新車販売に影響を与えるも規制できない裏事情
モスクワ市内で地元モスクワっ子と話をする時に、「日本人だよ」と伝えたら、「どこからきたんだ、東京、それとも新潟か札幌(小樽のことを言っているようだった)か」と聞かれた。東京はまだいいとして、その次に出てくる新潟や札幌(小樽)は日本で仕入れた日本仕様(つまり右ハンドル)の日本車のロシアへの代表的な輸出港。クルマ好きだったようだが(ロシア人は全体的にもクルマは大好きだ)、輸出港の地名がすぐ出てくるあたりに驚いた。
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新潟や小樽から輸出された中古車はウラジオストックで降ろされる。ウラジオストックやその周辺のシベリア地区では走っているクルマの大半は日本からの右ハンドル車か、古いロシア車となるのはニュース映像を見たりしても確認できる。
しかし、そこから約1万km離れたモスクワ市内でも日本から輸入された右ハンドル中古車は結構な確率で見かけることができる。
人気モデルはトヨタ・マークII、トヨタ・チェイサー、トヨタ・クレスタやトヨタ・クラウンなどの大きめのセダン(2年前にはトヨタ・マークXの存在は知らなかったが、今回ようやく街でマークXの初代を見るようになった)や、ホンダ・ステップワゴン、トヨタ・タウンエース ノア、日産セレナなどのミニバン系、そしてマツダ・ボンゴやトヨタ・プロボックスなどの商用車系あたりとなる。
さらには日野レンジャーなどの中型トラックや三菱キャンタークラスの高所作業車、ダイハツ・ハイゼットカーゴ(軽自動車)など、ありとあらゆるモデルがモスクワ市内を走りまわっている。
若い女性が初代トヨタ・ヴィッツに乗っているところも何回か見かけた。
いままで挙げた車名からわかるとおりに、モスクワ市内を走っている右ハンドル日本車はかなりの低年式車(古い)が多いのだが、そのなかに交じって新しめのモデルとして、トヨタ・アクアや現行トヨタ・カローラ フィールダー、現行トヨタ・エスティマの日本からの中古車なども見かけることができた。これは2年ぶりに訪れてみて2年前とは異なる傾向として目立っていた。
ロシアには日本をはじめ、西ヨーロッパ、北米、中国などから中古車が大量に流入している。あまりに流通しているので、新車販売に悪影響を与えているとされているが、一向に規制される気配はない。ある事情通は冗談交じりに「マフィアが深く関与しているので規制は無理だよ」と語ってくれた。そのため同じモデルでも欧州仕様と北米仕様と日本仕様の右ハンドル車が街なかを走っているという、とんでもないことにもなっているのである。新車も含めて、冗談抜きで世界のクルマがロシア各地で走っているのだ。
新車販売でいえば、ロシア車と中国車が価格レンジでは底辺となり、ここのゾーンのニーズ、つまり購入予算はそれほどないが、クルマを所有する必要性があるといった層に日本からの中古車がもともと食い込んでいるようなのだが、ミニバンなどの日本車の得意分野では、過去にはトヨタ・アイシスが大ブレイクしたこともあるし、あえて新車も十分に購入できる層の間でも、そこそこ年式の新しい日本からの中古車が乗られているようである。
日本車で圧倒的に人気が高いのは、トヨタ・ランドクルーザー系(プラドやレクサスLX570を含む)と三菱パジェロ。ロシア全体の国土を考えれば納得できるモデルである。パジェロは日本では残念ながら、すでに過去のクルマになろうとしているようにも見えるが、ロシア当たりの人気の高さはハンパではなく、ロシアでもパジェロがあるからこそ、三菱車全体のステイタスも高い。タクシーの運転手は知っている日本車のブランドとして、トヨタの次に三菱を挙げた。
ロシアでは“ロルフ”という大手ディストリビューターが販売しているのもステイタスアップにつながっているようだが、パジェロスポーツなどタフなモデルを多く取りそろえるのも大きいといえよう。都市部を除けばクルマはよりタフなモデルが圧倒的に好まれるのである。
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