をするスペインのメーカーで、35年以上の実績を持つ。ラインアップには50~125ccスクーター、125~530ccのスポーツバイクがあり、フルカウルスポーツ、クラシカルスクランブラー、クルーザー、アドベンチャーとなかなかに幅広い。
EICMA2023で初公開された「ミット 555TTアドベンチャー」は471cc水冷並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーで、ホイール径はフロント19インチ、リヤ17インチ。ツーリングだけではなく、街乗りでも高い視線で運転しやすいミドルクラスアドベンチャーは、想像以上にヨーロッパで人気のようだ。
続いては販売中のモデルを紹介。
「ミット 125GP2」は125cc水冷単気筒を積むフルカウルスポーツ。前後輪は16インチとひと回り小さく、旋回性がよさそうだ。
「ミット 530TT」も471cc水冷並列2気筒エンジン搭載のアドベンチャーだが、ホイールは前後17インチ。オンロード性能に特化したツアラー寄りのモデル?と思いきや、ブロックパターンタイヤを履いている。
AJPモトス「オフロードを得意とするポルトガルのメーカー」
「AJP MOTOS」(AJPモトス)は1987年にポルトガルで創業した車両メーカーで、エンデューロを中心にアドベンチャー、モタードとオフロード系バイクを得意している。
日本ではSPR、PR4といったエンデューロモデルがAJP MOTOS Japaoにより輸入されているが、EICMA2023ではアドベンチャーモデル「PR7 650」やモタードマシンも展示。さらにコンセプトモデルだというEV「フルゴラ」は、可愛らしい車体ながら最大トルクは302Nm、最高速80km/h、航続距離は最大160km、前後ホイール径は17インチという本格EVだ。
「AJP PR7 650」はラリーマシン的なデザインのアドベンチャーで、DOHC4バルブの600cc水冷単気筒エンジンを搭載。ホイール径はフロント21インチ、リヤ18インチ。シート高は920mmという驚きの数値だ!ブレーキは前後ともブレンボ製を装備する。
RIEJU(リエフ)「オフロード車が中心だが、レトロ系、EVも展開するスペインのメーカー」
1934年にスペインで自転車用アクセサリーの製造会社として創業し、1942年にリエフを設立。1945年にエンジン付き自転車を製造、1953年には175cc空冷単気筒エンジンを搭載するバイクを発売し、その後はオフロードバイクの開発・製造を得意とするメーカーへと成長した。
スペイン本国でのラインアップには、ハードエンデューロ、オフロード、スーパーモタード、トレイル(アドベンチャー)、ストリート、ファン、EVがあるが、日本ではハードエンデューロのモデルを入手可能だ。
ここでは日本には輸入されていないリエフを紹介。
「MRT SMトロフィー50フロー」は、50cc水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載し、前後17インチホイールを装着する本格派モタード。
「センチュリー」は125cc水冷単気筒エンジンを搭載するストリートスクランブラー。
「アヴェントゥーラ500」は、500cc水冷並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーで、フロント21インチ、リヤ18インチとオフロード重視の車体構成。燃料タンクは2つあり、車体後部にサブタンクを備える(テールカウルに給油口がある)。燃料タンク容量が合計で20L+19L=39Lという驚きの大容量だ!
「ヌーク・ガルゴ6KW」は働くEV。クラシカルなスタイリングがかわいらしいが、前後ホイールは17インチ、前後ディスクブレーキだからロードバイク並みの走行安定性を持っている。
CAKE(ケイク)「北欧デザインが魅力!スウェーデン発の電動バイクブランド」
スウェーデン発の電動バイク「CAKE」(ケイク)はゴールドウインが日本総代理店を担っている。EICMA2023ではメーカーカスタムを含む全ラインアップを展示。ヨーロッパや中国から多数のEVメーカーが出展していたが、洗練された北欧デザインはそのなかでもかなり目立つ存在で、電動バイク、電動アシスト自転車のある穏やかな日常──という世界観を伝えてくれる展示だった。
PUIG(プーチ)「スペインのパーツメーカーで、MT-09ベースのカスタムコンセプトを展示」
PUIG(プーチ)は1964年にスペインで創業したパーツメーカーで、2023年シーズンはMotoGPでホンダファクトリー、スーパーバイク世界選手権ではカワサキレーシングチームをサポートし、レースを支えるとともに現場のノウハウをフィードバックしている。
日本でもスクリーンやガードパーツ、ドレスアップパーツなどが販売されているので、スポーツバイクが好きな人にはおなじみのブランドかもしれない。
そんなプーチが展示していたのは、ヤマハ MT-09をベースとしたカスタムコンプリート車(コンセプト)「ディアブロ」で、日本人の感覚からすると仮面ライダーのバイクといった趣き。空力特性を追求したフロントカウルや電動スクリーン、ブレーキの冷却効率を高めるホイールカバーなどを装備する。
タンクからフロントノーズにかけてのカウルは一体構造で、カマキリを思わせる有機的な造形。ラジエターサイドに設けられたフィンは自動で動いてダウンフォースを変化させられるという。遊び心とロマンあふれるカスタムだ。
EICMA(ミラノショー)は、日本のモーターショー/モーターサイクルショーと違って、車両メーカー、サプライヤー、パーツメーカーが、販売店と商取引したり、自社の技術を売り込んだりするB to Bの見本市というのが根底にある。
だが、一般ユーザーにとっては世界中のバイクを見られる「ミラノバイクミュージアム」でもあるのだ。
2024年の開催日程もすでに発表されており、一般公開日は11月7日~10日で、入場料は7.6ユーロ。皆さんも来年はミラノへ!?
レポート&写真●山下 剛 編集●上野茂岐
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