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小型クロスオーバーに一新 新型スマート#1 プレミアムへ試乗 271psで439kmのEV

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小型クロスオーバーに一新 新型スマート#1 プレミアムへ試乗 271psで439kmのEV

まったく新しいバッテリーEVクロスオーバー

20世紀末に誕生したスマート・フォーツーは、小さなシティカーとして革新的なモデルだった。だが、コンパクトで斬新なスタイリングをまといながら、商業的に成功したとはいえなかった。

【画像】クロスオーバーに一新 新型スマート#1 競合するコンパクトBEVと写真で比較 全127枚

1998年に初代のW450型スマートが発売された時、親会社のダイムラーは、都市がクルマに合わせて設計されると考えていた。しかしそれは実現せず、20年以上にわたって資金的サポートを投じながらも、実際の利益は得られなかったようだ。

販売台数でいうと、BMWが買収したミニの3分の1程度。そんな状況を変えるべく、新型のスマートは思い切って過去を脱ぎ去った。英国での販売は2023年から始まる予定にある。

メルセデス・ベンツやロータス、ボルボの筆頭株主となっている中国のジーリー・ホールディングスは、傘下にあるダイムラーとの共同事業としてスマートを再設計。まったく新しいバッテリーEV(BEV)のクロスオーバー、#1が誕生した。

#1のデザインを進めたのはメルセデス・ベンツで、ジーリー・ホールディングスが開発したSEAプラットフォームをベースとする。製造は中国・西安市の工場で行われる。当面は既存のEQフォーツーやEQフォーフォーも並行して販売されるという。

このモデル名の呼び方は、ハッシュタグ・ワン。シャープ・ワンではないのでご注意を。

グレードは3種類が用意され、エントリー・グレードがプロ+でミドルがプレミアム。トップグレードはブラバスだ。

小さいボディから想像する以上に広い車内

駆動用モーターはプロ+とプレミアムがシングルモーターで271ps。ブラバスは前後2基のツインモーターとなり、総合での最高出力は428psを誇る。

駆動用バッテリーは、ニッケル・コバルト・マンガンによるNMC系のリチウムイオン。容量は66kWhで、急速充電能力はDCで最大150kWまで。一般的なAC充電器ではプロ+が7.4kW、残る2種は22kWまで対応する。

航続距離はWLTP値でプロ+が418km、プレミアムが439km。ツインモーターのブラバスでは、399kmが主張される。

#1はスマートとしては過去最大のモデルだが、市場全体で見ればコンパクトな部類に入る。全長は4270mmで、ミニ・カントリーマン(クロスオーバー)より27mm短い。

スタイリングは過去のスマートに影響を受けたというが、無限ループのようなテールライトの形状はメルセデス・ベンツEQAやEQBをイメージさせる。面構成は有機的だ。

小さめのボディサイズから想像する以上に、車内は広い。特に頭上空間には余裕があり、リアシート側にも大きな大人が問題なく座れる。荷室容量は313Lと小さめ。フロントのボンネット内にも15Lの収納がある。

インテリアのデザインはスタイリッシュだし、素材にも高級感がある。エアコンの送風口は金属製で、色が変化するLEDライトが内蔵されている。

活発な動力性能と優れたシャシー設計

インフォテインメント・システムの使い勝手はいまいち。ボルボはグーグル社のアンドロイドがベースのシステムなのに対し、スマートの方はジーリー・ホールディングス傘下の企業が開発した、独自システムが実装されている。

メニューにキツネのキャラクターが登場するのが特長のようだが、試乗車のソフトは未完成だった。直感的な操作は難しく、英語表記には間違いも。アンドロイド・オートやアップル・カープレイを用いた方が良いかもしれない。

一方で、ハードウエアはかなり高性能。CPUはアメリカのクアルコム社製らしく、動作は非常に素早い。12.8インチのタッチモニターも高精細だ。

新しいスマートで、1番強い印象を受けたのがドライビング体験。車重は1788kgもあり、既存のEQフォーツーの約2倍重い。しかし活発な動力性能と優れたシャシー設計で、とても軽快に走ってくれる。

多くのBEVと同様に、発進加速は鋭い。アクセルペダル操作への反応も機敏で、トランスミッションの変速がないため、スムーズにスピードを増していく。

速度上昇とともに勢いは鈍るものの、約100km/hまでは充分な加速を続ける。120km/h以上では息苦しさが伴い、180km/hへ設定されたリミッターへ到達することは難しそうだ。

一貫性を感じにくい操縦特性

ドライブモードは、エコとコンフォート、スポーツから切り替えられる。加減速のマッピングと回生ブレーキの強さ、ステアリングホイールの重み付けが変化するものの、アダプティブダンパーではないため乗り心地は変わらない。

回生ブレーキの強さは任意でも2段階から選べるが、惰性走行はできない。アクセルペダルだけで発進から停止までをまかなうワンペダル・ドライブも可能とうたわれるが、減速感は想像より弱い。スポーツモードでは、下り坂で完全に停止できなかった。

ブレーキペダルの感触は良い。摩擦ブレーキがシームレスに働いてくれる。

全体的な操縦特性には、もう少し一貫性が欲しい。アクセルペダルを傾けてから、0.2秒前後の遅れを挟んで駆動用モーターが反応。急な加速力が、ワンテンポ遅れてやって来る印象だった。

ステアリングホイールは、バネで戻されるような手応えが強め。反応もリニアではなく、切り始めでは鋭く向きを変えるものの、その後は鈍くなっていく。カーブでのボディロールも小さくない。

ブラバス以外は後輪駆動だが、アンダーステア傾向でもある。転がり抵抗の小さい、コンチネンタル・エココンタクト6というタイヤも影響しているのだろう。

ちなみにトラクションコントロールは切れるものの、駆動用モーター自体のトラクション制御が働き、パワーオンでテールスライドさせることはできない。それを試す人は限られると思うが。

クルマ全体としては悪くはない

新しいスマート#1の価格は、フランスではプロ+で約3万5000ユーロ(約483万円)からになるようだ。パノラミック・ガラスルーフにヒーター付き電動シート、パワーテールゲートが標準装備だから、競争力はある。

プレミアムには、アダプティブ・マトリックスヘッドライトにワイヤレス・スマートフォン充電機能、ビーツ・エレクトロニクス社のサウンドシステムなどが追加される。内容は悪くないものの、英国価格はMGモーターのMG4より高くなると思われる。

納車が始まるのは2023年後半ということで、スマート#1は更に磨き込まれると考えて良い。今回の試乗の限り、まだ手をかけるべき余地が細部に残っている。クルマ全体としては悪くはないだけに、最終仕上げへ期待しよう。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万8000ポンド(約627万円/予想)
全長:4270mm
全幅:1822mm
全高:1636mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.7秒
航続距離:439km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:1788kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:66.0kWh
急速充電能力:150kW
最高出力:271ps
最大トルク:34.7kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション

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