■787はラッキーナンバーか?
今年でマツダは創業100周年。戦前に3輪トラックメーカーとして歩み始めたマツダは、つねに独創的な商品を世に出し続け今日に至ります。なかでもロータリーエンジンはマツダのオリジナリティに富んだ高い技術を強く印象付けたエンジンで、その復活を望む声は今でも絶えません。PS4用ソフト「グランツーリスモSPORT」ではマツダがいつか実現したい次世代ロータリーエンジンを搭載しスポーツカーの姿を表現したというバーチャルレースカー「RX-VISION GT3 CONCEPT」も5月に登場したばかりです。そのロータリーエンジンの性能を世界に見せつけた1台が1991年のル・マン24時間レースで日本車初の総合優勝を成し遂げたレーシンングカー「マツダ787B」でしょう。オレンジとグリーンのカラーリングも鮮やかなマシンはマツダファンならずとも記憶に残る名車で、今でもイベントなどでは人気の高いモデルです。
マツダ787、ボーイング787、JR九州787系車両を写真で見る
●PS4用ソフト「グランツーリスモSPORT」には「マツダ787B」の他ロータリーエンジン搭載のバーチャルレースカー「RX-VISION GT3 CONCEPT」も登場した(画像 マツダ株式会社)
そんなわけで自動車ファンやレースファンにとって787といえば即マツダを思い浮かべる人も多いのですが、実は世の中的には必ずしもそうではありません。インターネットで「787」と検索すると圧倒的な数がヒットする別の乗り物が存在します。それは「ボーイング787」という旅客機です。また鉄道の世界にも有名な787が存在します。こちらはJR九州の「787系電車」です。クルマ、飛行機、鉄道、いづれの世界でも成功しているラッキーナンバー“787”はどのような理由で名付けられたのでしょう? 今回はそんな787にまつわるお話です。
■787の名前を持つ乗り物 その1
「マツダ787B」の由来は2代目サバンナRX-7の開発コードから
(写真参照)
●1991年 日本車初のル・マン24時間レース総合優勝を成し遂げたマツダ787B
前述のようにマツダのみならず日本のレース界にとっても輝かしい歴史を持つ「マツダ787B」。その名前の由来は1983年に開発されたプロトタイプカー「マツダ717C」の話にまで遡ります。じつはこのプロトタイプカーを開発していた時期にマツダは量産スポーツカーの開発にも着手していました。それが2代目「サバンナRX-7」(FC3S型)です。この2代目の開発コードは「P747」でした。その「P747」(つまり2代目のサバンナRX-7)の発売が予定されていた年の3年前にデビューが予定されていたプロトタイプカーは数字を3つ(3年分?)遡った717をマシン名として採用したのです。ちなみに参戦したのはグループCジュニアというカテゴリーです。
「マツダ717C」はそれまでは初代サバンナRX-7をモディファイしてレース活動を行ってきたマツダが初めて作った純レーシングマシンでしたが、その名前にはそれまで戦って来たサバンナRX-7とのつながりがしっかりと残されていたのです。
以降マシンのネーミングは新型の開発・投入に合わせて、727→737→757→767→787と進化していきます。マツダ787は1990年にル・マン24時間レースに参戦していますが翌91年はレギュレーション改定のさなかロータリーエンジンの扱いが微妙な時期であったために新型といってもいいほどの大幅な改良を施したにも関わらず797という新しいネーミングではなく、すでに参戦実績のある787の改良型として「787B」というネーミングとなったそうです。
797という新型でエントリーしていたら出場できなくなる可能性すらあったそうです。
結局1991年を最後にル・マ24時間レースではロータリーエンジンの使用が認められなくなりますが、出場できる最後の年に偉業を成し遂げた「マツダ787B」は日本車初の総合優勝を成し遂げたマシンであると同時にロータリーエンジンの最初で最後、そして唯一のウイニングマシンとなり歴史にその名を残すこととなります。
(写真参照)
