初代NSXにも設定されたタイプSの特徴とは?
ホンダ・スポーツの象徴ともいえる「NSX」の生産終了が発表されました。生産終了は2022年12月、それに合わせて全世界350台の限定車「タイプS」を発売することも発表されました。
>>ホンダ NSXのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる
タイプSの詳細は今月発表されるということですが、現行NSXにとって最初で最後の限定車となるタイプSのテーマはパフォーマンスとデザインの追求で、専用マットボディカラーを設定するということがすでにアナウンスされています。
タイプSというグレードは初代NSXにも設定されたことがあります。当時のコンセプトは「ワインディングロードなどでの操る気持ち良さを際立たせる」で、エアコンなどの快適装備はそのままに、約45kgの軽量化、専用サスペンションチューニング、専用デザインのステアリングホイールやシフトノブ、軽量なBBSアルミホイールなどでスポーツドライビングの楽しさを追求しつつ、エンジンには手が入れられませんでした。
今回は3.5L V6ツインターボのパワーアップも期待できる?
第二世代となる今度のタイプSはパフォーマンスアップも宣言されています。それがコーナリング性能だけなのか、それともパワーアップも含むのか、現時点では不明ですが、タイプRと称するほどカリカリのチューニングではないにしても、多少のパワーアップは果たしていることが期待できそうです。
そして、その場合はフロントを駆動するモーターのパワーアップは難しいでしょうから、リア駆動を担う3.5L V6ツインターボのパワーアップが期待されます。ターボエンジンゆえにパフォーマンスアップは容易と考えられるからです。
現代スーパースポーツの開発スピードに着いていけなかった
現行NSXの日本デビューは2016年8月でした。コンセプトの発表は2012年1月で、ずいぶんと待たされた感がありましたが、当初は初代同様に横置きエンジンで開発していたにもかかわらず、開発途中で縦置きツインターボに変更したという裏話があります。
こうしてデビューが遅くなったことで、NSXのスタイリングが時代に対してズレていったのは否めず、販売面では苦戦していたようです。3モーターハイブリッドによる自慢の旋回性能も、続々と新技術が投入されるスーパースポーツの世界ではそれほど目立てなかったのでしょう。
実際、スーパースポーツの世界は初代NSXの頃と二重の意味でスピード感が違います。加速性能や最高速といった文字通りスピードに関するパフォーマンスは、0-100km/h加速で2秒台の競争になっていますし、最高速は400km/hを謳うモデルもあるほどです。
さらに、フルモデルチェンジのペースはどんどん速くなっていて、常に商品性を高めるために限定車や特別仕様をリリースすることが求められます。数台限定の商品企画というのも珍しくはありません。それが可能なのは、多くのスーパースポーツを扱うブランドが小規模で小回りが効くからです。
逆にいうと、ホンダのような規模で常に一線級の魅力を持つスーパースポーツをラインナップするというのは非常に難しいのです。そもそもNSXに期待されるのはホンダという大きなメーカーの持つ信頼性やクオリティであり、そのために必要な工程と、いまのスーパースポーツに求められるスピード感に、そもそもズレが生じてしまっているのかもしれません。
エンジン車全廃を宣言したホンダが目指すスーパースポーツとは?
もちろん、ホンダがNSXの生産終了を決めた背景には、2040年に全世界での販売を100%ゼロエミッション化するという目標に対して、エンジンを積んだスーパースポーツをいつまでもフラッグシップとして掲げてはおけないという事情もあるでしょう。
ひょっとして電動化時代のホンダにふさわしい、たとえば四輪独立モーター駆動を採用した第三世代のNSXの開発が進んでいたりすると、それが今回の生産終了につながった可能性もあります。ちなみに四輪独立モーターのNSXは、実験的には開発されたことがあり、2016年のパイクスピーク(アメリカの伝統的ヒルクライムイベント)でクラス優勝を果たしています。ファンとしてはそうした可能性にも期待したいところです。
なおアメリカ・オハイオ州にあるNSX専用工場における生産能力は最大8台/日と言われています。最後の限定車「タイプS」が350台限定だとすれば、それ以外のカタログモデルを生産する余力も十分にありそうですが、「S660」がそうであったようにファイナル宣言を機にオーダーが集中し、あっという間に生産能力を埋めてしまう可能性があります。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※写真
1~5枚目:NSX 2020モデル
6~11枚目:最終モデル「NSX タイプ S」のティザー画像
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初代の正常進化版だったらよかったのかなぁって思う