これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、小さなボディに高級車のすべてを詰め込んだスモールセダン、プログレを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】和製小ベンツ!? トヨタが本気で作った小さな高級車[プログレ]はなぜ売れなかったのか?
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
【画像ギャラリー】特異なデザインとコンセプトで高級車ファンをアッと言わせたプログレの写真をもっと見る!(6枚)
見栄えだけにとらわれず中身を磨き上げて高級感をアピール
クルマは移動手段としてだけでなく、社会的な地位を反映するステータスシンボルでもあることから、一般的にクルマはボディサイズが大きくなるほど上級に分類される傾向があり、それは世界的にも共通した事実である。
1998年5月に登場したプログレは、そうした定石を打破するべく開発されたモデルで、プラットフォームを共有する10代目クラウンよりも全長を300mm短く設定したミディアムクラスのボディサイズとしながら、性能と品質、品位とゆとりの室内空間を実現した革新的な4ドアセダンとして話題を集めた。
全長は5ナンバー規格上限の4700mmよりも200mm短く、全幅は1700mmに設定されていたが、ホイールベースは上位のモデルに匹敵する2780mmとしたことで、室内長1950mm、幅1465mm、高さ1165mmというビッグキャビンを実現していた。
プログレのために提案された新たなパッケージに、当時の最新技術を結集したプログレを、トヨタは自ら「小さな高級車」と称していた。
ボディサイズはトヨタの大衆車として人気を博していたコロナに近いが、重厚かつ斬新なフォルムは独特の存在感を主張しており、コロナよりも明らかに上級であることを実感させる。
数多くのセダンモデルをラインナップしていたトヨタの新世代ミドルサルーンとして1998年に誕生。2007年まで販売された。車名は「進化・進捗」を意味するフランス語から
白色ターンランプ一体のロービームと、フード面に埋め込んだ印象の丸型ハイビームを組み合わせた個性的な異型4灯式ヘッドランプと調和を図ったフロントグリルがもたらす味わいのあるフロントビューは、高級車らしい押し出しの強さを表現。
また、車両後端の見やすさに配慮しながらも、上質な造り込みの面とシャープなキャラクターラインの立体感ある造形に、完全素通しアウターレンズとカットを施したインナーレンズを組み合わせたクリスタル感あるコンビネーションランプを配することで高級車らしい品格を漂わせている。
運転席まわりは、伸びやかな線と張りのある面で構成しながら、優れた機能性と高品位を融合した落ち着きのある空間としている。
インストルメントバネルやドアトリム、センタークラスターといった乗車中つねに目にする部分には、日本人の感性にマッチする木目調パネルを配置。ウォールナットパッケージ車では、模様のつながりにまで配慮した本木目をプラスし、さらにターンシグナルレバーとワイパーレバーには、ムク材から削り出した本木ノプを採用した。
さらに、乗員が直接触れる機会の多いステアリングホイールやシフトレバーノプには柔らかな触感の本革を配したほか、ウォールナットバッケージ車では本革と本木目を用いるなど、見て、触れる部分への作り込みにこだわることで、高品位な室内を演出していた。
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最高級サルーンをドライブしている感覚が味わえる
高級車の片鱗は見た目だけにとどまらない。パワーユニットは、直6の3.0Lと2.5Lエンジンを搭載。いずれも街なかで多用する低・中速領域の特性を重視のセッティングが施され、発進時から感じさせるゆとりが高級車らしさを実感させた。
エンジンやバッテリー、燃料タンクといった重景物を車両の中心に近づけることで、ヨー慣性モーメントを減少し、加えて全長に対しホイールベースを長めに設定した新開発プラットフォームが功を奏して、操舵に対する優れた応答性と収束性を確保。
4輪ダプルウィッシュボーンサスペンション、高剛性ボディの採用。さらに素直なステアリングフィールを実現し、加速時のトラクション効率を考慮したFRレイアウトとしたことも相まって、高級車にふさわしいしなやかで落ち着きのある乗り心地を味わわせた。
フロントサスペンションのタイヤ切れ角を確保することで最小回転半径は5.1mとし、混雑した街なかでもスマートに扱えた
快適性についても高級車としては高い水準の能力を有していた。エンジンやサスペンションなど、振動や騒音の発生源となる部位に対策に加えただけでなく、骨格間の結合やパネル構成、さらには溶接位置にいたるまでFEM解析を活用して局部剛性と全体剛性を高次元でバランスさせた。
こうした細部までこだわった造り込みによって、物理的な静かさだけでなく、自然でまろやかな車内音特性を創出。さらに車載型サウンドシミュレーターにより、路面変化に鈍感で車速依存性の少ない特性を追求し、音源となるパネルの振動を抑制したほか、吸・遮音材を適所に設置。
そのうえ車体周囲の空気の流れをスムースにする外形デザインと、フロントピラーからルーフまで一体のモールを採用するなど、ロードノイズ、エンジンノイズ、風切り音性能については当時同メーカーの最高級車だったセルシオに比類するレベルを実現していた。
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高級車の概念を変えたクルマづくりは他ジャンルにも波及
SRSカーテンシールドエアバッグの世界初採用をはじめ、アクティブ、パッシブ両面から追求した新世紀をリードする安全性を備えていた。たとえば、ナビゲーションからの道路情報に連動して変速を制御するナビ協調シフト制御や、従来のクルーズコントロールに車間距離制御機能を追加したレーダークルーズコントロールの採用など、装備面でも高級車らしいポイントは多々あった。
柔らかく高品質な本革やソフトな風合いの織物を採用したシートを装備。クッション材質を吟味してフィット感を確保し、人間工学的な見地から最良の着座姿勢が保てるよう形状・構造を追求することですべての席で心地よく乗車できる
内外装の高品位な作りと演出、ゆったり乗車できる広く、静かな室内空間。余裕のある動力性能や重厚感と安心感が得られる走行安定性といった、上級車種に求められる要素を、高級車としては小さく作られたボディに凝縮したプログレは、新たな市場を掘り起こしたトヨタの意欲作だったが、コンセプトが購買層の思惑と乖離していたのか販売は振るわなかった。
しかしプログレは、これみよがしな高級感を主張するより、性能や機能を磨くことで既存の高級車と一線を画したクルマとして広く認知された。そんな高級車づくりのノウハウは、レクサスを含めた現在のトヨタの高級車はもちろん、他のメーカーやジャンルにも波及し、既存のヒエラルキーに属さないクルマを生み出す土壌となった。
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みんなのコメント
当時の定年されたぐらいの年齢層の方がよく購入して乗られていましたね…
サイズ感的にもクラウンやセルシオより乗りやすく、作りはしっかりな感じが受けていたような…
ピカピカの車が多く大事に乗っていることがわかりますね。。。