モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、全日本ツーリングカー選手権(JTCC)を戦ったニッサン・プリメーラ(P11型)です。
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1994年、主に2.0リッター4ドアセダンによる選手権として新たなスタートを切った全日本ツーリングカー選手権(JTCC)。このJTCCにおいてニッサンは、P10型のプリメーラを主力車種に据えて、シリーズ初年度から1995年シーズンまでの2年間を戦った。
しかし、P10型のプリメーラは、外国車勢やトヨタ車勢の後塵を拝することが多く、1994年~1995年の2年間で、勝利はわずかに2回のみ。1996年に向けて、さらなる戦闘力アップが望まれている状況だった。
今回紹介するP11型のプリメーラは、そんな厳しい状況にあった1996年シーズンに向けて投入されたニッサンのニューウェポンである。前述の通り、ニッサンは、前年までP10型のプリメーラで戦っていたため、P11型への進化は自然な流れにも思えた。しかし、本来ニッサンは、JTCCの1996年シーズンを“プリメーラ”で戦うことを想定していなかった。
ニッサンはJTCCの1996年シーズンに向けて、1995年にフルモデルチェンジを実施したB14型のサニーをベースにしたセダン、2代目プレセアを投入する予定だった。
しかし、当時のJTCCで定番となっていた前方吸気、後方排気のリバースヘッドエンジンを搭載する際に問題が発生。急遽、ニッサンはニスモに開発作業を託し、急ピッチで新車両の開発をスタート。この時にベース車両となったのがP11型のプリメーラだったのである。
シーズン開幕が目前に迫るなかでの車両変更だったため、1996年時点のP11型のプリメーラは、新機軸を盛り込む余裕などはなく、なんとか間に合わせようという開発工程で生まれたマシンとなった。
またこの年、新投入されたホンダ・アコードがシリーズを席巻したため、P11型のプリメーラは、アコード勢が欠場したラウンドで2勝を挙げたのみという結果に留まった。
そして、P11型のプリメーラを投入して2年目となる1997年。この年は、ニッサンとニスモがR390GT1によるル・マンプロジェクトに注力することになったため、車両はニッサン・モータースポーツ・ヨーロッパ(NME)が関係を築いていたレイ・マロックに委託して、製作されることになった。
そして、このレイ・マロックに委託した1997年のスペックでP11型のプリメーラは、ようやくエンジンのリバースヘッド化を果たすことになる。
このリバースヘッド化に際しては、さまざまな問題が多発したが、東名エンジンの手によって、その問題を解決し、車両、エンジンともに大きくポテンシャルアップを果たすことに成功した。
P11型のプリメーラは、JTCCの1997年シーズンで“最強”と思われたホンダ・アコードに肉薄し、通算4勝をマークした。なかでも本山哲駆るザナヴィ・カミノは2勝をマークして、最終戦までタイトルを争った。
最終的にタイトルこそ逃してしまったものの、常勝ホンダ勢に食らいつき、ニッサン・プリメーラ史上で最高のシーズンとなった。
ニッサンは1997年シーズンでJTCCから撤退したため、国内におけるプリメーラの活動は、この年が最後となった。その後、P11型のプリメーラは、1998年と1999年にイギリスツーリングカー選手権(BTCC)で大活躍する。
1998年にマニュファクチャラーズタイトルを獲得すると、1999年にはドライバーズとマニュファクチャラーズの2冠を達成するという快挙をみせる。スーパーツーリングカーの本場であるイギリスで、ニッサンのP11型のプリメーラは、その強さを存分に発揮したのだった。
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