WTCC世界ツーリングカー選手権とTCRインターナショナルが統合し、WTCR世界ツーリングカー・カップに変貌したことを受け、実質的にTCRシリーズの最高峰に位置付けを変えたTCRヨーロッパ・シリーズが開幕。5月4~6日のポールリカール戦はターゲット・コンペティションのドゥサン・ボルコビッチ(ヒュンダイi30 N TCR)がポールポジションから連勝を飾り、週末完全制覇を成し遂げた。
同週末に開幕を迎えたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権と同様に、イベント期間中にTCRシリーズを運営するWSC Ltd.とFIAが最新のテクニカルレポートを発表し、新たなBoP(バランス・オブ・パフォ−マンス)が発動。
予選直前のBoP変更もなんのその。STCC開幕戦でセアト・クプラTCRが表彰台独占
FK8型ホンダ・シビック・タイプR、ヒュンダイi30 N TCRを除く全車両に対し、車高の10mmダウンと、セアト・クプラTCRに対しては10kgの車両重量削減がアナウンスされ、最軽量はプジョー308レーシングカップの1285kg、最重量はアウディRS3 LMSの1335kg、FK2、FK8のシビック勢はエンジン出力97.5%、アルファロメオ・ジュリエッタTCRやプジョー308TCRは102.5%となるなど、大きく戦力バランスが変動する内容となった。
そんななか、26台という数多くのエントリーを集めた予選でポールポジションを獲得したのは、セルビア人のボルコビッチ。彼はオフのトレーニング中に左足を負傷し、ターゲット・コンペティションのマシンに乗り込むのはこのフランスでの週末が初めてという状況ながら、見事なドライビングを披露。
「BoP発動は時期尚早」というパドックの声をあざ笑うかのように、今季から本格デリバリーが開始され、各選手権で猛威を振るうヒュンダイの戦闘力を見せつける結果を示した。
土曜のレース1スタートでも首位をキープしたボルコビッチは、PCRスポーツのミケル・アズコナ(セアト・クプラTCR)をかわして2番手に浮上したチームメイト、ダニエル・ナジー(ヒュンダイi30 N TCR)を従えて快走。
この3台は序盤から後続のマシンを大きく引き離しに掛かると、後続ではポジションごとにバトルが頻発し、4番手争いを展開するジョシュ・ファイルズ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)とスティアン・ポールセン(セアト・クプラTCR)の勝負はクプラが先行。
この2台もまた、その後続となるチームWRTのジャン-カール・ベルネイ(アウディRS3 LMS)、クリス・リチャーズ、リース・バー、イゴール・ステファノヴィスキのヒュンダイi30 N TCRトリオを引き離していく。
3周目にはHELLレーシングカラーで、WTCRの第2戦にもワイルドカード枠で参戦したKCMGのアッティラ・タッシ(FK8ホンダ・シビック・タイプR)がバトル中の接触でピットへ。このコンタクトが引き金となったかのように各所で接触バトルが展開する中、5周目には4番手争いがさらに激化。
ベルネイとバーがサイド・バイ・サイドでマシンを擦り付けるような勝負を見せると、そのあおりを受けヒットされたポールセンがワイドとなり6番手に後退。PCRスポーツのダニ・クロス(セアト・クプラTCR)らも、接触によるダメージからピットでリタイヤを強いられる荒れた展開となっていく。
その混乱をよそに、チームメイトと終始快適なクルージングで12周を走りきったボルコビッチは、新生TCRヨーロッパ初代勝者に。2位ナジー、3位アズコナの表彰台となった。
続く日曜のレース2は、前日から一転ウエットレースでの勝負となるも、リバースポール10番グリッドからスタートしたボルコビッチが、4周目の降雨赤旗中断までに首位ベルネイに次ぐ2番手にまで浮上。
再開後の9周目ファイナルラップでベルネイのアウディに仕掛けたボルコビッチが、マシンを投げ出しながらの防戦を見せるベルネイをかわして劇的な逆転勝利を達成。3位表彰台にはナジーが続き、ワイルドカード参戦を果たしたWTCR第2戦に続く3連続ポディウムを獲得した。
しかしレース後にはBoPに関する疑問や異議がエントラントから噴出。TCRを立ち上げたマルチェロ・ロッティが声明を出す事態にまで発展し、あわせてリザルトに応じて搭載されるコンペセンション・ウエイトの運用に関して、TCRヨーロッパは独自の方式を採用することを決定。5月19~21日開催の第2戦オランダ・ザントフールト戦から、全車半減の50%とすることを決めた。
これはWTCRを含め全TCRシリーズで同様のハンデウエイト運用が定められていたものだが、TCRヨーロッパでは全7戦とシリーズ開催数が少ないことを考慮した判断となっている。
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