■コンパクトカーの概念を覆すために「ヴィッツ」から「ヤリス」に変更へ
1999年に登場したトヨタを代表するコンパクトカー「ヴィッツ」は、2020年2月に日本では馴染みのない「ヤリス」へと車名が変更されました
しかし、同年12月現在では登録車販売台数No.1の座も見えてくるほど販売好調。もともとヤリスはグローバルで使用される車名ですが、日本では認知度ゼロからのスタートともいえます。
なぜヤリスは、ヴィッツ時代から20年築き上げた物をゼロにしても、瞬く間に人気モデルとして君臨出来たのでしょうか。
トヨタ「ヤリス」の気になる部分はどこ? オーナーが感じる「良し悪し」とは
トヨタ「ヴィッツ」は、1970年代から1990年代まで販売されていた「スターレット」の後継車として1999年1月に登場しました。
スターレットは、「パブリカ」のスポーツモデルとして登場していたという背景もあり、スポーツテイストが強めのモデルとして発売されていましたが、初代ヴィッツは曲線をベースにしたデザインと、快適に過ごせる室内空間や機能性を兼ね備えたモデルとして人気を確立していきます。
その人気は国内に留まらず、世界規模で大きな影響を与え、1999年-2000年には日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
この初代ヴィッツの登場により、当時の市場は大きく変化します。販売台数を見ると、登場前の1998年では、1位はトヨタ「カローラ」の19万6498台、2位は日産「キューブ」の10万7857台といった記録でしたが、ヴィッツの登場した1999年では、1位は変わらずカローラの16万677台ですが、その数値に迫る勢いでヴィッツが2位に急浮上し、15万6646台といった売り上げ台数を記録。
このカローラ1位、ヴィッツ2位という構図は、その差が僅差でありながら、翌年の2000年まで続きます。
2000年の8月にはフルモデルチェンジをしたカローラの登場により、2001年にはカローラが23万6507台、ヴィッツが14万2513台と、販売台数に大きく差が開きます。
2002年になると、競合車であるホンダ「フィット」の登場により、ヴィッツは販売台数が5位にまで下がります。
このころから、居住性が高く使い勝手の良いモデルが競合メーカーから多数登場し、この時代はコンパクトハッチモデルの激戦時代となりました。
その後2005年には2代目のヴィッツが登場し、カローラ、ヴィッツ、フィットの順位争いが2008年まで続きます。
2010年には3代目ヴィッツへと進化。2代目と大きく違う点として、トランスミッションにCVTが採用され、当時最先端のアイドリングストップ機能が搭載されました。それにより、燃費性能はJC08モードの燃費は最大21.8km/Lと、優れた数値に変更されました。
こうして現在に至るまで、人気モデルとしてランキング10位台をキープしながら販売台数の記録を維持し続けています。
そして、2020年2月には4代目ヴィッツとしてではなく、グローバル市場で採用されている「ヤリス」に変更して登場しました。
発売されてから1か月後の3月9日の時点で販売台数は3万7000台と、月間販売台数目標7800台の約5倍を売り上げ、2020年1月から6月までの上半期販売台数では4万8129台を記録しており、ランキング4位を獲得しています。
その後も順調に販売台数を築き上げて、2020年の登録車No.1の座も見えてきたヤリスですが、実際のユーザーからはどのような反響があるのでしょうか。
都内トヨタ販売店スタッフは以下のように話します。
「ヤリスはモデルチェンジをしてから、ヴィッツの後継車ではなく新しいクルマとして生まれ変わりました。
ヴィッツからヤリスに変わっても、サイズ感に大幅な変化がなく、そのまま乗り換えるというお客さまが非常に多いです。
ヤリスは安全装備が非常に高まった部分がポイントで、レクサスなどの高級車に装備されていた安全機能がヤリスにも装備されています。
また、アドバンストパークという高度駐車支援システムを使えば、自動でバックをして駐車してくれるという機能もあり、非常に便利です。
安全面に不安があるというお客さまに非常におすすめできるモデルとなっており、今では幅広い層のお客様に支持をいただいています」
