人気車種のモデルチェンジや季節的な要因などによって中古車の相場は日々動いています。そんな中古車市場で、いま狙い目のお得なモデルはどれなのか。中古車相場にも詳しい自動車評論家の萩原文博さんに聞いてみました。2021年秋の中古車情報として取り上げるのは「コンパクトミニバン」と「コンパクトハイトワゴン」。どちらも広い室内空間とスライドドアの利便性の高さで人気のカテゴリーです。中古車としてはいったいどの車種が狙い目なのでしょうか。
「2強」が市場を分け合う
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現在、人気の国産コンパクトカーやSUVのように、各メーカーが様々なモデルを販売し、群雄割拠のカテゴリーがある一方で、限られた車種が人気を二分しているカテゴリーもあります。今回紹介するコンパクトミニバン、そしてコンパクトハイトワゴンと呼ばれる2つのカテゴリーは、2強と呼ばれるモデルが市場を独占しています。ここでは、実力伯仲の2つのモデルでどちらが中古車でお買い得なのかを紹介しましょう。
販売台数は拮抗していたが、最近はフリードがシエンタより優勢
まずは、コンパクトミニバンです。その名のとおり、全長4.3mというコンパクトなボディに3列シートをレイアウトしたスペース効率に優れたモデルです。リアには利便性の高いスライドドアを採用し、3列シート仕様と広い荷室が特徴の2列シート仕様も用意しているのが特徴です。
このカテゴリーに属するのは、トヨタシエンタとホンダフリードです。この両車の2020年の年間の新車販売台数は、フリードの7万6,283台に対して、シエンタは7万2,689台と非常に拮抗していました。しかし、最新の2021年8月の販売台数では、フリードの5,200台に対して、シエンタは3,351台とやや差が付いています。それでは、コンパクトミニバンのシエンタとフリードについて紹介します。
個性的な外観と使いやすい室内空間がシエンタの自慢
2015年6月に登場した現行型トヨタシエンタはトヨタのミニバンの中では最も小さなボディサイズで、全長4,260mm×全幅1,695mm×全高1,675mmの取り回しの良い5ナンバーサイズとなっています。トレッキングシューズをイメージした外観のデザインは機能性と躍動感を表現。
リアスライドドアは地面から330mmという低いステップ高とフラットな床によって、子供からお年寄りまで誰でも乗り降りがしやすいのが特徴です。
シート位置は後席に行くほど高くなる配置となっているため、どのシートに乗っても窮屈にならず、開放感いっぱい。サードシートはセカンドシート下に収納できるなど、限られたスペースを広く使える工夫が満載です。
シエンタに搭載されているパワートレインは1.5Lガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車と、1.5Lガソリンエンジン車の2種類を設定。組み合わされるトランスミッションはCVTのみ。駆動方式はハイブリッド車が2WDのみですが、ガソリン車には2WDに加えて4WDも用意されています。燃費性能はWLTCモードで14.8~22.8km/Lと優れた数値を実現しています。
安全運転支援システムはレーザーレーダーと単眼カメラを採用した「Toyota Safety Sense」を搭載。緊急時に自動的にブレーキを掛けてくれる「プリクラッシュセーフティシステム」をはじめ、車線逸脱の可能性をブザーとディスプレイで知らせる「レーンディパーチャーアラート」、ヘッドライトのハイビームとロービームを自動的に切り替える「オートマチックハイビーム」がセットになっています。2018年のマイナーチェンジで、プリクラッシュセーフティ機能に昼間での歩行者検知機能が追加され安全性が向上しています。
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コンサバなフリードも室内空間の広さでは互角
続いてはホンダフリードです。現行型にあたる2代目フリードは2016年9月に登場。ボディサイズは全長4,265mm×全幅1,695mm×全高1,710mm(4WD車は1,735mm)の5ナンバーサイズです。個性的なデザインのシエンタに比べるとフリードはコンサバなデザインを採用しています。
フリードはホンダ独自の燃料タンクを運転席下に置く「センタータンクレイアウト」を採用することで、地上からのステップ高を390mmに設定。フロアとの段差がなく優れた乗降性を実現しました。
フリードのサードシートの収納は左右に跳ね上げ式となるため、セカンドシート下に収納できるシエンタに比べると、後方を確認する際に気になるかもしれません。
