2021年からF.C.C. TSR Honda Franceに加入してFIM世界耐久選手権(EWC)にフル参戦している高橋裕紀。6月12~13日にフランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行われた第1戦ル・マン24時間耐久ロードレースでは初の24時間レース、初の夜間走行を経験した。前編ではEWCに参戦した経緯やル・マン24時間のフリー走行と予選の走行の振り返りを聞いた。
(後編はこちら)
【EWCル・マン24時間】予想外のトラブルや新たな発見。自信がついた多くの出来事/TSRホンダ高橋裕紀インタビュー(後編)
高橋は全日本ロード選手権に日本郵便HondaDream TPから参戦しているが、今シーズンはジョシュ・フックとマイク・ディ・メリオとともにF.C.C. TSR Honda FranceからEWCにも参戦している。
昨年7月に鈴鹿サーキットで行われた4メーカー合同テストではF.C.C. TSR Honda Franceから参加していたが、その時点ではチームに加わることは決まっていなかったという。
「(2020年7月に加入の話は)まったくなかったです。外国人選手を日本に呼べないから、昨年のル・マン24時間の前にマシンの仕様違いをテストするために急きょ招集されました。(加入の話は)年末に言われました」
「藤井(正和)監督に会った時に2021年の話を聞かれて、まずは全日本ロードをしっかりしなければならないと返事をしました。ただ、(TSRホンダは)世界チャンピオンを狙えるチームなので僕の中でもすごく大きくて、日本郵便HondaDream TPのチームやスポンサーから許可を得ました」
「チャレンジしたいと(日本郵便HondaDream TPに)相談して、どこかひとつでも思わしくない返事があればEWCは断ろうと思いましたが、全日本ロードに出れなくなる可能性が出ても後押ししてくれて、自分から藤井さんにお願いしました」
加入が決まった後のオフシーズンは、岡山国際サーキットや鈴鹿サーキットでF.C.C. TSR Honda FranceのホンダCBR1000RR-Rをテストした高橋。3月のル・マンテストでもバイクに慣れるために走行を行ったという。
「まずはバイクに慣れることと(当初予定された)4月のル・マン24時間は寒いので、日本の冬を利用して、寒い状態での走行の練習をするのがメインでした。最初の岡山でのテストは2020年のセッティングのまま乗せて欲しいと要望して、(3月の)ル・マンのテストでも外国人ライダーふたりの方が経験があるし、セッティングはふたりに任せて自分は乗り込みました」
高橋は全日本ロードでも同一のモデルに乗っているが、EWCの耐久仕様のホンダCBR1000RR-Rとは異なる部分があるという。
「大きく違うのは電子制御ですね。全日本ロードはスタンダードですが、EWCはトラクションコントロールやウイリーコントロールなどの制御が異なり、より制御されています。EWCマシンの方が(ライトなど)パーツが多くついている分、重たくはなるけど、パーツが軽量化されていてバイクは軽く感じますね」
「強いて言えば、ジョシュとマイクのハンドルポジションは前で広くなっているので、乗った時の差を少なくするために、逆に全日本ロードのマシンをそれに合わせて乗っていたことはあります」
■4月から6月に延期されたル・マン24時間。フリー走行と予選の印象
当初は4月17~18日に開催される予定だったル・マン24時間。新型コロナウイルスの影響で6月に延期されたため3月のテストから期間も開き、コースのコンディションも大きく変わっていたという。
「3月のテストから4月の開幕に向けての心づもりだったのが6月になったので、3カ月近く開きコンディションも違うし、勘を取り戻したいという思いがありました」とフリー走行の様子を語る。
「マシンはレースウイークになってから細かい部分が変わっていたこともあり、ジョシュとマイクとともに確認を行いましたが、3人で1台だと乗る時間が限られていて、ふたりが確認したものを最後に長めに乗るという感じでしたね。乗れる周回数のなかで、いかに思い出せるかという感じで走っていました」
F.C.C. TSR Honda Franceは予選では平均タイム1分36秒789で総合6番手。高橋は予選1回目に1分37秒944、予選2回目に1分36秒977を記録した。
「目標は1分36秒台に入れたかったですが、ジョシュとマイクにタイムを上げてもらうために、中古タイヤで良いと自分からお願いして、自分が使う予定だった新品タイヤを2回とも使ってもらいました」
「予選1回目は、計測一周目に転倒してしまいました。バイクは少ししか壊れなかったですが、エンジンがかからなかったのでピットまで押して戻り、それで終わると計測なしになるので、スペアバイクにタイヤを付け替えてもらい初日は計測だけしました」
予選では転倒を喫した高橋だが、この転倒の経験がレースに活きることになる。「チームには迷惑をかけましたが、この転倒は僕としては良かったものでした」
「なんとなくいけるだろうという感覚で、1分36秒台を目指して走って少し欲をかきました。このスピードで行くとコーナーで膨らむというのを抑えた瞬間にフロントが切れ、もし決勝中でもできる範囲のプッシュをしたら転びました」
「でも予選2回目は気を付けて、中古タイヤで1分36秒977に入り、自信にもなったので良かったです」
決勝ではブルーライダーのジョシュ・フック、レッドライダーのマイク・ディ・メリオに続き、イエローライダーとして3番目に走行を行った高橋。走行順は決勝当日に伝えられたという。
「(走行順は)チームオーダーなので、決勝日の朝に告げられました。最初の1時間はペースが速いので、初めての自分がスタートライダーに選ばれることはなく、2番目か3番目どっちかだと思っていました」
「マイクが予選2日目に転倒していたこともあり、スタートの自信がない雰囲気だったので、チームがジョシュをスタートライダーに決め、大事な最初の2時間に経験値のあるふたりを入れた感じです」
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