魅力的な新車がすぐには納車されない状況。これは悲しい非常事態です
ここ2年ほど、COTYの選考委員としてメーカー主催の試乗会に行くと、必ず尋ねることがあります。「明日、購入契約をした場合、納車は、いつごろになりますか?」という問いです。ほとんどの場合、「即答はできないのですが、正直1年以上は掛かります」という返事が返ってきます。
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日本車も輸入車も同じような状況で、私がクルマを購入するようになった30数年で初めての現象といっていいでしょう。中には納期が2~4年、はたまた受注中止も珍しくありません。もはや人気車種は実質、すぐには入手できないのです。
半導体不足、コロナウイルスの影響、さらには世界の主要港湾の運航スケジュールの混乱、コンテナ輸送価格の高騰などさまざまな要因が複雑に絡み、生産も流通も滞っている状況が背景にあります。
試乗会で新型車の印象を発信しても、「実際は1年から2年は手に入らない」という実態も伝えなければならないのですが、その情報は割愛されている場合が多いのが現状です。
ある日本メーカーの新型車を紹介する映像コンテンツの仕事をさせていただきましたが、そのクルマの人気グレードは納車まで最短でも1年半から2年、という話でした。いいクルマで素直に推薦できるモデルでしたが、複雑な気持ちでコメントせざるを得ませんでした。このコンテンツを観て注文しても納車は2年後か、車検に合わせて、と考えていた方は購入できないかもしれないな、などと考えてしまいました。
いままで年単位の納期、という例はあまり聞いたことがありませんでした。販売店で驚く方が多いのではないでしょうか。ただし、メーカーの広報の方は、「予想よりも販売に影響がない」と胸をなで下ろしていました。納期を聞いて、注文をやめる、というケースは少なく、これに関しては「うれしい誤算だった」そうです。確かに魅力的なクルマでしたら、ある程度は待てるということでしょう。とはいえ、特別なクルマでない限り、2年以上はさすがに待てない、というのが現実で、2年以内の納期を死守する攻防が続いているようです。
しかし、生産している工場の場所(輸入車でいえば国)によっては、注文から数週間で納車できるモデルもあります。同一メーカーのモデルの中でも妙な納期格差が生じているのも昨今の特徴です。その一例がテスラです。自宅の近くに開設された、デリバリー拠点の「テスラ千葉」に先日、寄ってみたのですが、モデル3やモデルYといったエントリークラスは「最短3週間で納車できる」とのこと。一方で上位シリーズのモデルSやモデルXの納期は「わからない」そうです。その違いは3やYは上海工場で生産されており、「生産に滞りはなく、完成車は上海から近い日本に、すぐに持ってこられるから」だそうです。しかしSやXはアメリカ工場(テキサスとカリフォルニア)やベルリン工場で生産されており、ベルリンは欧州市場、テキサスやカリフォルニアは、北米市場へのデリバリーが優先され、「日本はどうしても後回しになる」といいます。そこで中古モデルの紹介をされたのですが、4年落ちで走行距離7万kmのモデルXが1153万円の値付けをされていました。元々価格が高いクルマではありますが、以前は新車が同じような価格でしたので、驚きました。新車が手に入りにくい関係で、中古車価格が上がっているのです。
「好きなクルマ」を購入するという、当たり前にできていたことが難しくなってきています。私は昨年、初めての愛車以来、35年ぶりに中古車を購入しました。前のクルマが走行9万kmに迫っていたため、早急に乗り換えたかったからです。新車をオーダーし、1年以上待っていたら走行距離は最低でも12万kmを超えてしまう計算で、それでは次のクルマの頭金にもなりません。ちなみに、私が購入した1年半落ちの中古車も、新車とほぼ同じ価格でした。このような状態がいつまで続くのか、誰に聞いても答えが返ってこない、というのも、絶望に拍車が掛かります。
最近、新車を購入した、または、しようとした方、どんな状況だったでしょうか。 以前のスーパーカーのように注文後は、取りあえずミニカーを購入して、気長に待つという状況、私は辛いです。
【プロフィール】あんどうひろき/フリーアナウンサー。1967年、神奈川県生まれ、元TBSアナウンサー、現在は独立し、TBSラジオ「UP GARAGE presents GARAGE HERO’s~愛車のこだわり」。TOKYO MX「バラいろダンディ」、MBS「朝日奈央のキラめきスポーツ~キラスポ~」、テレビ東京「ミライの歩き方」、bay fm78「MOTIVE!!」など多くのテレビ、ラジオ番組で活躍。趣味・特技はモータースポーツ、クルマ全般、弓道、スキー。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員
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個人的には、欲しいと思える現行モデルは無いのでどうでも良い感じ。