2022年夏頃のワールドプレミアが確定的な新型日産エクストレイル。兄弟車である北米版ローグには2022年から新世代1.5L 直3ターボが設定されたが、欧州ではすでに同系のエンジンが発電を担う新世代e-POWERモデルの存在を明らかにされている。日本を代表する本格派SUVは果たして、これからどんな進化を遂げることになるのだろうか。
欧州の「目」が肥えたドライバーたちを満足させるための「リニアチューン」
新型エクストレイルに搭載される予定の新世代e-POWERで注目したいのは、まずは欧州のクロスオーバー市場で人気の「キャシュカイ」から採用が始まった、という事実だ。当然、日本人以上にクルマの走りにうるさい欧州のドライバーたちに向けた、新たな趣向が凝らされている。そのコアとなっているのが、新しいターボエンジンと電気モーターとの協調における「絶妙な塩梅」だと思う。
欧州で人気の日産「キャシュカイ」。世界で500万台以上販売されているのになぜ日本で売らないのか
こと走りの味付けに関しては、既存のハイブリッドユニットたちと比べてより優れたダイレクト感やリニア感、スムーズな運転体験にこだわっているという。それを可能にしたのが、エンジンの可変圧縮化と「リニアチューン」と呼ばれるシステムだ。
発電を担う新開発の1.5L 直3ターボエンジンは、最高出力156psを発生。これまでノートe-POWERに搭載されていた1.2L 直3 NAエンジン(82ps)に比べて大幅なグレードアップが図られた。
このエンジンの最大の特徴が、可変圧縮機構を備えていること。コンロッドに代わるアクチュエーターによってピストンストロークの長さを制御し、8:1~14:1の間で圧縮比を変化させる。この制御量を決めるもっとも大きな要素は、バッテリーの充電状態だ。
充電量が十分にあって一定速度で走っている時など運転負荷が低い状態では、圧縮比を高めて燃焼効率を向上、ガソリンの消費を減らすことが可能になる。一方でバッテリーを充電しなければならない時など負荷が増えてくると、エンジン出力を最大限化するために圧縮比が下げられる。
そうした、負荷の状況に応じて自在に効率を最適化できる可変圧縮ターボの特性は、シリーズハイブリッドの「心臓」としては非常にマッチしていると言える。
圧縮比の変化そのものはシームレスに行われるのだが、実は課題もある。変化するエンジン回転数とクルマの速度変化とがマッチしないことで、ドライバーや乗員が違和感を覚えてしまう可能性があった。確かに、エンジン回転数ばかりが上がっていっこうに加速しないようでは、ストレスがたまりそうだ。
そうした違和感を払拭するために開発されたのが、「リニアチューン」と名付けられたe-POWERの新たな機能だ。イギリスとスペインの日産テクニカルセンターヨーロッパのエンジニアたちが着目したのは、エンジンの回転速度の上昇感だったという。その制御を熟成させることで、回転速度と実際の加速感やエンジンサウンドの盛り上がりを、フィットさせることに成功したのだった。
「ワンペダルドライビング」をより自然に楽しめる「eーPedal Step」
もうひとつ、新しいe-POWERにはこれまでリーフなどで使われていた「e-Pedal」とは異なるワンペダルドライビングのシステム「e-Pedal Step」が採用されている。
もっとも、アクセルペダルの開閉を調整することで加速と減速を操ることができる点は、従来のシステムと大きな違いはない。市街地ではブレーキペダルとアクセルペダルを踏みかえる必要がなく安定した操作性を生むとともに、クルマとの一体感をより強調するのがワンペダルドライビングとして共通する醍醐味のひとつだ。
加減速Gの調整は、走行シーンに応じて非常に緻密に制御される。高速走行時は減速の度合いが小さく抑えられるので、アクセルのオン・オフに気を使う必要はない。雪道などの滑りやすい路面では、タイヤのスリップ状態を検知して回生の強さを加減、ブレーキペダルを踏むよりもスムーズで安定した減速を可能にしている。
e-Pedal Stepとしての明らかな特徴は、アクセルを完全にオフにした時、e-Pedalのように減速→完全停止→停止保持する機能が備わっていないことにある。
e-Pedal Stepではブレーキランプが点灯する0.2Gで減速されるが、完全停止することなく極低速状態ではクリープ走行となるのだ。そのため最終的には、ドライバーがブレーキペダルを踏まなければ停車しない。こうした新しい制御には、駐車場などで停車位置の微調整を容易にするメリットがあるという。