※ ※ ※
ヤリスは、クーペ調のデザインと大きく膨らんだリアフェンダーによってスポーティになった見た目と、進化したエンジン、なによりもTNGAプラットフォームを導入することによって、クルマの本質である「走り」への舵を切りました。
スターレットから脈々と受け継がれてきた、「走りを大切にする」という思いが、形が変わってもヤリスに息づいています。
また、販売店スタッフからは、安全装備が進んでいることが、ヤリスが瞬く間に人気を獲得した要因となっているとうかがえます。
■安っぽいコンパクトカーというイメージを大幅に刷新した
ヴィッツからヤリスへと変わった4代目モデル(以下、ヤリス)のボディサイズは、全長3940mm×全高は1500mm×全幅1695mmとなっており、3代目ヴィッツと比べると、全長が3885mmから約60mm長くなっています。
ヤリスのプラットフォームは、「TNGAプラットフォーム(GA-B)」を採用した初のモデルで、運転のしやすさ、優れた操縦安定性、高い燃費性能を実現。
エクステリアは、不必要な加飾を取り除いたシンプルなデザインながらも、躍動感が感じられるスタイリングに変貌。ヴィッツと比べて、シンプルなデザインから強いスポーティさが感じられるような印象を受けます。
インテリアは、「日常に感動を与える上質で心地よい空間」というコンセプトのもと、先代ヴィッツも上質な印象がありましたが、ヤリスについては従来モデルを超えた上質さが感じられるデザインとなっています。
ラインナップは、ガソリンモデル(1リッター/1.5リッター)、ハイブリッドモデル(1.5リッター+モーター)の3種類を設定。それぞれに「X」「G」「Z」と3つのグレードで展開されています。
1リッターガソリンモデルでは、排気量の小さいエンジンにありがちな低速域でのトルクが無い問題を新開発のワイドレンジ小型軽量CVTと組み合わせることにより、低・中速域でもエンジンの効率を最大限発揮し、デメリットを克服しています。
1.5リッターガソリンモデルでは、1.5リッターダイナミックフォースエンジンという、新開発されたエンジンを採用。
高速燃焼技術により、ガソリンを無駄なく効率よく燃やし、低燃費と高出力を両立した新世代のエンジンとなり、WLTCモード燃費は1リッターガソリンモデルが、20.2km/L、1.5リッターガソリンモデルが19.6km/Lから21.6km/Lです。
ハイブリットモデルでは、1.5リッターエンジンにモーターを組み合わせており、WLTCモード燃費は35.4km/Lから36km/Lと、世界トップレベルといえるほどの優れた燃費性能を実現しました。
安全性能は、Bパッケージを除いた全車に、最新の「Toyota Safety Sense」を標準装備。単眼カメラとミリ波レーダー、ソナーを組み合わせて道路状況を察知し、衝突の回避や衝突被害軽減を図ります。
また、高度駐車支援システムの「アドバンストパーク」や、レーントレーシングアシストもセットになっており、高次元の安全性能を実現しています。
新車価格は、ガソリンモデルが139万5000円から212万4000円、ハイブリッドモデルが199万8000円から249万3000円です。
※ ※ ※
また、2020年8月末にコンパクトSUVの「ヤリスクロス」、9月上旬にスポーティモデルとなる「GRヤリス」を発売し、現在ではこの3車種が「ヤリスシリーズ」として展開しています。
2021年も個性豊かなバリエーションを活かし、販売台数を伸ばしていくことが期待されます。
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みんなのコメント
何のことはない、今回から日本でもグローバル車名に統一しただけ。
トヨタによるグローバル量販モデルの常として、クルマの出来・商品力はメチャメチャ高い。
死に体だったり断絶してたりしていたカローラやRAV−4が瞬く間にベストセラーになるのと全く同じ構造で、売れるの当然。
翻って、このクラスでノートみたいな日本専用車投入ではコスパ含めて商品力上がらない、負け筋。
しかもノートのように、日本専用車でありながら日本人好みを徹底追求してるわけでもないモデルは、ほんと愚の骨頂である。