2021年はコロナ禍による緊急事態宣言が続き、ロングドライブの機会になかなか恵まれず、愛車の出番も激減している人も多いだろう。それゆえ、久しぶりに愛車でドライブする前にチェックしたい項目は多々あるが、忘れがちなのがタイヤ。まずは空気圧をチェックして、スタンディングウェーブ現象を防止しよう。
スタンディングウェーブ現象の防止はタイヤチェックから
2021年もコロナ禍が続いているが、地方によってはワクチン接種が順調に済み、クルマでの帰省を考えている人もいるかもしれない。だが、日常的に愛車を運転しているのならまだしも、愛車を久々にドライブするというのなら、運行前点検を入念に行いたい。
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夏という季節柄、バッテリー、ラジエター(設置されているならラジエター前のファンも)、エアコンのコンプレッサーやこれに動力を与えるベルトなどの点検や、室内温度の上昇の抑制が期待できる紫外線や赤外線防止フィルムの貼付や補修も行っておきたい。そして、ぜひ実施して欲しいのがタイヤの点検だ。
通常のロングドライブ前のタイヤチェックといえば、空気圧や、トレッドに挟まっている異物除去、トレッドの溝の深さなどだ。しかし、もし2020年からロングドライブを我慢していたのなら、タイヤのチェックは通常より念入りに行いたい。というのも、「スタンディングウェーブ現象」によるタイヤのバーストが発生する危険性も高まるからだ。
スタンディングウェーブ現象の原因とは
スタンディングウェーブ現象とは主に高速走行時に空気圧低下を要因として発生するもので、タイヤの外側がたるんで波を打つようになることだ。スタンディングウェーブ現象はタイヤを高温にし、バースト(破裂)させ、重大な交通事故を誘発する原因となる。
対策としては、燃料補給の度にタイヤの空気圧点検を行うこと。どんなに低燃費の自動車でも、月に1度くらいは給油するだろう。そのタイミングで空気圧点検を行いたい。ガソリンを必要としないBEV(バッテリー電気自動車)でも、月に1度の空気圧点検を予定しておきたい。定期的な空気圧点検を行っていれば、タイヤの異常を早期に知ることができ、事故を未然に防げるからだ。
愛車がランフラットタイヤを装着しているのなら、ディスプレイに空気圧モニターが設定されているはずなので、異常に気づきやすいはず。法定点検を確実に行い、空気圧モニターが正常に動作するようメンテナンスしておきたい。
タイヤの空気圧低下が発生する原因
スタンディングウェーブ現象を防止するには、前述のとおり定期的な空気圧点検が有効だ。ではタイヤの空気圧が低下する原因とは何か。これは、主に以下の3つが考えられ、しかもこれは日常的に発生する恐れが高い。
1)タイヤから自然と空気が抜ける
2)タイヤを強打することで内部構造が破損し、空気圧を保てなくなる
3)タイヤ外周の亀裂や破損で空気が抜ける
1)について。タイヤは路面と車体の接地点であると同時に、車体を支えている。仮に全輪に均等に車両重量がかかるとすれば、1600kgの自動車ならタイヤ1本に400kgが常に上からのしかかっていることになる。これだけの重量に常に押さえつけられているタイヤがいかに頑丈といえど、ゴムを主な素材とした製品だ。自然と空気が抜けていくのも道理というものだ。
2)について。自動車用タイヤはカーカス(*)という内部構造で空気圧や前述したタイヤへの荷重を支えている。タイヤと路面が接するトレッド面であれば、カーカスはベルト(*)などの補強材によって衝撃から守られるように作られている。
*:カーカスの素材はタイヤによって異なるがポリエステルやナイロン、レーヨンコードなどを主とする。一方、ベルトの素材は主にスチールコードとなる。
しかし、ショルダー部からサイドウォール部は補強されていない。例えば歩道のような段差を越えて駐車場に入る時、タイヤのサイドウォール部を車道と歩道を分けるコンクリートブロックにぶつけると、カーカスが破損することもある。破損したカーカスで空気圧を保てなくなり、その破損部から空気が抜けてスタンディングウェーブ現象を発生させることもある。
3)について。故意にパンクをさせられたり、釘やガラス片を踏むなどしてタイヤの外周に傷がつき、空気が抜けることもある。さらにタイヤを長年使用していると、タイヤに亀裂が入ることもある。タイヤの寿命は、たとえ未走行状態でも3年と言われている。
これはタイヤのゴム部分の中の油分が自然と減り、ゴムの柔軟性を保てなくなり硬化するからだ。どんなタイヤでも走行中はわずに変形するのだが、硬化したゴムに亀裂が入ると、その変形に耐えきれずスタンディングウェーブ現象を引き起こすこともある。走行距離が少なくても、タイヤは3年に1度は4本とも交換したい。(文:猪俣義久/写真:日本自動車連盟<JAF>)
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