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僅か3年で消えたトヨタ異例の意欲作!! ヴェロッサが儚く散った理由 【偉大な生産終了車】

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僅か3年で消えたトヨタ異例の意欲作!! ヴェロッサが儚く散った理由 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ ヴェロッサ(2001-2004)をご紹介します。

【画像ギャラリー】これはまるでアルファロメオ…!!? トヨタ ヴェロッサをギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:TOYOTA

■21世紀セダンの旗手!!? チェイサー/クレスタの後継として登場したヴェロッサ

 当時のトヨタとしては異例の「デザインも走りもエモーショナルなセダン」を目指して作られたものの、いろいろ中途半端だったせいか、結果として発売からわずか3年弱で消滅したブランド。それが、トヨタ ヴェロッサです。

 バブル景気にのって売れまくったトヨタ マークII/チェイサー/クレスタの3兄弟でしたが、バブル崩壊後は売れ行きが大幅に減少してしまいました。

 そのため1990年代終盤にはさすがのトヨタも3兄弟そろっての継続をあきらめ、2000年にマークIIだけを9代目へとフルモデルチェンジ。

「7代目のチェイサー」と「6代目のクレスタ」は作られないことになりました。

 その代わりとなる「ビスタ店扱いの高級車」として作られたのが、このヴェロッサです。

20世紀から21世紀への変わり目の最中、トヨタはマークIIをベースに小さな高級車やFRのスポーツセダンを積極的に送り出した。プログレ・アルテッツァ・ブレビス…。ヴェロッサはそんななか「人の情感に訴えること」をテーマに開発された1台

 基本となるメカニズムは9代目マークIIと同じですが、ヴェロッサの内外装デザイン、特に外装デザインは、当時のトヨタ車愛好家が驚くほどの別物というか、別方向を向いたものでした。

 フロントマスクはイタリアの「アルファロメオ156」を彷彿とさせるデザインで、前後のホイールハウス付近には独特のキャラクターラインが。

 内装のデザインも「エモーショナルといえばエモーショナル」な感じであり、シルバー調の縁取りがされた楕円形のエアコン吹き出し口や、アルミのフットペダルやフットレストなどが特徴的でした。

サイドビュー。車名の由来はイタリア語のVero(真実)とRosso(赤)を組み合わせた造語。「人の情感に訴えること」とした開発テーマは走りに対しても同様で、特にターボ搭載のVR25はスポーティ度が高い。だが販売は2Lエンジン搭載車に偏り、2.5Lモデルは売れなかった

 搭載エンジンは3種類の直列6気筒で、基本となるのは最高出力160psの2Lハイメカツインカム1G-FE型。

 そのほかに、可変吸気システムを採用して200psを発生する2.5L自然吸気直噴の1JZ-FSE型と、2.5Lインタークーラー付きセラミックターボで280psを発生させる1JZ-GTE型がラインナップされていました。

 それらに組み合わされたトランスミッションは、2.5L自然吸気仕様が5速スーパーECTで、2Lと2.5Lターボは4速のECT-iE。

 ただ、2.5Lターボには5MTの設定もありました。

 その後、ヤマハがチューニングを施したターボエンジンを積む限定車を発売したり、2003年にはマイナーチェンジを行うなど奮闘したヴェロッサでしたが、販売が上向きとなることはなく、2004年4月には生産終了に。

 3年弱のモデルライフを通じての総生産台数は結果として約2万4000台。

 平均すると月販1000台にも届かないという寂しい成績を残して、ヴェロッサは静かに消えていきました。

■わずか3年弱…ヴェロッサが消えた理由とは?

「エモーショナルであること」を目指した意欲作(?)が、人々のエモーション(感情)を刺激することなく短期間で敗れ去った理由。それは、「考え方が甘かったから」でしょう。

 当時のトヨタの担当者や経営陣が何を考えていたのか、筆者は知りません。しかし当然ながら、「こういった感じの南ヨーロッパ調デザインを新型(9代目)マークIIにくっつければ、ある程度は売れるに違いない」と確信していたはずです。

 結果として売れるかどうかは「時の運」にも左右されるものですが、そういった確信なしに、巨額のコストが必要となる「ニューモデル」が開発および発売されることは絶対にありません。

 客を甘く見ていたのかな……としか言いようがありません。

 まず第一に甘く見られたのが、トヨタにとっては大事な大事な存在であるはずの「トヨタ党」の皆さんです。

 この、とってつけたかのようにアンバランスなデザインとフォルムであっても気にならないぐらい、トヨタの車を買う人々は審美眼がないと判断されたのです。

「この程度の“なんちゃってアルファロメオ”でも、一部のお客様は泣いて喜ぶだろう」と甘く見られたのです。

 しかし当時のトヨタ党の皆さんは、当然ですが「審美眼がない」なんてことはありませんでした。その証拠が、「月販1000台すら行かなかった」というヴェロッサの販売成績です。

標榜した「スポーティさ」をこちらも表現したインテリア。当時のプレスリリースには「魅惑的で情感のある外形、室内デザインとし、心高ぶる走りとともに、クルマにこだわりを持つ人の感性を満たす新しい高級セダン」とあった

 そして二番目に甘く見られたのが、当時の「輸入車党」の皆さんでした。

「ちょっとイタリア車っぽい雰囲気にすれば、輸入車びいきの人たちもけっこう買ってくれるんじゃね?」なんていう軽い口調ではなかったでしょうが、しかしそのような考えに基づいて、このデザインは採用されたはずです。

 とんでもない思い違いです。

 確かに、ヴェロッサのフロントマスクはちょっと悪くない感じもしますが、全体のフォルムは明らかにマークIIです。

 別にマークIIが悪いというわけではなく、実直なセダンであるはずのマークIIに、ポンとアルファロメオ風のフロントマスクを付ければけっこうイケるんじゃね? もしかしたら受けるんじゃね? みたいな安直な考えに、腹が立つのです。

 筆者のような輸入車党は、もっとちゃんと「全体」を見ています。何もアルファロメオの「盾」だけを見ているわけではないのです。

 以上、多少言葉が過ぎたかもしれませんが、このような流れでトヨタ ヴェロッサは「トヨタ党にも輸入車党にも響かない車」として、その短い生涯を終えました。

 その後、いわゆるドリ車として人気を博したようですが、それはまた別種のお話です。

「このような車がまたトヨタから登場しやしないか?」と一時は心配に思っていましたが、そんなことはないでしょう。

 今やトヨタは、ヤリスや新型ハリアーなど、決してどこかの国の半端な模倣ではない「オリジナルのエモーショナルデザイン」を堂々と展開しているのですから、筆者ごときのチンピラが心配する必要はまったくないのです。

■トヨタ ヴェロッサ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4705mm×1760mm×1450mm
・ホイールベース:2780mm
・車重:1530kg
・エンジン:直列6気筒DOHCターボ、2491cc
・最高出力:280ps/6200rpm
・最大トルク:38.5kgm/2400rpm
・燃費:9.4km/L(10・15モード)
・価格:337万円(2001年式 VR25 4速AT)

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