フリードに搭載されているパワートレインは1.5Lガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムと、1.5Lガソリンエンジンの2種類です。組み合わされるトランスミッションはガソリン車がCVT、ハイブリッド車は7速DCTとなり、燃費性能はWLTCモードで15.6~20.8km/Lとなります。駆動方式はハイブリッド車にも4WDを設定しているのがフリードの特徴です。
安全運転支援システムとしてフリードにはHonda SENSINGが多くのグレードに標準装備されています。「衝突軽減ブレーキ」をはじめ、先行車との車間距離を一定に保ち追従走行する「アダプティブクルーズコントロール」、高速道路などで車線のセンターを走行できるようにサポートする「車線維持支援システム」、アクセルとブレーキを踏み間違えても急発進しない「誤発進抑制機能」など、8つの機能によってドライバーをサポートします。
フリードもシエンタの後を追うように2019年にマイナーチェンジを行い、内外装などを変更しています。
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中古車の流通台数はどちらも豊富
現在、現行型シエンタの中古車は約2,800台流通していて、平均価格は約151万円。価格帯は約60万円~約307万円です。一方、現行型フリードの中古車は約2,200台流通していて、平均価格は約195万円。価格帯は約90万円~約319万円とフリードのほうが高くなっています。
中古車で狙うなら運転支援装備の充実したフリードがおすすめ
シエンタとフリードを中古車で購入するのであれば、オススメはフリードです。ボディサイズや走行性能は互角ですが、運転支援システムは圧倒的にフリードのほうが優位です。高速道路での追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールも装備しており、ロングドライブでもドライバーの負担が軽減されます。オススメのグレードは1.5Lガソリンエンジンを搭載した「G Honda SENSING」です。燃費性能にこだわるのであれば、装備が充実した最上級グレードの「ハイブリッドEX」が狙い目です。
圧倒的に売れているルーミー、新型に切り替わったばかりのソリオ
続いては、コンパクトハイトワゴンです。このカテゴリーでは、トヨタルーミーとスズキソリオが人気を二分しています。元々ソリオが開拓したマーケットにルーミーが参入し、最近では非常に高い人気を誇っています。2021年8月の新車販売台数では、ルーミーが1万347台で第2位、ソリオは2,840台で第19位と差が付いていますが、実力はそれほどの差はありません。それでは詳しく両車を紹介しましょう。
2016年登場ながら売れ行きを伸ばすルーミーにはターボモデルあり
広々とした空間“Living”と余裕の走り“Driving”を掛け合わせた「1LD-CAR(ワン・エル・ディー・カー)」をコンセプトとしたトヨタルーミーは、2016年11月に登場しました。ボディサイズは全長3,700mm×全幅1,670mm×全高1,735mmの5ナンバーサイズです。
リアに電動スライドドアを採用し、ゆったりくつろげる室内の広さ、多彩なシートアレンジなどミニバンの持つ魅力をコンパクトカーに凝縮しました。最小回転半径4.6mという取り回しの良いコンパクトなボディサイズながら、前後の乗員間距離は最大1,105mmを確保し、広々としたリアシートの居住性を確保。
さらにリアシートは、240mmのスライドが可能で、最前方までスライドさせると5人乗車しても、ラゲッジルームには機内持ち込み用スーツケースが4個積載可能です。さらにデッキボードを反転し防汚シートを広げれば、自転車の積み込みもできるなど高い利便性を実現しています。ルーミーは標準車とカスタムの2種類のモデルを用意しています。
ルーミーに搭載されているエンジンは、最高出力98ps、最大トルク140Nmを発生する1L直列3気筒ターボ、そして最高出力69ps、最大トルク92Nmを発生する1L直列3気筒自然吸気の2種類。組み合わされるトランスミッションは、全車CVT。駆動方式は2WD(FF)を中心に自然吸気エンジン車にのみ4WDを用意。燃費性能はWLTCモードで16.8~18.4km/Lを実現しています。
