マツダ、新時代の幕開けを告げる! 2018年末のロサンゼルス・オートショーで世界初公開された新型マツダ3。
これまで日本で「アクセラ」として販売されてきた同車は、“夢の新技術”ガソリン圧縮着火式エンジンの「SKYACTIV-X」を初搭載し、マツダの新世代を担うモデル。新型マツダ3は、北米ですでに発売されているが、このSKYACTIV-Xは今年秋の発売であり、未発売となっている。
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一方、日本ではこの3月から予約受注が開始され、間もなく発売される予定。そこで、今回は一足早くアメリカで期待のニューモデルを試乗。VWゴルフを筆頭に国産車ではスバルのインプレッサやホンダのシビックなど強豪ひしめく激戦区で新型マツダ3は一歩抜きんでることができるのか?
文:松田秀士/写真:MAZDA
ベストカー 2019年3月10日号
新型マツダ3の概要&日本導入モデルは?
筆者は2018年のLAオートショーでワールドプレミアされた瞬間に居合わせ、ここまでやるか! と、半ば呆れるほどにカッコよい「マツダ3」を見つめていた。
試乗会場となったのはLAのウェストハリウッド。ここに用意された5ドアハッチバックは、欧州仕様の2Lマイルドハイブリッドエンジンに6速MTの組み合わせ。一方、4ドアセダンは北米仕様で2.5Lエンジンに6速AT。
日本に導入されるのは、ガソリンエンジンが2Lマイルドハイブリッドと1.5L。そしてガソリンエンジンをディーゼルエンジンのように燃焼させる世界初のSPCCI技術によるSKYACTIV-Xで、こちらは夏頃に追加されるのではないだろうか。また、ディーゼルは1.8Lがラインナップされる予定だ。
>>【日本仕様】新型「マツダ3」は3月にも受注開始濃厚
試乗は欧州仕様の5ドアハッチから始めたが、まずはその5ドアハッチのデザインだ。特に太いCピラーからグラマラスなサイドバックビュー。そしてキャラクターラインを持たないドアまわりの湾曲絵図。これはもうアートの世界だ。実用性がどう? とかは、もうどうでもいい。
インテリアは5ドアハッチ&セダン両モデルともに共通したデザイン。ここからが重要だ。インテリア空間は人が座り移動する重要な空間。ここに新しさや、心地よさがないと購買欲が湧いてこない。
気に入って入居した賃貸マンションも、暮らし始めると飽きがきて引っ越しを考えるようになる。現行アクセラはマツダの世界販売3分の1を占める基幹モデルなのだから、現行モデル所有者に住み替えを検討してもらわなければならない。
またライバル車ユーザーにも不動産屋(ディーラー)に足を運んでもらわなければならない。その意味で、まず外観は客寄せに成功したといえるだろう。
インテリアは「適度な運転姿勢」が美点
では、インテリアはどうか。シートに座るとスッキリした印象だ。ダッシュボードのトップがフラットで余分な突起や切り欠きがない。
車の運転で「見る」ということをボクは重要視する。見やすいダッシュパネルでなくてはならず、見やすいことで疲れにくいインテリアであることが大事。この点において重要なのがドラポジだ。マツダ3はステアリングのチルト(上下)とテレスコピック(前後)の長さをたっぷりとってあるので、ちょうどいいポジションに座れる。
また、膝の裏に隙間ができないように、座面前端の角度を調整できる。マツダが理想とする骨盤を立てて座る工夫が背もたれ下部に施されているのだ。最近はやたら通販で骨盤ケア着衣などが販売されているが、ボクも骨盤をとても重要視しているひとりだ。運転も骨盤を使いこなさなくてはいけない。ペダルの踏み間違え事故が多いのも、これが原因のひとつだ。
このシート、別にサイドサポートの張り出しが大きいわけでもないのに、試乗コースの峠道でもしっかり身体をホールドしてくれる。峠道試乗コースのエンジェルスクレストは深く回り込んだコーナーが多く、横Gがかかりっぱなしになるのだが、不自由を感じなかった。
ハイブリッドの走りは若干非力!?
そのベストなドラポジで6速MTを操作しながら、渋滞のハリウッド市街地へ繰り出した。2Lマイルドハイブリッドエンジンは適度にアイドリングストップを行う。エンジンの再始動にストレスがなく、かかりが早い。
しかもクラッチの繋ぎがスムーズで、発進にそれほど神経を使うこともない。このシステムは24Vのベルト駆動「B-ISG」。つまり、オルタネーター(発電機)を駆動も行うモーターに置き換えたもの。回生で発電した電気エネルギーはリチウムイオン電池に蓄える。
またシフトアップ時には瞬間的に回生を行って、上昇したエンジン回転を強制的に下げ、次のギアにスムーズにシフトできるような制御も行う。実際、峠での頻繁なシフトチェンジがとても気持ちよく決まる。シフトストロークも短めで市街地でも操作が楽しい。
正直、峠の上り坂では122ps/21.7kgmという出力はアンダーパワーに感じる。しかしMAXパワーを絞り出す6000を超える高回転域でも振動感がなく、どこまでも回るストレスを感じさせないスムーズなエンジンだ。
高回転域でもエンジンノイズが気にならないのは室内静粛性が高いこともその一因。NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュ)に関してボディの作り込みは非常に高いレベルだ。980Mpa以上の超高張力鋼板の使用比率が、現行モデルの3%から30%に引き上げられたことも関係しているのだろう。
ハンドリングは「クラス随一の出来」
さて、最後に気になるハンドリングだ。コーナーへの進入で安定感があり、初期操舵から切り足してゆく中舵を超えるあたりまで、実に思いどおりのスムーズなラインがトレースできる。唐突すぎず鈍すぎず。ちょうどよい操舵感覚。
リアサスペンションがこれまでの独立式から左右が繋がったトーションビーム式へと簡素化されているため不安に思っていたが、走るとCセグメントで一番ではないかというハンドリングだ。
これは、フロントのロアアーム前側ブッシュのインナーパイプにバルジ機構を採用し、アームの前後方向の動きを減らすことでよりタイヤにストレスをかけ、タイヤ表面を早く潰れさせて遅れなくサスペンションの上下方向に力が伝達する。つまり、タイヤとサスペンションそれぞれの動きに時間差が発生しにくい構造にしたのが、効果を発揮している。
その構造でリアがこれまでの独立式サスペンションだと、トーインが多くつく傾向にあるため、リア側が粘りフロントがアンダー気味になってしまう。
そこで、リアサスを左右が繋がった剛性の高い形式にしたのだというが、リアをシンプルなトーションビーム式サスペンションとすることで、ここまでハンドリングを進化させることができていることに、ボクは驚きを隠せないでいる。
コーナリング中のロールそのものもとても少なく、しかし硬すぎる足にはまったく感じない。次に乗った4ドアセダンも同じようなハンドリングと乗り心地だが、5ドアハッチモデルがサマータイヤを装着していたのに対して、4ドアセダンはオールシーズン用タイヤを装着していた。この点の違いもあり、4ドアセダンのほうが重量差も含めて少し柔らかめの足に感じた。
パワー自体は186hpあるので2Lハイブリッドより力強く感じるが、ボク個人としては2Lハイブリッドのほうに、より好印象を持った。
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