トヨタの新型「ヴェルファイア」は、姉妹車である「アルファード」との差別化がポイントだ。世良耕太が違いを解説する!
ユーザーの気持ちを大切に
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トヨタ・ヴェルファイアは2008年にアルファードが2代目に移行するときに誕生した。2002年にデビューした初代アルファードはビスタ店(現ネッツ店)向けにフロントグリルに違いを持たせた「アルファードV」を設定。2代目に移行するにあたり、そのアルファードVがヴェルファイアとして独立したのである。
以後、堂々としつつも上質さを兼ね備えたアルファードに対し、ヴェルファイアは“ちょい悪”のイメージで世間にその存在をアピールした。
しかし、圧倒的な支持を集めたのはアルファードで、先代マイナーチェンジ後のアルファードとヴェルファイアに占めるヴェルファイアの構成比は5%を切っていたという。そんな状態だから、新型を開発するにあたってはアルファードに統合する話がまとまりつつあったそうだ。
そこに異を唱えたのは、他ならぬ当時の社長で、トヨタのマスタードライバーおよびマスターパッセンジャーでもある豊田章男(現会長)だった。
「ヴェルファイアのお客さまこそこだわりが強い。ヴェルファイアを買っていただいたお客さまの気持ちをしっかり大切に」という言葉を開発陣に投げかけたという。
トップダウンで「ヴェルファイアを残せ」とは言わなかった。
開発陣は素に戻り、自分たちがたどってきた道を振り返った。そこでわかったのは、ヴェルファイアを開発するにあたり「アルファードに対して異質なものを作ること」が目的になっていた点だった。アルファードと差別化を図ることを目的化するあまり、本質を見失っていたのである。一体、ヴェルファイアをどういうクルマにしたいのか……コンセプトを明確にして再生することにした。
新生ヴェルファイアを開発するにあたっては、「ヤングアットハートな気持ちを鼓舞する気持ちのいい走りを付与すること」を、目標に、「ドライビングプレジャーを感じる運動性能」と「素直に“カッコイイ”と思える意匠」を与えた。アルファードとヴェルファイアに共通する開発コンセプトは運転する人、後席に乗る人の区別なく「快適な移動の幸せ」を感じられるようにすることだ。
しかし、ヴェルファイアに関しては意図的に、より運動性能に軸足を置いたのである。
徹底した走りへのこだわりその思いは技術にも反映されている。精悍なエクステリアデザインやメッキ加飾、さらには専用色を用意したインテリアの設定で差別化するにとどまらず、高い操舵応答性とタイヤの接地感にこだわるための専用技術を採用し、ヴェルファイアの個性をより際立たせている。
技術面で大きいのは、フロントパフォーマンスブレースを追加設置した点だ。ブレース(補強材)は、ラジエターコアサポートとサイドメンバーを結ぶように設置されている。「小さい(ブレース)ですが、結構効いています」と、開発責任者を務める吉岡憲一は説明した。
「ヴェルファイアのお客さまが好まれる、高い操縦安定性と接地感を実現するたです」とのこと。
ステアリングを切り込んだときに路面からの反力を受けてボディが歪んでしまうと(もちろん、ほんのわずかだが)、その歪みにエネルギーが奪われてしまい、歪んでいる間は曲がる力が発生しない。ある程度歪んでから曲がり始めるため、ドライバーは「反応が鈍い」と、感じてしまう。もちろん、アルファードでもその点は及第点に達しているはずだが、ドライバーがステアリング操作したときの応答性をさらに高めるため、ヴェルファイアではフロントパフォーマンスブレースを追加したというわけだ。
ヴェルファイアは追加したブレースによりフロントセクションの歪みが抑えられ、操舵応答性が高くなっている。さらに、電動パワーステアリング(EPS)やコイルスプリング、ショックアブソーバーを専用チューニング。アルファードは17インチ、または18インチタイヤ&ホイールが標準なのに対し、ヴェルファイアは19インチタイヤ&ホイールが標準になる。徹底した走りへのこだわりだ。
パワートレーンの設定もアルファードとヴェルファイアでは異なる。2.5Lハイブリッド車は両車に設定されるが、ガソリンエンジン車はアルファードが2.5L直列4気筒自然吸気(2AR-FE)とCVTの組み合わせなのに対し、ヴェルファイアは2.4L直列4気筒直噴ターボ(T24A-FTS)と8速ATの組み合わせで、レクサス「RX」譲りのパワートレーンだ。
アルファードの2.5L自然吸気エンジンが134kW(182ps)/235Nmの最高出力/最大トルクを発生するのに対し、ヴェルファイアの2.4Lターボは205kW(279ps)/430Nmを発生。性能差は歴然としている。2.4Lターボエンジンの採用は高い動力性能を求めたからに他ならないが、「走り出しから常用域にかけてのノイズを徹底的に下げた」(吉岡憲一)というから、最高級サルーンとしての分をわきまえた仕立てにはなっている。
WLTCモード燃費を確認すると、2.5L自然吸気の10.3km/Lに対し、2.4Lターボは10.2km/L(どちらも4WD)で、大差ない。ヴェルファイアの2.4Lターボ搭載車は力強くダイナミックな走りが味わえるにもかかわらず、パフォーマンスを考えれば極めて低燃費だ。
アルファードとヴェルファイア、両車とも、運転しても後席に座っても「快適な移動の幸せ」を感じられる仕立てになっているが、どちらかといえばアルファードは後席寄り、ヴェルファイアはドライバー寄りのキャラクターが与えられている。
見た目は堂々としたアルファードに対し、ヴェルファイアは内なる暗黒面を隠そうともせず表現した「ちょい悪のヤバイやつ」(執行役員 デザイン領域領域長サイモン・ハンフリーズ談)だ。「待っていました!」と拍手を送っている人は相当数いるはずだ。今度のヴェルファイアはヒットの予感しかない。
文・世良耕太 編集・稲垣邦康(GQ)
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