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強烈な速さをどこまでも優しくソフトに表現するルノーのハイパフォーマンスモデル「メガーヌR.S.」

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強烈な速さをどこまでも優しくソフトに表現するルノーのハイパフォーマンスモデル「メガーヌR.S.」

2018年のデビューから3年、走りの本質的な楽しさを高いレベルで表現してきたハイパフォーマンスモデルの「メガーヌ ルノースポール」がマイナーチェンジ。エンジンを始め、パワーアップしたパフォーマンスは、果たしてどんな味わいになっているのだろうか?

気が付くと別世界の楽しさと共にいる。

奥が深い!?アウディ車に採用されている「典型的なステアリングフィール」とは?

1980年代、ル・マン24時間レースに魅せられ、しばらく通ったことがある。あの独特の雰囲気とゴールを迎えて時のなんともいえない充足感や感動は、少々オーバーに言ってしまえば「人生にも似たり」であり、哲学的な思考すら抱かせてくれた。そして幸いにもマツダ787Bの総合優勝にも立ち会うことが出来た。

実はこうして通い続けることが出来た理由はもうひとつあった。ホテルの宿泊は、ル・マンウイークには高騰する。そこで私はコーディネーターから、ル・マン市郊外の一般家庭を紹介して貰い、ホームステイすることにした。ご主人はフランス版新幹線TGV関連の仕事をする人で、とても話好きだった。借りたのはパリの大学に行っている長男の部屋で、少し狭いがとても快適だった。隣の部屋には中学生の妹がいた。彼女も初めてのアジア人、年齢不詳の当方に、興味津々である。もちろんやり取りは片言の英語だが、ボディランゲージでも思いの外、通じるものである。初日の夜、バスタブにお湯を張ったことでボイラーが空になった、とお母さんに叱られたこと以外、個人的にはまったく嫌な思いをしなかった。

さらに2日後、ツアーの通訳もそこに同宿すると、ファミリーの興味が炸裂し、通訳を通して日本のことから家族のことまで、どんどん聞いてくる。よく「フランス人は理屈っぽい」などと言われことがあるが、むしろ、「話好き」がとても多いことが分かった。それは相手を出来る限り理解したい、そして自分のことも分かって欲しい、という強い思いがあるからだろうと、そう理解するのにそれほど時間は要らなかった。

自己主張もするが、相手のことも認める。そのために理屈っぽく取られるような話もする。そんな押しつけがましくないフランス人とは、結構気が合うと思ったのだ。さすがにジャポニズムがもっとも早くから花開いたフランスだけのことはあると思うと、間口の広いフランスはとても居心地が良かった。

以来、フランス車に乗ると必ずと言っていいほど、あの家族のことと、フランス人はどうしてこのクルマを作ったのだろうかと、どんな楽しさや幸福をもたらしてくれるのだろうかと考えるようになった。

もちろん、デビューから3年目を迎えたマイナーチェンジによって、切れ味を増した「メガーヌRS」のステアリングを握ったときにも、色んな部分でことあるごとに「なぜだろう」と考えながら走った。

最高出力が従来の279PSから300PSに引き上げられたという。当然速さのためだろうが、これまでも十分なのになぜさらに? アクセルを踏んで走り出すと、クルマがちゃんと、その理由に答えてくれる。良く出来たターボエンジンらしく、高回転までより強力に、どこまでも伸びやかに回っていく。その気持ち良さと実質的な速さが向上していて、もっと楽しくなっていた。ただ単に数値的な向上ではなく、ちゃんとドライバーがどう感じるかを考えながら、速くなっていた。

さらに少々硬くなった足回りである。がっしりとした、緩さなど微塵も感じさせないほどのボディ剛性に、モータースポーツで培われた技術によって裏打ちされたセッティングのサスが取り付けられている。当初、かなり硬く感じた。ハードさが目立った印象だったが、少し走ると、その極上のオンザレール感が、心地よさと楽しさに変化するのにそれほどの時間を要しなかった。気が付くと、そこにあったのは極上ともいえる楽しさだった。

しかし、これほどまでに速いホットハッチであるにもかかわらず、押しつけがましくなく、どこかほのぼのとしていて優しい。ドライバーの体調やメンタルにまで気を遣ってくれるような思いやりのようなものを感じる。そして「なぜ、こうした仕上げにしたのか」をちゃんとかみ砕くように理解させてくれる。一見、理屈っぽいのだが、それはフランス人が時折見せる“話し好き、論議好き”の表情と同じようなもの。超一流のパフォーマンスを備えながらも、ほどよい距離感を保ちながら、とても心地のいい友達となっているのだ。

今年初めのルノー、日産、三菱のアライアンスによる会見でも分かるが、一層のEVシフトが進むことになる。この素敵な友人との出合いは、今を逃すと無いかもしれない。なぜか急にこれまで以上に愛おしくなってしまうのである。

「DASS」という改良されたフロントマクファーソンストラット・サスペンションを採用。硬さもあるが、路面に吸い付くような運転感覚は癖になりそう。

4コントロールという名前の4WS(4輪操舵)も備わり、コーナリングでの安定感を高いレベルで確保している。

ハイパワーモデルのある押し出しの強さは少ない。そこには確固たる理論があり、加飾を由としないような表情を見せる。

前後とも19インチの同サイズタイヤを装着。

運転支援システムが充実。アダプティブクルーズコントロール、歩行者検知機能付きの衝突被害軽減ブレーキも備わった。

シートバックのホールド感が極上のレベル。同時に座り心地も良く、ロングドライブも裕感は少ない。

メガーヌの最強モデル、R.S.トロフィーと同じ300馬力を発生するターボエンジン。

(価格)
4,640,000円(税込み)

<SPECIFICATIONS>

ボディサイズ全長×全幅×全高:4,410×1,875×1,465mm
車重:1,480kg
駆動方式:FF
トランスミッション:6速AT
(エンジン)
排気量:1,798cc
最高出力:221kw(300PS)/6,000rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/3,200rpm
問い合わせ先:ルノー・コール 0120-676-365

撮影/篠原晃一

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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