運転支援システムは、デビュー当初は衝突回避支援システム「スマートアシストII」でしたが、2018年11月の一部改良で、歩行者も検知対象とする「衝突回避支援ブレーキ機能」や、夜間での歩行者の早期発見に貢献する「オートハイビーム」など、先進の衝突回避支援システム「スマートアシストIII」を標準装備しました。さらに、2020年9月にマイナーチェンジを行い、内外装の変更に加えて、衝突回避支援ブレーキ機能、衝突警報機能の検知対象に、同じ方向を走っているバイク・自転車などの二輪車と、夜間の歩行者も追加。さらに「全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール」などを搭載し進化した予防安全機能「スマートアシスト」を全車標準装備しています。
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全長を拡大した新型ソリオはマイルドハイブリッドを用意
スズキソリオの現行モデルは2020年11月に登場。モデル体系は先代と同じ標準車のソリオと押し出し感のある外観デザインを採用したソリオバンディットの2種類です。
新開発のプラットフォーム「ハーテクト」を採用したボディサイズは全長3,790mm×全幅1,645mm×全高1,745mm。先代モデルと比べて、全長を80mm(ソリオ バンディットは70mm)延長し、荷室床面長を100mm 拡大したことで、大きな荷室と広く使える室内空間の両立を実現しました。
搭載しているパワートレインは、最高出力91ps、最大トルク118Nmを発生する1.2L直列4気筒エンジンにISGと呼ばれるモーター機能付き発電機と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムと、1.2L直列4気筒エンジンの2種類。組み合わされるトランスミッションは全車CVTで、駆動方式は全グレードで2WD(FF)と4WDを設定しています。燃費性能は、WLTCモードで17.8~19.6km/Lを実現。
運転支援システムは、夜間の歩行者も検知するステレオカメラ方式の衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」をはじめ、誤発進抑制装置などがパッケージ化された「スズキセーフティサポート」を搭載。走行中にステレオカメラが認識した道路標識を表示する「カラーヘッドアップディスプレイ」や長距離移動などの際にドライバーの運転操作の負担を軽減する「アダプティブクルーズコントロール」を一部グレードに標準装備するなど、新しいモデルらしく充実しています。
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中古車も豊富なルーミー、ソリオはまだ少なめで高め
現行型ルーミーの中古車は約1,900台流通していて、平均価格は141万円。中古車の価格帯は約53万円~約259万円です。ルーミーの中古車を購入するのであれば、運転支援システムがスマートアシストIIIとなった2018年11月の一部改良以降がオススメです。
一方の現行型ソリオはモデルが新しいこともあり、中古車の流通台数は約250台と少なめ。平均価格は約194.2万円で価格帯は約130~約279万円とまだ高水準となっています。
新しいソリオの魅力はルーミーを凌ぐ
ソリオはまだ登場から1年しか経過していないモデルだけあって実力の高いクルマに仕上がっています。新開発のプラットフォームに加えて、構造用接着剤の採用、さらにリアサスペンションの最適化などによって安定性とリアシートの乗り心地が向上しているのが魅力です。ソリオは4気筒エンジンを搭載しているので、高回転まで回したときでも静粛性が高いこともルーミーに対してのアドバンテージです。
したがって販売台数ほどの実力差はないどころか、走行性能や燃費性能などを考えるとソリオのほうがオススメと言えるでしょう。狙い目のグレードは流通台数の半数近くを占める「バンディットMV」です。リア左側のパワースライドドアも標準装備されていますし、運転中に視線をずらすことなく情報を得られるヘッドアップディスプレイも装備されているなど先進装備も充実しています。
二車択一だからこそ、人気だけで判断しない
シエンタとフリード、そしてルーミーとソリオ。実力伯仲のモデルだからこそ、本当に自分にピッタリのモデルはどちらかをしっかりと見極めたほうがいいでしょう。人気だからということは確かに重要な要素ですが、クルマの実力や自分の好みの装備や仕様は、人気と関連性はありません。二車択一のカテゴリーだからこそ、しっかりと実力と自分のニーズを見極めることが必要です。
※記事の内容は2021年10月時点の情報で制作しています。
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みんなのコメント
燃費もそこそこサイズも小さいから、裏道でも気を遣わず入っていけるし
サイズの割に室内も広いし荷物も積める、人もそれなりに乗せられるし運転視界も良い