いまやコンピュータ制御は必要不可欠な存在
現代の自動車は、その発祥以来、ガソリンや軽油を燃料とするエンジン(内燃機関)を動力源とする点は変わらないが、駆動系、走行系も含めた作動に対し、多岐に及ぶコンピュータ制御を多く活用する点が過去の自動車と大きく異なっている。
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逆にいえば、コンピュータテクノロジーなくして、現代の自動車がもつ高性能や使い勝手のよさを確立することは不可能ということなのである。まして、動力系まですべてを電気に頼るEVともなれば、コンピュータ制御は必要不可欠な存在としかいいようがないだろう。
そのコンピュータ、電子デバイスによる本体(ハードウェア)と所定の働きをするソフトウェアの組み合わせにより、意図した目的が達せられることはよく知られるとおりで、日頃使っているPCやスマホを見ても明らかだ。そして、その性能向上、最適化のために行われてるのがソフトウェアのアップデート(最新化)である。このアップデート、ソフトウェアメーカーの製品内容に更新があった場合、随時自動で、あるいはメーカーの通知を受けたユーザーが手動で行うもので、やはりPCやスマホの利用者なら何度も経験していることだろう。
このコンピュータシステムのアップデートが、自動車にも適用される時代になってきた。この動きは世界的な大きな潮流で、日本では、2020年9月にトヨタが運転支援システム「Toyota Safety Sense」の自動ブレーキに関する項目(対象車種:アクア、ヴィッツ、ノア、ヴォクシー他)で、2020年11月にはマツダが「e-SKYACTIV X」搭載モデルのエンジン/ミッション制御に関する項目(対象車種:マツダ3、CX-30)の対策が発表された。それぞれ旧ソフトウェア搭載車を対象としたもので、最新ソフトウェアへのアップデートにより、車両性能、機能の向上を図り、既存車両を最新モデルに準じた状態で使うことができるようにしたものだ。
言うまでもなくユーザーサービスだが、アップデートはメーカー指定の整備工場(ディーラー)に車両を持ち込む方式で、PCやスマホのように、ユーザー個人がネットワークに接続して行うものではない。これほど便利になった世のなか、手順を明確に示したマニュアルがあれば、個人単位でのアップデートも可能なように思えるのだが、わざわざディーラーに持ち込まなければならない理由がいくつかあるのだ。
自身でのアップデートは将来的に可能になるだろう
まず、既存モデルのソフトウェアが、無線ネットワークによるアップデートに対応した内容になっていないことが挙げられる。PCやスマホのソフトウェアは、アップデートを前提として作られているため、ソフトウェアの供給側は新たに進化したソフトウェアを用意するだけで、ユーザー側はアップデート可能な状態となっているのだが、車両搭載の制御システムにはこの機能がなく、データのアップデートが可能な設備を持つディーラーでの作業が必要不可欠となるからだ。
また、現状のアップデートシステムが、国土交通省が定めるサービスキャンペーンの枠組みを使って行われている点も関与する。このサービスキャンペーンというのは、製造車両に安全・環境基準に適合しない(あるいは適合しなくなる可能性がある)不具合が発見された場合、無償で車両を回収し、不具合のある個所の改修、改善を義務づけたリコール制度と同じ枠組に位置付けられたもので、道路運送車両法に照らし合わせたリコール届出、改善対策届出には該当しない領域の商品性、品質の改善措置を行う対策であるからだ。
データ(ソフトウェア)のアップデートを、メーカーによる商品性、品質の改善措置と位置付けているため、所定の資格を備えた工場、人間(つまりディーラーの整備工場)でなければ作業を行えない、という法的な制約の影響を受けるからだ。
実際のところ、OTA(Over The Air)システムの発展、充実化が確実視されている現状で、ユーザー個人による車両制御システムのアップデートは、将来的に可能な方向で進んでいくことは間違いなさそうだが、自動車という大きな運動エネルギーを持つ物体が対象となるだけに、万が一にもソフトウェアの不備が発生するようでは安全上、非常に大きな問題となる。セキュリティの問題も含め、確実なアップデートの方法が確立された時点で、個人によるアップデート作業の方式が可能になるのかもしれない。いずれにしても、自動車はソフトウェアの改善で、車両の性能向上、機能向上が常識化した時代に突入したわけである。
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