日本の道路環境を考えれば全幅1700mm以下の5ナンバーサイズは超使いやすい。だが、年々このサイズのモデルはどんどん減っている状況だ。その筆頭がステーションワゴンで、今新車で買えるのはホンダ シャトルとトヨタ カローラフィールダーのたった2車種と超少ない! そのシャトルですらまもなく生産が終了となるのだ。これから永遠に5ナンバーサイズのワゴンは登場しないのか!? 一体この市場はどうなる!?
文:永田恵一/写真:ホンダ・トヨタ・三菱・マツダ・スズキ
5ナンバーワゴン最後の砦シャトルが終了! もうコンパクトワゴンの時代は終わりなのか
新車で買えるのは2車種だけ! かつてはダイハツ以外の全車がラインアップしていた
5ナンバーサイズのステーションワゴンは派手さや華こそないが、車両価格、維持費ともにリーズナブルなのに加え、使い勝手もいいという便利なジャンルである。
2012年に登場した3代目フィールダー。後継モデルのカローラツーリングは3ナンバーサイズであるためユーザーニーズを鑑みて先代モデルを併売する状況が続いている
現在コンパクトステーションワゴンはホンダ シャトルとトヨタ カローラフィールダーの二強状態である。シャトルはホンダが車種整理を進めていること、カローラフィールダーもモデルの古さなどもあり、両車遠くないうちに現行モデル限りとなる可能性は十分ある。という背景もあり、ここではコンパクトステーションワゴンの将来などを考えてみた。
今から20年ほど前、カローラ級の日本車にはトヨタ カローラツーリングワゴン→カローラフィールダー、日産 ウイングロード、ホンダ シャトルに続くオルティア→エアウェイブ、マツダ ファミリアSワゴン、三菱自動車 リベロ→ランサーセディアワゴン、スバル インプレッサスポーツワゴン、スズキ/カルタスワゴン→シボレーオプトラ(韓国大字製)がラインアップ。ダイハツ以外の日本メーカーは全社ハッチバック的なものを含め、現在のコンパクトステーションワゴンに相当するモデルを揃えていた。
しかし、マツダがファミリアをアクセラにした際にファミリアSワゴンがなくなって以来、15年前の2007年にはコンパクトステーションワゴンはトヨタ、日産、ホンダの三強となってしまった。その後2018年にはウイングロードも絶版となり、それ以来コンパクトステーションワゴンはカローラフィールダーとシャトルの二強となっているのだ。
コンパクトミニバンの台頭が最大の要因! 価格競争力が強すぎた
コンパクトステーションワゴンが低迷した大きな原因は、2000年代初めに登場したストリームやウィッシュといった5ナンバーサイズの乗用車型ミニバンの台頭だ。5ナンバーサイズの乗用車型ミニバンはコンパクトステーションワゴンよりは大きいもの、不便があるほどではなく、3列目シートも十分に使用可能。そして普段は3列目シートを収納すればラゲッジスペースもコンパクトステーションワゴンより広いというメリットが存在した。
5ナンバーサイズ、そしてヒンジドアを持つミニバンが2000年代前半に登場。ステーションワゴンに取って代わるモデルとして大ヒットしたのだ
それでいて2003年の同じ1.8リッターエンジンを搭載するカローラフィールダーとウィッシュの価格は、カローラフィールダーが174万8000円、対するウィッシュは168万8000円であった。なんと車格が上にも関わらずウィッシュの方が安く、これではコンパクトステーションワゴンの低迷も当然である。
現在は同じ1.5リッターガソリン同士で比較するとシャトルは180万8400円、フリード(ベーシックグレードのB)が199万7600円と、適正な価格差となっている。だが、それでもこの価格差ならシャトルより使い出のあるフリードを選ぶ人は多いのだった。
そう考えると今もカローラフィールダーとシャトルが生き残っているのは大健闘とも言え、コンパクトステーションワゴンに大きな打撃を与えたウィッシュやストリームの方が先に絶版となったのは皮肉なことだ。
後を継ぐのは誰だ!? ヤリスベースかプロボックスの乗用モデルの復活はあるか!?
かつてプロボックスには乗用モデルもラインアップされていた。サイズもコンパクト、それでいて積載性もバツグンとあって使い勝手はピカイチだ
コンパクトステーションワゴンは今後どうなるのだろうか。後継車があるとしたら、縮小しているとはいえコンパクトステーションワゴンはカローラフィールダーとシャトルを合わせて2021年に約3万台が売れた、根強いとも言える市場である。市場規模を考えるとなくすのも惜しいところがあるのに加え、直接的な後継車を出せば市場独占である。トヨタとホンダのうち直接後継車を出す可能性があるとすればトヨタだろう。
ヤリスベースのワゴンがラインアップされる可能性も。現行カローラフィールダーと同じ成り立ちで、ヤリスベースでステーションワゴンを造り、長期間売るというのはあるかもしれない。ただ、トヨタはあれだけ売れたプリウスαを大胆に絶版にしたのを見ると、ヤリスワゴンは難しいか?
プロボックスワゴン復活させる可能性も。現在商用バンのみだが、以前は乗用ワゴンも存在。現在のプロボックスをステーションワゴン化するのもいろいろ大変なのだろうが、この手法ならメーカーとユーザーの折り合いのバランスは取れるかもしれない。
カローラツーリングが実質的な後継者か!? 東南アジアモデルの導入の可能性はいかに
対して後継車がなかったら場合はどうか。カローラツーリングをカローラフィールダー後継車にするという考えだ。前席の乗降性の悪さはあるが、フィールダーとの価格差は約20万円、ボディサイズもそれほど大きくないカローラツーリングをフィールダー後継車にするのは極めて順当だ。
東南アジアで超絶ヒットを飛ばしているエクスパンダー。SUVに仕立てたエクスパンダークロスなるモデルもラインアップしており、日本導入を期待したい一台だ
そして考えられるのは、東南アジア向けコンパクト3列マルチパーパスカーを後継車にするのもアリだ。この種のクルマはトヨタ アバンサ、ホンダBR-V、三菱 エクスパンダー、スズキ エルティガがある。BR-Vは全幅が1780mmと大きく矛盾もあるが、低価格で導入されれば、ウィッシュやストリームのようにコンパクトステーションワゴンの代わりになるかもしれない。
ここまで書いたように、コンパクトステーションワゴンの将来は流動的だ。そのため現在のコンパクトステーションワゴンが欲しい人は情報に敏感になり、必要性が強いなら新車が買えるうちに買っておくことをオススメする。
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みんなのコメント
しかし、ミニバンが出てきたことで、同じシチュエーションだけでなく、多人数乗車にも対応できる車になった。走行性能を重要視しない、ほとんどのユーザーにとっては後者を選択する人が増えたという事だろう。
走行性能を重要視しない風潮は、スポーツモデルが少なくなったことからもわかる。
あと、パーソナルユースが増えて、2人+人数分荷物なら、コンパクトハッチで十分間に合う、というのもあるかもしれない。