ちなみにワンペダルドライブの制御も含めて、キャシュカイに採用された新しいe-POWERには3つのドライビングモードが設定されている。デフォルトの「スタンダード」では、加速感とともに減速感についても、ガソリンエンジンのフィーリングに近い感覚をシミュレートするように調整されているという。
「スポーツモード」ではエンジンによる発電をより積極的に利用することで、パワフルな加速を実現。強力な電気モーターの魅力を最大限に堪能することができる。高速走行時に向いている「エコ」ではバッテリー管理を最適化、コースティングによって電力消費を抑える方向に制御される。すべてのモードで、アクセルオフ時のエネルギー回生量を増やす「Bモード」を選択することが可能だ。
さらなる高みに至るための新たな「インテリジェント4×4」技術
これまで見てきたとおり新世代e-POWERは、ことドライバビリティという魅力についてはそうとう期待して良さそうだ。
単純に電気モーターのスペックだけで比べてみても、オーラ e-POWER(2WD)が最高出力136ps/最大トルク300Nmだったのに対して、キャシュカイe-POWER(2WD)はそれぞれ188ps/330Nmに向上している。車格の違いを考慮しても、さらなるハイパフォーマンスが予想できる。
環境性能についても、優れていることは間違いない。キャシュカイe-POWERはまだ認証申請の段階ではあるものの、総合燃費は18.9km/L、CO2排出量119g/kmと公表されている。英国仕様の1.3L 直3 MHEVターボモデルがそれぞれ15.5-15.6km/L、144-146g/kmであることを鑑みれば、エミッションの優位性は明らかだ。
加えて、エクストレイルの新世代e-POWERには、キャシュカイに現状設定されていない4WDモデルがラインナップされることにも着目しておきたい。
オーラe-POWERの4WDモデルでは68ps/100Nmのリアモーターが追加されていたけれど、エクストレイルの4WDは日産の最新4輪制御技術を盛り込んだ「e-4ORCE(イーフォース)」となる。
モーターによる加速、回生、ブレーキの制御まで含めた加減速トルクの協調制御は、路面コンディションを問わない抜群のドライバビリティを実現しているとのこと。ともすればフル電動化までの「中継ぎ」的な立ち位置に思われがちなハイブリッドだが、その可能性はまだまだ無限大なのかもしれない。
「つながらない」からこそつながる未来が、もしかするとあるのかも
興味深いことに欧州向けの新しいe-POWERのリリースでは、「外部から充電する必要がない=つながない」ことをそのメリットのひとつとして強くアピールしている。「外部から充電できる=コンセントにつなぐ」ことの優位性を謳うPHEVやバッテリーEVといった、電動化におけるライバルたちに真っ向から勝負を挑んでいるかのようだ。
確かに、欧州だけでなく日本でも、充電環境を整えるのが難しい自動車ユーザーはけっして少なくない。つながることでそのメリットが初めて享受できるプラグインモデルが増えてくれば一方で、充電スポット渋滞といったこれまでになかった課題も表面化してくることだろう。
エンジンを最大限効率的に使って自家発電した電気によって、どこまでもスタンドアローンで走り続けることができるe-POWERは、そういう意味ではより実用性に富んでいる。そして普通の人が「マイカーの電動化」に向かう道としては、よりリアリティがあるように思える。
たとえば将来、次世代バイオ素材をもとにしたカーボンニュートラルな燃料が本格的に実用化されたなら、e-POWERのようなシリーズハイブリッドの技術はさらに、面白いポジションに立つことになるのかもしれない。
新型エクストレイルe-POWERはある意味、その重要な試金石となるような気がする。大いに期待しながら、日本上陸を待ちたいものだ。
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みんなのコメント
もう、新型という感じしないなぁ
キックス同様、古モデルの流用になるの?
しかしー、現行モデルも、長いね
日本は未来よりも古きを大切なのね、日産
日本向け本当に待ちわびました。
顔のエンブレムはAURAと同じニューデザインでお願いします。
”車は顔が命”です。