●4ローターのR26Bエンジンはパッと見てもどこに搭載しているのかわからないほどコンパクトです
ちなみに747がないのは元となったサバンナRX-7の開発コード「P747」と重複するからで、777がないのは「なななななな」が発音しにくいという理由だそうです。かつてマツダは輸出車にマツダ323(日本名 ファミリア)、マツダ626(日本名 カペラ)など両脇に同じ数字を使った名前を使っていましたが、「マツダ787B」のネーミングの起源は量産車の名前ではなく2代目サバンナRX-7の開発コード「P747」に由来するものでした。
(写真参照)
●優勝から29年経った今でもマツダ787B関連グッズの人気は高く種類も豊富です
■787の名前を持つ乗り物 その2
最先端の技術で世界中の空を旅する「ボーイング787」
(写真参照)
●翼端までスラリと伸びた翼が美しいボーイング787
2つ目の787は国内外の空の旅を支える「ボーイング787」(以下「B787」)です。現在世界各国69もの航空会社に導入されてる世界的に見てもとてもポピュラーな旅客機です。日本でもANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)で国内線、国際線ともに運用されていますのでモデル名を意識することなく多くの人が利用しています。
さて、その名前ですが、我々の日常にも馴染み深い民間航空機の部門の他、軍用機や衛星システム、有人宇宙船などを手掛けるボーイングによると、同社のエンジニアリング部署がネーミングをする際には、その製品を数字でカテゴリー分けしているそうです。300~400番台は航空機、500番台はターボエンジン、600はロケットやミサイル、そして700番台は旅客機に割り当てているそうです。最初の700番台として登場したのは1957年(10月にロールアウト)の「ボーイング707」です。そのネーミングに関しては当時のマーケティング部が「モデル700」は聞いた感じが今ひとつよろしくないということで、響きがよく覚えやすい名前として「モデル707」に変更したのが現在も続く「7●7」のはじまりだそうです。ちなみに前者は「セブンハンドレッド」、正式な名称となった後者は「セブンオーセブン」と読みます。
日本国内だけ見ても「B737」「B767」「B777」そして「B787」が現在でも日本の航空会社で運用されています。ジャンボジェットの名で親しまれた大型機「B747」は日本の航空会社での運用は2014年に終えたものの世界的に見ればまだまだ現役で日本へ就航する便もありますので今でも成田をはじめとする主要な国際空港で見ることができます。日本では導入されなかった「B757」も海外ではもちろん現役です。
そんなボーイングの最新鋭機「B787」はじつはとても日本と縁の深い機種です。まず日本のANAが最初に発注をした会社(ローンチカスタマー)として開発当初から関わっており、その意向が随所に反映されています。ANAの国際線仕様機の全てのトイレに温水洗浄機能付きの便座を採用しているのはとても日本的な特徴のひとつかもしれません。
(写真参照)
●従来の航空機の約1.3倍の面積を持つ窓はボタン操作によって透明度を5段階の調整できる電気シェードを装備しています
また機体の約50%(重量比)に炭素繊維複合材を使用し剛性の高い機体になっています。そのため客室内の気圧を今までの旅客機より地上に近づけることができ、機内で耳が痛くなりにくくなっているそうです。同時に湿度も高くなり肌のカサカサ感も低減するなど様々な進化により快適性が大きく高まっています。それまでは飛行機の乗り心地など気にしたことのなかった筆者ですら初めて「B787」に搭乗した時には「アレなんだか快適だな」とその違いにすぐ気づいたくらいです。ちなみに炭素繊維複合材は日本の東レのものです。また、機体の主翼部分は三菱重工業、中央翼部分の製造はスバル、車輪収納部や前部胴体を川崎重工、など日本企業が多数参加しており製造分担率も日本企業が35%と、製造面から見ても日本に馴染みの深いモデルです。
(写真参照)
●左右の主翼の製造は三菱重工、左右の主翼を支える中央翼はスバル、車輪収納部や前部胴体を川崎重工を受け持つなどに日本企業の製造分担率が35%と高いボーイング787
