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本当にピットストップしていいのか? レッドブル陣営を襲った一抹の不安……しかし戦略担当ハンナ・シュミッツ決断「メリットが大きいので、そう判断しました」

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本当にピットストップしていいのか? レッドブル陣営を襲った一抹の不安……しかし戦略担当ハンナ・シュミッツ決断「メリットが大きいので、そう判断しました」

 レッドブルの主席戦略エンジニアであるハンナ・シュミッツは、マクラーレンの2台がステイアウトを選択したにもかかわらず、マックス・フェルスタッペンと角田裕毅をF1カタールGPの決勝レース7周目にピットインさせた理由を説明した。

 ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)が接触したことで、F1カタールGPの決勝7周目にセーフティカー(SC)の出動が宣言された。

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 今回のカタールGPは、タイヤの摩耗に関する懸念により、各タイヤセットの最大周回数が25周に制限されていた。そのため、57周で争われる決勝レースは最低でも2ストップしなければならない。そして奇しくもこのSCが出動した7周目という周回数は、2ストップを維持しながら最初にピットストップを行なうことができる、最も早いタイミングの周回数であった。

 当時先頭を走っていたのはマクラーレンのオスカー・ピアストリ。その後方にはフェルスタッペン、そしてもう1台のマクラーレンであるランド・ノリスと続いていた。

 SCが出動したにもかかわらず、マクラーレン勢の2台はピットストップせず、走行を続けること(ステイアウト)を選択。一方でその後方のマシンは、ハースのエステバン・オコンを除く全車がピットストップを行なった。

 マクラーレンのアンドレア・ステラ代表はこの判断について、他の全車がピットインするとは予期していなかったと認めている。またシュミッツも、マクラーレンがピットストップしなかったことで、一時不安に苛まれたようだ。しかし彼女は自身の判断を信頼。それがフェルスタッペンの快勝、ひいては彼のチャンピオン獲得の可能性を高める道を切り開いた。

「レース前、セーフティカー(SC)もしくはバーチャル・セーフティカー(VSC)中にピットに入れるウインドウであればピットインする、そういう計画を立てていました」

 シュミッツはレース後にそう語った。

「だから7周目にSCが出たら、2台ともピットストップさせることを決断しました。2ストップしなければいけないレースであれば、SC中にピットインするメリットは大きいので、我々としてはそうすべきだとハッキリ判断しました。他のほとんどのドライバーも、同じことを考えたんだと思います」

「でもインラップで、『マクラーレンはステイアウトだ!』という声が聞こえてきました。みんな『本当に大丈夫?』という感じでした。『本当にピットインさせるのか?』と尋ねられたので、『私はそうすべきだと思います』と答えました」

「絶対にそれが正しい判断だと思いました。そして他のドライバーもピットインしてくるのを見て、『これで良かったんだな』と思いました。2回目のピットストップに関して全く柔軟性がなくなってしまったとはいえ、その分だけの時間は稼げるというアドバンテージはありました」

 7周目にピットストップを行なったということは、残りの50周を1ストップで走り切らねば2ストップ戦略は成功しない。しかも前述の通り、今回のタイヤセットの最大周回制限数は25周……つまり2回目のピットストップを”32周目にするしかない”ということがここで決まってしまったわけだ。それ以前にピットストップを行なうことになってしまうと、ライバルよりも1回多くピットストップするということが決定してしまう。

 しかしそれでも、2台のマシンを共にピットストップさせなかったという事実は、奇妙とも言えるし、不可解と言ってしまってもいいだろう。レースに勝つためには戦略を分け、1台はピットストップさせ、もう1台はステイアウトさせるという選択もできたはずだ。しかしマクラーレンはそうはしなかった。これはマクラーレンの、ふたりのドライバーを公平に扱うといういわゆる”パパイヤルール”の弊害なのかもしれない。

 マクラーレンは、どちらかのドライバーを優遇したとレース後に指摘されるのを恐れ、7周目にピットストップするという決断を下さなかったのではないかと尋ねられたシュミッツは、こう語った。

「そうかもしれませんね。彼らは明らかにふたりのドライバーを公平に扱いたいと思っています。非常に難しい状況にあると思います。我々は、その状況を利用できる立場にあると思います。だから確かに、彼らにとっては難しい決断になるでしょう」

「しかし、他のドライバーたちに比べて彼らはかなり速いペースを持っています。ピットストップで失ったギャップを埋められることを期待していたのかもしれませんし、最大25周のスティントをこなせるかどうか懸念していたということなのかもしれません。私はマクラーレンの一員ではないので分かりませんが、可能性としてはあり得ると思います」

文:motorsport.com 日本版 Benjamin Vinel
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みんなのコメント

18件
  • wrh********
    レッドブル陣営にとって1番の功労者はヒュルケンベルグでしょ。
    抜きにくいサーキット、抜きにくいマクラーレンという状況にピンポイントの周回でセーフティカーを導入させたんだから。
  • (株)提谷電気
    優秀ですよ。彼女のお陰で勝ちを拾ったレースも
    たくさんあると思う。
    しかし、RBはここぞの時はセカンド切り捨てても
    ワールドチャンピオン取りに行く
    21年のアブダビのペレスのように最後は
    マックスに全員で集中するからリタイヤさせちゃう。
    ユウキのラストランは有終の美を飾れるのか❓
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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