近年SUVが大人気だが、根強い人気を誇るのがミニバンだ。しかし、そのなかで、ある変化が起きている。それは、ヒンジドアタイプのミニバンがどんどん姿を消していることだ。
かつては、トヨタ「ウィッシュ」やホンダ「初代オデッセイ」といった人気車がヒンジドアタイプであったが、今や生産終了やスライドドアタイプに変更されている。
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なぜここまでヒンジドアタイプのミニバンは厳しい状況に追い込まれてしまったのか? 自動車評論家の岡本幸一郎氏が、そんなクルマたちの状況を分析する。
文/岡本幸一郎
写真/編集部、HONDA、TOYOTA
【画像ギャラリー】かつては人気車だった! ヒンジドアを採用していたモデルたち
■かつては数多くあったのに… 生産中止が相次ぐ2BOX型
ミニバンブームが最盛期を迎えた2000年代には、現在主流のセミキャブオーバータイプの『箱型』はもちろん、車高の低い『2BOX型』もやがてこれほど衰退するとは思えないほど数多くの車種があったのを読者諸氏も覚えていることだろう。
各メーカーがさまざまなミニバンをラインアップしていたなかでも、その急先鋒だったトヨタは、「エスティマ」に「アルファード/ヴェルファイア」「ヴォクシー/ノア」「ウィッシュ」「イプサム」「マークXジオ」に加えて、ボトムには「シエンタ」を据えた。
ホンダも「オデッセイ」「ステップワゴン」「ストリーム」に「エリシオン」「モビリオ~フリード」を、日産も「セレナ」「エルグランド」「プレサージュ」「ラフェスタ」を揃え、マツダも「MPV」と「プレマシー」に「ビアンテ」を加え、三菱は「デリカ」と「グランディス」、少し遅れてスバルは「エクシーガ」を送り出すなどした。
ところが、当初はそれほどかけ離れていなかった箱型と2BOX型の販売比率が、時間がたつにつれて箱型のほうが圧倒的に売れるようになり、2BOX型の多くが徐々にひっそりと姿を消していった。いまや最後の砦である「現行プリウスα」や「ジェイド」の生産中止も報じられている。
2015年登場したホンダ「ジェイド」。2020年7月に終了することが正式に発表されている
■日本の特殊な駐車場事情がスライドドアに勢いをもたらした
かつてミニバンの人気が高まり始めた頃は、ワゴンの延長上で、いざというときのために2BOX型のミニバンを買い求めた人も多かった。そのなかには、いわゆる『ワンボックス』に対してアレルギーを感じていた人も少なくなく、ドアについても商用車然としたスライドドアよりも乗用車らしいヒンジドアを好む声も小さくなかった。
ところが、ミニバンを買い求める層が求めるのは根本的に利便性であることには違いなく、3列シートがあれば便利だと思って2BOX型のミニバンを買ってはみたものの、思ったほど便利でないことに気がついた人も少なくなかった。
また、時間の経過とともにそうしたワンボックスやスライドドアに対するネガティブなイメージも薄れて、やはり便利さでは圧倒的に箱型が上というイメージが定着した。
箱型ミニバンが人気を獲得したのは車内の広さはもちろんだが、スライドドアによるところが大きい。2BOX型のなかにも一部にスライドドアを採用していた車種がいくつかあり、それを理由に購入を決めたという声は多かったという。それぐらい日本ではスライドドアが好まれるわけだが、実際にも日本で使うにはスライドドアの利点は多い。
それは、まだいたるところに狭い駐車場が存在するからだ。加えて最近は乗用車のサイズがどんどん大きくなり、ただでさえ狭い駐車場で、隣りのクルマまでの距離に余裕がなくなっている。日本のいまの環境がユーザーにスライドドアを選ばせているといえる。
狭い駐車場に停める際に普通のヒンジドアのクルマと違い、ドアを隣のクルマにぶつけるという心配がいらない
スライドドアのほうが後席の乗員がラクに乗り降りできるし、ちょっとした荷物を後席に載せられるのはいうまでもない。ドアの開閉を電動でできるというのも重宝する。さらに、子育て層にとっては、ドア開口部が広く取れるおかげで、後席に装着したチャイルドシートに子供を載せたり降ろしたりしやすい。
デメリットとしては、ヒンジドアよりも開閉に時間を要することが挙げられるが、多くのメリットに比べると微々たるものであり、それを理由に選ばないという話にはならない。
一方で、3列シート車が欲しいが3列目の使用頻度がそれほど高くなく、スライドドアにこだわらないという人は、近年魅力的な選択肢の充実してきた3列シートSUVを選びそう。かくして2BOX型のミニバンは、あまり目が向けられなくなったというのが現状だ。
ホンダ「オデッセイ」は4代目まではヒンジドアだったが、5代目からはスライドドア式に変更(写真は大ヒットモデルとなった初代)
スライドドアに変更された5代目オデッセイ。全高も高くなって、大きく姿が変わった。人気車だったオデッセイも時代の流れには乗った格好となった
■グローバル展開を前提にしたコンパクトカーには違うポイントが
スライドドアがもてはやされるのはミニバンだけでなく、軽自動車やコンパクトカーにも当てはまる。軽自動車は、4大勢力のすべてがヒンジドアのハイトワゴンとスライドドアのスーパーハイトワゴンを揃えており、後者のほうが販売台数は圧倒的に上。
コンパクトカーについては、ヒンジドアのほうがまだ主流という印象だが、ダイハツがトヨタにOEM供給するモデルやコンパクトミニバンの2列シート車も結構な勢いで売れている。
最近ではコンパクトカーと呼ばれるクルマでも、全幅が5ナンバー枠ギリギリのものが多いのに対し、軽自動車ならヒンジドアでも駐車場で隣りのクルマのことをそれほど考えなくても済みそうだが、いずれも共通していえそうなのは子育て層かどうかによるということだ。
軽スーパーハイトワゴンでもスライドドアが大人気だ
子育て層はやはりスライドドアのなかから選ぶ人が多くなるだろうし、まだ単身の若い層や逆に子育てが終わった中高年層で日常の足としてクルマを使うユーザーは、価格的によりリーズナブルなヒンジドアのなかから選ぶケースが多くなると考えるのが妥当だろう。
むろんそのあたりの事情とは関係なく、純粋にデザインや知名度で選ぶ人ももちろん多い。とりわけコンパクトカーの世界では、今でもヒンジドアのほうが圧倒的なのは、グローバルに展開されて世界の競合車と戦うことを視野に入れたモデルの大半がヒンジドアだから。
ガラパゴスな軽自動車とは異なり、グローバル市場をターゲットにしているコンパクトカーではヒンジドアがスタンダードとなっている。トヨタ「ヤリス」もその一台だ
トヨタ「アクア」や日産「ノートe-POWER」のようなハイブリッド車もあれば、トヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」のように話題性の高いニューモデルに対し、日本でガラパゴス的に人気を得たいくつかのスライドドア車よりも魅力的に感じる人がまだまだ多いのは不思議なことではない。
熾烈なコンパクトカーの世界で人気を得るには、スライドドアの有無よりも、いかにキャラを確立したクルマであるかのほうが問われるといえそうだ。
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