■787の名前を持つ乗り物 その3
水戸岡デザインが冴える九州の特急電車「JR九州 787系車両」
(写真参照)
●水戸岡鋭治氏によってデザインされたJR九州 787系車両
3つ目の787は、JR九州の「787系車両」です。こちらもレーシングカーや航空機に負けず劣らずエポックメイキングなモデルです。1987年、国鉄の分割民営化によりJR九州(九州旅客鉄道)が誕生してから5年後の1992年に特急つばめとしてデビューしました。車両のデザインはその後JR九州の多くの列車に携わる水戸岡鋭治氏。ちなみに「つばめ」という列車名は戦前の鉄道省から戦後の国鉄、JRにいたるまでの高速列車に使われ続けた由緒ある名前で、現在は九州新幹線に引き継がれています。また、全国を走るJRバスのボディには今でもつばめの絵が描かれています。プロ野球チーム東京ヤクルトスワローズのチーム名もこの特急列車の名前にちなんで国鉄スワローズ時代につけられたものです。
さて、日本の鉄道史に名を残す特急列車の名前で華々しくデビューした787系車両ですがその名前の由来はとても事務的なものでした。日本の鉄道の場合地域によって交流電流で走る区間と直流電流で走る区間が混在しているため電車も電流の方式によって2つのタイプに大別されています。国鉄時代から百の位はその電気方式を表していて700番台は交流電車を表しているそうです。また、十の位は電車の種別だそうで、8は特急形とのこと。つまり787系は特急形の交流電車となります。一の位は781系から順番に割り振られたもので数字が大きい方が新しい車両となります。
車両の形式はこれらの数字以外にカタカナが加えられさらに細分化されますがここでは省略します。鉄道の場合、特急や急行なら「つばめ」とか「かもめ」のような名称で呼ばれ、通勤電車なら単に山手線や東北本線のように路線名で呼ばれる事が多いのですが、この787系に関してはこの形式名が車体のいたるところに描かれており、この車両の名前が「787系」であることをいたるところでアピールしています。
(写真参照)
●787 AROUND THE KYUSHUの文字やつばめのマークは車体の随所に見られます
(写真参照)
●車体の外装同様、室内にも787 AROUND THE KYUSHUの文字が配されています
この787系車両を大幅にリニューアルして今秋運行を開始する観光列車「36ぷらす3」の告知では “黒い787 「36ぷらす3」”と、ことさら787系電車を使用することが強調されたコピーが使われています。それほど787系はJR九州にとって特別な車両であるのでしょう。
ちなみにこの「36ぷらす3」は九州をぐるりと巡る観光向け特急列車です。グリーン個室と座席タイプのグリーン席のほか九州の食べ物を用意したビュッフェや乗客が利用できる共有スペースも用意された、JR九州に多く見られる独創的な観光列車の最新版です。昨今話題の高価な豪華寝台列車ではありませんので比較的短い区間でも贅沢な九州の旅を演出してくれる手段として楽しめそうです。また停車駅も多いので鉄道とレンタカーを組み合わせ九州をくまなく楽しむプランを組んでみるのも楽しそうです。
ル・マン24時間レースで世界を制した「マツダ787B」、カーボンをふんだんに使ったボーイングの最新鋭機「ボーイング787」、九州の旅を支えるオリジナリティに溢れた特急列車「787系車両」。その名前はいづれも工業製品らしく過去から脈々と名付けられてきた数字の延長線上にあるもので、さほど特別なネーミングではありませんでした。しかしながら今回紹介した787と名付けられたモデルは偶然にもそれぞれの世界ではとてもエポックメイキングな存在です。
奇しくも同じ名前を持った3種類の乗り物はそれぞれの世界でこれからもその功績が語り継がれてくのではないかと思います。
以上、「787」と名付けられた様々な乗り物にまつわる四方山話でした。
〈文&写真=高橋 学〉
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結果を出したのは787Bな